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ジセダイ総研

古生物学・地質学 注目のニュース2014

土屋健
2014年12月26日 更新
古生物学・地質学 注目のニュース2014

 筆者は、平日朝に古生物学や地質学に関する和文ニュースをツイートしている。

 今回は、その中でフォロワーの皆さんに数多くリツイートしていただいたニュースを軸に、筆者の独断もくわえて2014年を振り返ってみたい。

20世紀最大の謎の恐竜、全貌をみせる!

 2014年もたくさんの恐竜ニュースが報道された。その中で、「最大のインパクト」をもつものとして、筆者としては「デイノケイルス(Deinocheirus)の全身像解明」というニュースを挙げたい。

 デイノケイルスは、「20世紀最大の謎」ともいわれていた恐竜である。果たして何が謎なのか、といえば、この恐竜は、長さ2.4mにおよぶ腕や肩などの一部の化石は知られていたものの、その全身像がまったくの不明だったのだ。


明らかになったデイノケイルスの復元画(服部雅人氏提供)

 

 「2.4m」といえば、日本の一般的な住宅で、2階の窓から腕をおろせば、地面の近くにまで達する長さである。これだけインパクトがあるにも関わらず、恐竜図鑑にその正確な全身像を掲載できず、なんとも悩ましい存在だった。

 そんなデイノケイルスの全身像が、10月22日の科学誌『nature』オンライン版で発表された。そのなんとも異様な姿は古生物ファンたちを騒がせることになった。

 全長は11mとなかなかの大型サイズであり(参考までに、かの「ティラノサウルス(Tyrannosaurus)」の全長は12m)、顔は前後に細長く、背中には大きな帆をもっていた。骨の内部構造、足のつくりなどはそれぞれ既知の別の恐竜とよく似ており、系統的には足の速い恐竜で知られる「オルニトミモサウルス類」というグループに分類されるという(ただし、デイノケイルスはどうみても足が速そうには見えない)。

 有り体に言えば、複数の恐竜から、それぞれの特徴をあわせてつくっているという、キメラのような恐竜だったのだ。

 大手出版社を中心に、さまざまな恐竜図鑑が刊行され、さまざまな恐竜の姿が浸透してきている。そうなると、かつては「未知感」たっぷりであった恐竜も、現在では「どこかで見た」という「既視感」さえ感じさせるようになってしまう(それがけっして悪い、というわけではなく、これこそが科学の進歩と啓蒙の成果と思うけど)。

 デイノケイルスは「恐竜にも、まだ私たちの想像を超える存在がいる」という、そんな可能性をみせてくれた。古生物のもつ“楽しさ”の一つ、「見たことないものを見る」というシンプルな知的探究心をそそるという意味で、まずはこのニュースを2014年の注目ニュースの筆頭に挙げたい。

 

北海道で、日本最高の「全身恐竜骨格」を発見か

 同じ「恐竜のニュース」としては、北海道むかわ町で進められる恐竜化石発掘のニュースを取り上げておこう。

 2003年にむかわ町穂別で発見された植物食恐竜ハドロサウルス類の尾の化石をきっかけとして、2013年からむかわ町立穂別博物館と北海道大学総合博物館によって発掘が進められている。3年計画で進められ、毎年9月に発掘が行われている。


穂別産の恐竜の遺骸が流されている様子の復元画(服部雅人氏提供)

 

 これまでにも日本各地で恐竜化石が発見されてきたが、「全身骨格」という言葉のイメージが促すほどに保存率が高いものはまだない。その中で、むかわ町で発掘が進められる恐竜化石は、最初に発見された尾の化石が関節でつながっていたこともあり、全身が残っている可能性が高いとして期待されていた。

 実際、2013年の発掘では、尾や脚、腰の骨などが採集され、その保存率の高さは期待を裏切らないものだった。恐竜は陸上の動物だが、この化石が発見されたのは海の地層である。陸上で死んだ遺体が、海まで流されてきて沈底し、そのまま荒らされることなく保存されたようだ。

 そのような背景の中で、第2回の発掘を経て、10月10日に「ついに頭骨の一部を発見した」と発表がなされた。頭骨は分類の要となり、その他にもさまざまな情報が集まっている。この発表は速報的なもので、プレスリリースでは「残りの頭骨も残っている可能性」にも言及されている。

 来秋に予定されている最後の発掘でどこまでこの恐竜の全身が発見できるのか。これまでに集めた岩の中に、どれだけの骨が眠っているのか。注目である。私たちは、日本における恐竜発見史の転換点に生きているのかもしれない。

 

実は夜行性だったかもしれない、ディメトロドン

 筆者がツイートしてきたニュースの中で、意外にも(?)リツイートが多かったのは、この話題である。

 「ディメトロドン(Dimetrodon)」という動物が、2億7000万年以上前に生息していた。背中に大きな帆をもった動物で、哺乳類と同じく「単弓類」というグループに分類される。

 かつて、「哺乳類型爬虫類」と呼ばれていた、といえば、ご記憶の方もいるかもしれない。ただし、「哺乳類型爬虫類」という言葉は、現在では使用されていない。


ディメトロドンのCG復元写真(服部雅人氏提供)

 

 さて、過去に絶滅した生物が夜行性であったか、昼行性であったかというのは、なかなか難しい議論である。何しろ直接観察することができないのだ。

 そのような中で、近年注目されているのは、「きょう膜輪」という骨だ。

 きょう膜輪は、現生動物でいえば、鳥類や爬虫類が眼窩内にもつリング状の構造である。そのサイズの分析によって、暗闇でいかに視界を確保できたかを推測できるとされる。9月に発表された研究では、絶滅単弓類のきょう膜輪が分析された。そして、ディメトロドンなどの眼は、夜行性に耐えうるものであると指摘されたのである。

 これは、それまでに考えられてきた単弓類における夜行性行動の歴史を1億年以上もさかのぼる結果という。この研究では、そもそも私たち単弓類の歴史が、夜行性からはじまった可能性も指摘されている

 きょう膜輪だけで、絶滅動物の暮らしを断定するわけにはいかないかもしれない。しかし、今や古生物学は、こうした点も議論できるステップに入っていることを、この研究は物語っている。

 

体内受精のはじまりは、約3億8500万年前に

 雄と雌が交尾をして、精子を雌の胎内へと送り込む。ヒトをはじめ、哺乳類や爬虫類、鳥類と、一部の魚類が採用しているこの方法を「体内受精」という。ちなみに、雌が生んだ卵の上に、雄が精子をかける方法は「体外受精」だ。

 こうした交尾の方法も、古生物学では悩ましい問題だった。何しろ、こちらも観察することはできない行動だからだ。

 そこで、何をもって交尾方法を探るかといえば、基本的に雄の交尾器を探すことになる。交尾器が化石になっているかどうか。そこが研究のターゲットとなる。

 10月に報告された研究では、この交尾器の「古さの記録」が更新された。約3億8500万年前の地層から発見された板皮類という魚類の1種に、雄の交尾器が確認されたのである。

 これによって、雄と雌が交わるという体内受精は、約3億8500万年前からはじまっていたことが示されたわけだ。ちなみに、交尾器が確認されたこの魚類は、腕のような構造ももっており、交尾の間、雄が雌をおさえていたともされる。

 もし、近年の古生物学関連の話題のトレンドをおさえておくとしたら、「板皮類」というのは注目しておきたいグループである。

 板皮類は現在ではすでに絶滅しているものの、胎生や腹筋の証拠が発見されたり、陸上四足動物と同じ頭骨構造が指摘されたり、近年、何かと話題にことかかないグループだ。このグループにおける新たな発見が、脊椎動物の歴史を書き換えることになるかもしれない。


体内受精に関するレポート

Flinders University「Flinders News - Latest news from Flinders University」掲載

http://blogs.flinders.edu.au/flinders-news/2014/10/20/flinders-scientist-discovers-origins-of-sex/?utm_source=rss&utm_medium=rss&utm_campaign=flinders-scientist-discovers-origins-of-sex

 

花入り琥珀に関するレポート

 2015年の夏には、ジュラシックパーク4こと「JURASSIC WORLD」の公開が予定されている。そもそもジュラシックパークは、琥珀の中に閉じ込められた蚊の化石から、その蚊が吸っていたとみられる恐竜のDNAを取り出し、そのクローンをつくっていく、という設定である。

 DNA抽出やクローン制作の是非は別として、琥珀の中に虫が閉じ込められる、という例は少なくない。そもそも琥珀は樹液が固まったものであり、樹木にとまっていた不運な昆虫たちがそうした樹液に取り込まれていくのである。


花入り琥珀に関するレポート

Oregpn State University「News & Research Communications」掲載

http://oregonstate.edu/ua/ncs/archives/2014/jan/amber-fossil-reveals-ancient-reproduction-flowering-plants


 虫入り琥珀は珍しくないが、1月に報告されたのは「花入り琥珀」だった。これはちょっと珍しい。その琥珀は約1億年前のもので、時代的には中生代白亜紀。恐竜全盛の時代のものである。同時に、花を咲かせる被子植物の歴史において初期のものだった。

 その琥珀の中には、たしかに花と茎のような構造が確認できる。その数は18個におよぶ。また、2個の花粉からは、花粉管がのびて柱頭に到達していたことも確認された。このことは、1億年前から、被子植物の繁殖方法が基本的には変化していないことを物語っている。


 意外と、と自分で書くこともナニだが、古生物学は“隠れファン”が多い。こうして、最新の話題を仕入れておくことで、例えば一杯やる時のネタの引き出しを増やされておくと、思わぬ反応が返ってくるかもしれない。

 この1年も古生物学に限らず、さまざまなサイエンス分野で新たな研究成果が発表された。すべての科学は分野を問わず、日進月歩している。ぜひ、来年も科学に興味を持ち続け、そしてともに、その楽しさの“布教”を進めて頂ければ、筆者としては嬉しい限りです。

 それではみなさま、良いお年を!

 来年もよろしくお願いします。

 


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ライターの紹介

土屋健

土屋健

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サイエンスライター。2003年、金沢大学大学院自然科学研究科博士前期課程修了。専門は地質学、古生物学。その後、科学雑誌『Nweton』編集部勤務を経て、現在は「オフィス ジオパオレント」代表。専門家への取材と、資料に基づく、科学的でわかりやすい記事に定評がある。(著者近影は、柴田竜一写真事務所の撮影による)

公式サイト:http://www.geo-palaeont.com/

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