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ジセダイ総研

親世代から続く「3K」の呪縛と、女性に「5K」を求める男性たち。若者の結婚観から婚姻率改善策を考える

北条かや
2014年07月08日 更新
親世代から続く「3K」の呪縛と、女性に「5K」を求める男性たち。若者の結婚観から婚姻率改善策を考える

東京都議会で質問中の女性議員に対し、「早く結婚したほうがいいんじゃないか」とヤジが飛んだ問題は記憶に新しい。誰もが「結婚すること」が大前提で、それ以外の選択肢は考えなくて良いという社会であったのであれば、この問題はここまで大きくならなかったであろう。

男性の生涯未婚率が30年前の8倍にまでなった現代の日本。その裏側には、単に「若者にその気がないから」では済ますことのできない、構造的な問題が発生している。

「結婚・家庭・子供」からなる「幸せの3K」を幸せの理想型とする親世代。「旦那の年収600万以上」という高望みを当然のように持ち続ける多くの女性。「可愛い・賢い・家庭的・軽い(体重)・経済力」の5Kを女性に求め、理想の人を探す男性……。それぞれが現実を見ていないこの状況では、婚姻率の低下に歯止めをかけることなどできはしない。

イメージ図:親世代から続く「3K」の呪縛と、女性に「5K」を求める男性たち。若者の結婚観から婚姻率改善策を考える|ジセダイ

「結婚しないのか」の意味が変わった

一昔前の「結婚しないのか」は、「いつか必ず結婚する若者」を対象とした単なる「おせっかい」だった。一方、現代社会の「結婚しないのか」には、より一層複雑な「大人たちの思い」が滲んでいる。
「結婚しないのか、それともできないのか」、「結婚したいのに、なぜ結婚しないのか」、「結婚するのが当たり前なのに、なぜ結婚しないのか」――そういうモヤモヤした、社会的な不満が詰まっているのだ。適齢期の男女は自然と結婚するものと信じて疑わない大人たちが、結婚しない若者に対して抱く「疑問」や「不満」、そして「不安」までもが、凝縮されているのである。

 

男性の生涯未婚率は、30年前の8倍に

「平成26年版 少子化対策白書」(※1)によると、今や男性の5人に1人は一生に一度も結婚せず(女性は10人に1人)、男性の生涯未婚率は30年で8倍になり(女性は2倍)、今後も上昇していくと予測されている。30代前半の男性の2人に1人は独身で、30代後半でも3人に1人は独身だ。
女性も30代前半では3人に1人が独身である。そんな状況だが、9割の男女は「いずれは結婚するつもり」と言う。なるほど、若者たちは「結婚したくてもできない」のであろう。そんな推察から、最近では「結婚難」という言葉も耳にする。

 

「農村の嫁不足」から「非正規雇用男性の結婚難」へ

『岩波女性学辞典』で「結婚難」の項目を引くと、「結婚を望んでいるにもかかわらず結婚できない人々が一定以上の割合で存在すること」とある。結婚難は個人的な問題ではなく、社会の変化が反映されて起こる現象である。『女性学辞典』はさらに、こう続ける。「高度成長期以降は農村の嫁不足が関心を集めてきたが、近年は農村部にかぎらず、"男性の結婚難"として理解されることが多い。」

"男性の結婚難"という言葉にもまた、変わりゆく社会情勢が反映されている。60年代には、地方から都市部に人口が流入し、「農村の嫁不足」が起きた。長男は「跡取り」として村に残るが、次男や三男、そして「農家の嫁なんてこりごり」と考えた娘たちは、新たな職と結婚相手を求めて都会へ出て行った。団塊世代が「金の卵」と呼ばれ、集団就職で東京へ出てきたのもこの頃だ。

彼らには夢があった。抑圧的なムラ社会から逃れ、都会で仕事を得て、「自由恋愛」と「幸せな結婚」をする。真新しい団地のマイホームに住み、アメリカのホームドラマのような核家族を作って暮らすという「夢」があった。60年代後半には、「見合い結婚」と「恋愛結婚」の割合が逆転する。
このようにして成立した核家族を、社会学では「家族の戦後体制」と呼んでいる(落合恵美子、1994、『21世紀家族へ』有斐閣)。専業主婦とサラリーマンの夫、子供2人からなる「家族の戦後体制」は、団塊世代とその親世代(1925年~1950年生まれ)によって築き上げられた。彼らは今の20代~40代の祖父母や両親に当たる。

 

100人に3人しかいない王子様を探す女性たち

さて高度成長期、農村に残された長男は「イエ」の存続のために「嫁」を探した。そのような結婚は、女性から嫌がられる。多くの女性はイエではなくマイホームに憧れ、都会でサラリーマンの夫と結婚して、専業主婦になりたいと願ったからだ。適齢期の女性はどんどん都会へ出て行ってしまい、嫁不足が生じる。こうした状況は80年代まで続き、「外国人花嫁事業」としてアジア諸国から「嫁」を見つけてくるという事態にまで発展した。

それから数十年たち、"男性の結婚難"は都市部にも広がった。今では不安定雇用の男性や、恋愛に消極的な男性が「結婚できない」状況を指すことも多い。30代前半の非正規雇用の男性で「結婚している人の割合」は、正社員男性の半分以下。フリーターや非正規雇用だと、なかなか結婚できない。理由は悲しいかな、「そうした男性たちが、女性の求める年収(やその他の目に見えない諸条件)を満たせていないから」である。

高度成長期からバブル期まで、多くの男性は「今は収入が少なくても、将来は給料が右肩上がりで増えていくだろう」と予想できた。終身雇用制のもと、専業主婦の妻と子供を養いつつ、マイホームのローンを組み、子供を大学へ行かせることもできたのである。だが90年代後半以降、状況はガラリと変わった。グローバル化や産業構造の変化で不安定雇用の男女が増え、正社員も「現状維持が精一杯」になっている。

そんな時代になったのに、多くの女性はいまだに高度成長期のような結婚を望んでいる。東京の女性が結婚相手に求めるのは「年収600万円以上」というが、それを満たす独身男性は3%しかいない(山田昌弘、2010、『婚活現象の社会学』東洋経済新報社)。"女性の結婚難"よりも男性のそれが深刻なように見えるのは、男性にとって、未だに「収入の多寡」がアイデンティティと強く結びついているからかもしれない。収入の低い男性にとっては「受難の時代」ともいえる。

 

「家族の戦後体制」が残した、女性にとっての「幸せの3K」

サラリーマンの夫が専業主婦の妻と子供2人を養うという「家族の戦後体制」は、すでに崩壊した。が、その体制への期待と幻想は色濃く残っている。なぜか?「家族の戦後体制」を築いた世代は、今の若者の祖父母や両親にあたるからだ。子は親から、無言の期待をかけられて育つ。女性にとってのそれは「結婚・家庭・子供」からなる「幸せの3K」だ(ももせいずみ、2011、『女のしあわせ♡がなくなる日』、主婦の友社)。

さらに、主婦として「マイホーム」に奉仕してきた母親は、自分が夫や社会に抑圧されてきたことに気づき、「あなたは仕事も頑張って」と期待する。適度に仕事をしながら、結婚して幸せな家庭を築き、子供も産む。これが現代女性にとっての「理想」となった。それを満たせる結婚が「理想の結婚」であり、満たしてくれそうな男性が「理想の男性」だ。これでは結婚相手が見つからないのも当然である。

 

「結婚相手には経済力も期待する」男性の理想は「5K」

男性もまた、結婚相手に「理想」を抱いている。それは「5K」――可愛い、賢い、家庭的、軽い(体重が)、そして経済力だ(小倉千加子、2010、『結婚の才能』、朝日新聞出版)。男性は女性に、物心両面から支えて欲しいと思っている。単なるパラサイト体質の女性と結婚するメリットはない。「幸せの3K」に縛られる女性と、「理想の5K」にこだわる男性。激変した社会情勢に逆行するかのように、いや、むしろ社会の変化から身を守りたいとの思いから、「理想の結婚」はどんどん高度化していく。

現代社会には、ネットのマッチングサービスにSNS、街コンに自治体の婚活支援事業など、様々な婚活サービスが用意されている。それなのに、結婚相手を見つけるのはどんどん難しくなっているようだ。出会いの手段が限られていた80年代までは、半径5メートル以内で「理想の結婚相手」が見つかった。が、現代の男女は、半径100キロメートルのだだっ広い野原を手探りで進んでいるようなものである。出会う人数は増えても、「本当にこの人が理想なのか?まだ見ぬ広い世界には、さらなる理想があるのでは」と考えてしまう。理想でない結婚なら、しなくても良い。「いつか幸せな結婚ができるはず」と信じて待つことは、不幸な結婚をするよりよっぽど「合理的」な選択だからである。

 

どうすれば結婚する若者が増えるのか

日本人は結婚制度の中でしか子供を産まない(産めない)。だから、このまま結婚しない人が増えれば増えるほど、少子化は進んでいくだろう。少子化が進めば「国力」が低下する。どうすれば若者は結婚するのか。「結婚・家庭・子供」からなる「幸せの3K」を求め、どこかで「男性に依存して幸せになりたい」と願う女性たち。一方、可愛くて家庭的で、適度に賢くて、体重が軽く経済力もある「5K」を要求する男性たち。彼らに学校教育で「家族の大切さ」を教えたり、妊娠出産の知識をまとめた「女性手帳」を配ったりしても、あまり効果はないだろう。

そうして「結婚への期待」を高めることが無意味とは思わないが、それでは「理想的な結婚ができるまでは結婚しない」男女が増えるだけだ。結婚するには、現実をみなければならない。だから、自治体や街コン業者が「お見合いパーティー」を開いて「とにかく出会いを増やせば結婚が増える」というわけでもない。いくら出会いが増えても、男女の「現実」が互いにマッチしなければ結婚にはつながらないからだ。

個人的な意見としては、結婚してもしなくても、子供がいてもいなくても、損も得もしない社会が理想である。「国力」が多少低下しても、それでよいと思う。
だが「結婚したくてもできない」若者が多いようであれば、まずは若年層の雇用安定策とディーセント・ワーク―人間らしい、働きがいのある仕事―の実現をした上で、若者たちとその親が意識を変えることが必要だろう。若い女性に「結婚・家庭・子供」の「3K」からなる幸せの呪縛を押し付けているのは、多くの場合「親」である。親もまた「理想の結婚」を煽るメディアの影響を受けているので仕方がないが、とにかく娘はそんな親の期待を背負っているだけに、なかなか理想を下げられない。
「年収600万円以上」の独身男性は3%未満という現実まで、降りて来られないのである。幸せな結婚をするためには、高収入でコミュニケーション力もある男性に"賭ける"という認識を改めなければならないだろう。

男性側も、多くの女性が結婚や出産でキャリアを諦めざるを得ない現状や、「マタハラ」含め、働く母親に冷たい日本の会社組織について、もっと知った方がいいかもしれない。
そうすれば、「可愛くて家庭的で経済力もあって、どんな自分でも受け入れてくれる理想の女性」を求めることの難しさが分かるだろう。重要なのは、「結婚しなければ幸せになれない」という思い込みも同時に改めることだ。幸せのひな形が結婚にある以上、「理想」の高度化は避けられない。
そして、「幸せになるために結婚しなければ」という思い込みは、「現実」を見えなくする。皆が「現実」を見ないうちは、「結婚したほうがいいんじゃないか」「産めないのか」とヤジが飛ぶ社会から、私たちは前に進むことができない。

※1http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2014/26pdfgaiyoh/26gaiyoh.html の「第1章 少子化の現状 第1節 近年の出生率の推移」より

※2「平成26年版少子化社会対策白書」第1章 少子化の現状 第1節 近年の出生率の推移 http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2014/26pdfgaiyoh/pdf/s1-2.pdf

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北条かや

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著述家。1986年、石川県金沢市生まれ。「BLOGOS」はじめ複数のメディアに、社会系・経済系の記事を寄稿する。自らキャバクラで働き、調査を行った『キャバ嬢の社会学』がスマッシュヒット中。ブログ「コスプレで女やってますけど」は、月間10万PVの人気を誇る。

ブログ:http://kaya8823.hatenadiary.com/

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ジセダイ総研 研究員

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