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ジセダイ総研

「もっと可愛く」なることは、善か悪か? ギャル読モの「パフォーマンス美容整形」にみる「倫理の線引き」

北条かや
2015年05月26日 更新
「もっと可愛く」なることは、善か悪か? ギャル読モの「パフォーマンス美容整形」にみる「倫理の線引き」

アイドルやモデルの整形ネタがネットにあふれ、小中高の卒業アルバムやデビューした頃の写真を引っ張りだされて、匿名の誰かにBefore→Afterの検証をされるこの時代。彼女たちの「整形疑惑」はネットの海を漂い、毎日のように誰かのゴシップ心を満たしている。そんな、ちょっと下世話な関心を惹きつける美容整形は、ここ数年、一般人にとってもますます身近なものとなっている……。

スマホで手軽に写真撮影・アップロードができ、これまで以上に「見た目」で判断される機会の増えた現代社会。時に美しさは、幸せになるための必要条件であるかのように語られる。美しく生まれた女が幸福に近いのであれば、美しさを「手に入れた」女もまたそうであると言えるのか。

北条かやが最新刊『整形した女は幸せになっているのか』から、注目のトピックを抜粋し再構成。全3回にわたって、ジセダイ総研に寄稿する。

整形市場は2000億円、18~39歳女性のうち、美容整形をしたことのある人は11

クロス・マーケティングが2010年に行った調査では、18~39歳女性のうち、美容整形をしたことのある人は11%もいた。調査対象には、アンチエイジングのニーズが高まる40代以上が入っていないため、実際はもっと多くなるだろう。

女性誌では、若年層向け、中高年層向けを問わず、「1dayクイック二重まぶた術って?」とか、「日帰りプチ若返り術、こんなにお手軽でした」などのタイトルで、大手美容整形外科とのタイアップ広告が組まれている。そこには、かつて美容整形にまとわりついていた後ろ暗さは、ほとんど感じられない。ただ明るく、「もっと可愛く、綺麗に、若返ることができる」旨が、美容クリニックを訪れるメリットとしてアピールされているだけだ。90年代後半以降、美容外科数は増加の一途をたどっている。女子大生たちに聞くと、「プチ整形くらいなら、みんなやってますよ」という。彼女たちの言う「みんな」は、往々にして「友達の友達」の範囲に留まることが多いのかもしれないが、ある層において、美容整形が著しく「カジュアル化」しているのは確かである。

 

「小悪魔ageha」読者モデルの「実況」美容整形

2015年4月18日、1年前に休刊していたギャル雑誌「小悪魔ageha」が、復刊した。そこで人気読者モデルを務めているのが、1988年生まれの吉川ちえ・ちか姉妹。彼女たちは昨秋、二重まぶたの切開整形手術を公表、ブログで術後の経過を「実況」した。彼女たちはそろってツイッターを更新し、術後写真の衝撃もあいまって、2人の投稿はあっという間に5000以上もRTされた。

「二重切開終わったw プラス顔の脂肪溶かす注射したから顔が腫れてる(*´▽`)ノノ帰りの新幹線で血がたれてきたw これが本当のハロウィンw 」(吉川ちか)

  

(図 吉川ちかのツイート、2014年11月1日20時49分)

ファンからは「二重手術お疲れさま!」「経過レポ楽しみにしてます(*^^*)」などの反応もあったが、誹謗中傷に近いコメントもあった。整形することを「予告」し、その経過をネットにアップすることに対して、世間の反応は真っ2つに分かれた。一見どこも悪くないのに、「もっと綺麗になりたいから」という理由“だけ”で整形するという行為、その経過をファンに伝えることについて、あなたはどう思うだろうか。

 

ギャルたちの「パフォーマンス整形」はファン獲得にも繋がる時代

吉川ちえ・ちか姉妹のように、美容整形を公表する「読モ(読者モデル)」は増えている。特にギャル系女子の間で、この傾向は顕著だ。復刊した「小悪魔ageha」では、読者モデルの一条ありさが「美容整形歴」を告白。あくまで明るい調子で、「理想はあゆ(浜崎あゆみ)の顔だったけど、これからはメンテナンスに注力したい」と語っている。彼女はニュースサイトのインタビューで、次のように語る。

 

「今回の『ageha』で美容整形のページをやらせていただいたんですが、今後もこういった美容部門で活躍していきたいです。私自身整形をしているので、実体験を発信していければと思っています」

「(略)15歳の頃からなので、今はもう日常的な感じです。洋服買いに行って『どっちの服にしようかな?』と選ぶのと同じ感覚で、『今回はこっちやろうかな? やっぱりあそこにしようかな?』って悩んでいる感じですね」

「小悪魔ageha」一条ありさ、15年の整形人生を発信 「変わり続ける」美の追求 モデルプレスインタビューより)

 

「コンプレックスと向き合い、弱さを克服する」前向きな整形

数年前までなら、読モを含むモデルたちの中で、「美容整形」を公表するケースはほとんどなかった。が、ここへ来て潮流が変わりつつある。15年2月には、「強め黒肌ギャルユニット」のモデル、はるたむが、顔の全面整形手術を行い、それを公表した。ファンからは、概ね好評のようだ。

彼女たちにとって、整形計画と術後の経過を明らかにすることは、「コンプレックスと向き合い、頑張って理想の自分を手に入れようとしている」という、前向きなキャラ作りに役立つ。ギャルモデルたちは、整形に対するネガティブな社会的評価(「顔を変えるなんてずるいとか、そこまでしなくても……」など)よりも、自分と同じようにコンプレックスに悩む、同世代女子たちからの支持が得られることを、無意識に分かっている。若い女の子たちは、整形に踏み切るギャル読モたちの「コンプレックスを告白する葛藤と勇気」に共感し、「整形までする行動力」に感嘆する。憧れを抱き、「いつか自分も……」と考える女の子もいるかもしれない。整形によって「アンチ」は増えるが、熱烈なファンもまた、増えるのだ。


中学生にも、整形予備軍はたくさんいる

整形までいかずとも、「二重(ふたえ)まぶたづくり」にかける女子たちのエネルギーはすさまじい。10代後半の女子たちが読む「Popteen」や「S cawaii!」、「小悪魔ageha」などのギャル雑誌を見ると、「自分の手で、あの子みたいな理想の幅広二重を」(図)というコピーにかける、彼女たちの情熱が伝わってくる。

 

 

(図「小悪魔ageha」2010年9月号)


今から10年以上も前、二重をつくる方法といえば、糊状のアイプチか、流行り始めたメザイクの2種類しかなかった。それに比べれば、今の二重メイクは多様化し、同時にどんどん加熱している。最近のトレンドは、透明な「ばんそうこう」を細く切って二重のラインに貼り付け、固定する方法だ。100円ショップで売られているアイテープや、軸の太いつけまつげを食い込ませることで、よりくっきりした二重を作る子もいる。

「そこまでする必要、ある?」と突っ込みたくなるかもしれないが、二重まぶたメイクは、中学生にも浸透している。筆者が、まだ文章で食べていけず学習塾で働いていた時のことだ。女子中学生が「先生、こっちの目だけアイプチしてみたんだけど、どう?」と見せてくれることがあった。「いいんじゃない?」と答えると、「体育祭で、メザイクしてみようかな」「あの読モもアイプチだよね」など、話題はいつまでも尽きなかった。親が知らないところで、子供たちは二重まぶたメイクを覚え、可愛くなることの快楽を知る。その中から「整形予備軍」も生まれるのである。

 

「異形」扱いされる整形美人たち

一方で、整形手術に抵抗する世論はまだまだ根強く、テレビのバラエティ番組やゴシップニュースで話題になる「整形美人」は、「異形」扱いされることが多い。最近では、TBS系列で放送された「私の何がイケないの?」で有名になった、全身整形のタレント「ヴァニラ」さんなどが、よい例だろう。ネットで調べると、彼女への中傷コメントが、出てくる出てくる。メディアでもお茶の間でも、現代の「整形美人」たちは、心に問題を抱えた、哀れな人物のように描かれてしまう。

背景にあるのは、自分の顔を健全に「受け入れる」ことができていれば、整形などしないはずだという考え方だ。ちょっとくらい目や鼻が気に入らなくても、それが「自分」じゃないか。コンプレックスも受け入れて、生まれ持った自分の顔で生きていくのが「まっとう」である。こうした思考のサイクルに陥る際、私たちは現代の美容整形について、ほとんど何も語っていないに等しい。

 

「美容整形」は、おもしろい

今、顔を変えること、整形でより美しくなることに対する意識は著しくカジュアル化している。その理由は、メディアで語られるような「劣等感」「心の病」というより、「自己満足」「もっと可愛くなりたい」「あの子もしているから」などと気軽なものだ。こうした現実を見ずに、「整形美人」の一例を取り上げては、「やっぱり整形って、よくないよね」というのは、あまりにも一面的で平凡な「思考停止」状態である。

若い世代を中心に、これだけ美容整形へのハードルが下がっているのに、その理由を見ずに「美容整形=不幸でいかがわしい」「自分はあの人たちとは違う」と、すべてを片付けてしまうのはもったいない。若い男女が「もっと綺麗になりたい」と、気軽に医療施設を訪れていること、綺麗になるため、身体に注射をしたり、メスを入れたりしていること。留まるところを知らない「美への欲望」が膨張していること。こうした現状から目をそむけているのは、実にもったいない。美醜をめぐる現象を掘り下げれば、私たちの外見コンプレックスや、身体加工をめぐる興味深い論点が、たくさん出てくる。

筆者はこのたび、上記のような疑問を解消すべく、『整形した女は幸せになっているのか』(星海社新書)を書いた。インタビューやデータ分析から見えてきたのは、「整形」という行為を通して浮かび上がる現代社会のドロドロした欲望、もっと可愛く、美しくなりたいという女性たちの「切なる願い」……ではなく、カジュアルに「理想の私」を手に入れたい! という、女子たちの「明るさ、前向きさ」だった。以下、2回にわたり、本書で取り上げたテーマを掲載していく。

 

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ライターの紹介

北条かや

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著述家。1986年、石川県金沢市生まれ。「BLOGOS」はじめ複数のメディアに、社会系・経済系の記事を寄稿する。自らキャバクラで働き、調査を行った『キャバ嬢の社会学』がスマッシュヒット中。ブログ「コスプレで女やってますけど」は、月間10万PVの人気を誇る。

ブログ:http://kaya8823.hatenadiary.com/

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ジセダイ総研 研究員

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