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きみに必要な武器

「今までやってきたことのなかで『積み上げ』はないか、っていうのを一生懸命探してください」木暮太一さんインタビュー【後編】

2013年01月01日 更新
「今までやってきたことのなかで『積み上げ』はないか、っていうのを一生懸命探してください」木暮太一さんインタビュー【後編】

『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか』が好調の木暮太一氏へのインタビュー。後編は木暮さん自身が目指したという「チャリンチャリンモデル」の話から「では具体的に僕らはどうすればいいのか」というアドバイスまで、ライター・速水健朗氏が迫ります。

 

前編はこちら「「サラリーマンになってラットレースに参加することになる。これは非常にマズイなと思ってはいました」木暮太一さんインタビュー【前編】

 

報酬は分割でもらったほうが満足度は高い

 

将来的に「自分で事業をやるぞ」っていうことは前から思ってたんですか?

 

木暮 そうですね。実は、親父が自営業なんです。なので、たぶん無意識のうちにそういうふうには思ってたんでしょうね。僕が小学校3年生くらいのときに親父は独立したので。

 

お父様の影響も。

 

木暮 はい。だから僕もずっとサラリーマンでいるっていうのは、あんまりイメージがなかったんですよね。何かしら独立するんだろうっていうふうには思ってました。
 ただ、「あくせく働く独立」は嫌だったんですよ、ほんとに。

 

「あくせく」のイメージって、例えばどういう……?

 

木暮 身近なところでいうと、編集プロダクションみたいな感じですね。

 

はいはい。なるほど、なるほど。これはすごくよく分かる(笑)。まあ、忙しさはたぶん倍くらいになるでしょうし、自分で編集だけじゃなくて営業もやらなきゃいけなくなりますし。

 

木暮 あと、クライアントの予算都合でギャラを減らされたりするじゃないですか。

 

そうですね。真っ先にね。では、「あくせくしない」起業のイメージっていうのは、どういうものだったんでしょう?

 

木暮 ……っていうよりも、「チャリンチャリンモデル」を探してたんです。

 

チャリンチャリンモデル? いわゆるビジネスモデルみたいなのを見つけて、アイデアでチャリンチャリン入ってくるようなものでしょうか。自分が手を動かさなくてもっていう。

 

木暮 そうですね。『僕いつ』にも書いたんですけど、1,000万円もらうんだったら「一括でもらう」か「分割か」っていうことを考えたときに、ずっと僕は「分割」っていうことを考えてたんです。経済学を勉強する前から「分割だ」ってずっと思ってて。

 

最初に答えありきだったんですね。その理論づけはあとからですか?

 

木暮 あとからですね。なんとなくそういうふうに思ってたんですよ。でも経済学を勉強すると一括でもらったほうが金利の分だけ多くもらえるんで、そっちが正解ですよといわれるんですけど。いや、なんか腑に落ちねえなと思って。

 

納得行かなかったわけですね。

 

木暮 そうです。で、さらに勉強していくと、『限界効用の逓減の法則』っていう別の経済学の理論があるんですね。「同じものをずっともらい続けていると、満足度はだんだん減っていく」という。
 例えば「1」もらって「1」うれしくても、「10」もらって「10」うれしいわけじゃないんです。「5」ぐらいしかうれしくない。だったら「1を分割して1ずつうれしいほうが、合算して10だろう」っていう、そういうことを考えはじめたんです。

 

なるほど。

 

木暮 「チャリンチャリンモデル」っていうと、楽してるようなイメージがあると思うんですけど、そうではなくて、「ちょっとした労力を費やすだけでちゃんと収入が得られるモデル」。その収入は多額じゃなくてもいいんです。

 

「チャリンチャリン」っていうのは、「ドサッドサッ」ではないってことですね。「チャリン」っていうのが重要になってくるんですね。

 

木暮 そう。そこに対して「あんまり労力をかけないですむ」っていうのが、大切なんですよ。だから、例えば「1億円をドサッてもらえる」のと「100万円を長年もらい続けて、トータルで8,000万円」、どっちがいいですかっていうと、けっこう迷いますね、僕は。8,000万の方がいいかもしれないって思ってるんです。

 

 

賞味期限が短いものは作らない

 

今は執筆業、出版業をやられてるということですけど、僕の解釈している出版業と木暮さんの仰る「チャリンチャリンモデル」が重ならないような気がします。出版って一発勝負を繰り返していくだけで積み重ねにならないっていうイメージがあるんですけど、どうなんでしょうか?

 

木暮 僕が書くジャンルは、基本的に「定番の本」が多いんです。『Facebookの使い方』みたいな本は絶対に出さないんですよ。

 

それは、まさにこの本で教える「スピード」の話ですよね。

 

木暮 そうです。賞味期限が短い資産をいくらためこんでも、毎回毎回資産づくりに奔走しなければいけないので、それは絶対にやらないんです。
 5万部一気に売れる本よりも、毎月毎月1,000部売れる本を地道に、5年間かけて6万部売りますとか、そのぐらいのほうが僕はいいんですよ。

 

まさにチャリンチャリンですね。

 

木暮 で、僕が出している本は経済学の入門書が多いんです。経済学って、ケインズが出てきたのが大恐慌のあたりですから1930年とか、そのあたりなんですよね。ケインズ経済学ってすでにもう80年経っているので、陳腐化しようがないんです。陳腐化しようがないものを出していけば、相当長い賞味期限の、相当長い間売れる題材になるだろうと思って、そういうテーマを全部選んでいます。

 

でも逆に考えると、そこにはもう積み重なっているものがある世界なわけで、経済学者もいっぱいいるわけですよね。その人たちがみんな入門書を書いていて、ある意味「レッドオーシャン」ではないんですか?

 

木暮 テーマとしてはレッドオーシャンなんですけど、いい質の本が少ないです。で、ライバルが学者しかいないので。学者さんが書く本って、わかりやすさという点では、かなり“難あり”じゃないですか。

 

そこに木暮さんのメリットというか、「分かりにくいものを分かりやすく説明する」っていう能力を発揮して……。

 

木暮 マルクスの言うところの「市場価値」を発揮したんですよね。僕は積み重ねで価値をためていたので、そこに市場価値が加われば、まあ、商品として長く高く売れるだろうと。そういう考えでした。

 

 

安定した資産を持っているのは人でも会社でも強い

 

この本、『僕いつ』の構想というのは……?

 

木暮 僕の中にずっとありました。僕自身がチャリンチャリンモデルを目指さないときつくなる、ってずっと思ってたので。でもなんでみんな目指さないのかなって、すごい不思議だったんですね。

 

うーん……普通は、会社に入って、そこで働いて、給料をもらう。でも、給料には基本的に満足してないわけですよね。ただ、価値を積み上げようったって起業しなきゃいけないわけですからリスクも高い、と。だから、リスクを避けて、みんな会社に行くわけですよね。そこで木暮さんは「なんでこいつら、そんなとこに固まっているんだ」って思われたと?

 

木暮 企業の中で働いている人も、目先の利益にとらわれすぎていて、長期的にほんとに役に立つ資産とかを全然築いていないっていうのが、もうよく分かったんですね。

 

今日明日の売上しか見てない……。だからこそチャリンチャリンモデルを見つけなければいけないんですね。

 

木暮 チャリンチャリンモデルを何かしら見つけなきゃいけないっていうのは、ベンチャーキャピタル界でも、ほんとにいわれていることなんです。
 投資する基準で、「安定した資産を持っている」会社はすごく高評価につながります。そういうものを持っている会社はなかなか潰れないです。一方で「一気にドーンと今期業績上がりました。でも来期はダメです」という会社って、潰れるから敬遠してしまう。安定しない。いつ勢いがなくなるかも分からない。

 

そうですね。

 

木暮 地道に、徐々に徐々に右肩上がりっていうのは、あんまり成長しないんだけれども、最初は「チャリン」だったのが、「ジャリン」になって、「ジャリンジャリンジャリン」、「ドサッドサッ」になってくるようなモデルを目指してる会社っていうのは、非常に強いんですよね。マインドとしてそっちを目指しているほうが、会社としてすごい強いっていうのをベンチャーキャピタルの投資を通じて分かったんです。いちばん分かりやすい例がGoogleです。

 

Google?

 

木暮 電通みたいに1本何億のCM取ったほうがドカンと儲かるんですけど、Googleが目指したのって、月3万円の個人事業主向けの広告じゃないですか。で、あれを地道に開拓していくことで、今はもう誰もひっくり返せないぐらいのものになっていると。Facebookもそこからヒントを得てああいうふうなモデルにしてるので。まあ、そういうモデルを持っているほうが、まあ、強いんですよね。

 

伺ってて面白いのは、「コツコツ型」の大切さとベンチャーのイメージのギャップです。普通、やっぱベンチャー体質の人って「一発当てたるで!」みたいな精神が必要だっていうふうになっていて、そこ、ちょっと相容れないですよね。

 

木暮 相容れないですね。それは……。

 

「一発当てたるで!」気質じゃない人こそベンチャーを目指せるっていうことは言えるんでしょうかね?

 

木暮 もちろん「緩やかな成長を目指します」っていうベンチャー社長は、あまり相手にされない。世間の注目を浴びて、仲間をどんどん増やしていくためにも「ドンといきます」というのは必要なんですけど。
 でも一方で、ドンといくだけじゃダメだと思うんです。

 

両方が必要?

 

木暮 サイバーエージェントって、もともと広告の営業からスタートした会社なんですね。広告の営業やってたほうが日銭が稼げるんですよ。行って、なんとか口説き落として100万持ってくる。そのほうが圧倒的に楽なんです。
 でも、ブログを始めて、「アメーバピグ」を始めて……。「アメーバピグ」も最初ずっと赤字だったらしいんですよね。赤字なんですけど、チャリンチャリンを作んないとマズイと感じていた。ずっと広告で100万追っかけるわけにはいかない。いつかは疲れてなくなってしまう、ということをたぶん藤田さんは感じてたんだと思うんです。だから、ものすごい時間とお金をかけて「ピグ」というチャリンチャリンモデルを作ったんです。

 

なるほど。

 

木暮 だから、まあ、そういう両方が必要だと思います。イケイケどんどんも、もちろん必要なんですけど、それだけの人はたぶんすぐ消えてなくなるという。

 

たしかに。どちらも必要ですね。

 

自分が積み上げてきた仕事の中に資産はきっとある

 

この本を読んで、今までの働き方がダメだったことは分かったと。でも、どうすればいいのか分かんないという人がいると思うんですけど……。

 

木暮 そういう人たちに言いたいのは、今まで目先の成果しか追いかけてこなかったとしても、何かしら積み上げてきてるものがあるはずなんですよ。

 

気づいてないだけで。

 

木暮 はい。僕はサイバーエージェントで事業責任者に引っぱりあげてもらったのは、富士フイルムの無駄な仕事があったからなんですね。
 僕がいた時の富士フイルムは、仕事をしない会社だったんですよ。というと語弊があるかもしれませんが……いわゆる『仕事をしたつもり』の会社なんです。みんな作業ばっかりやらされて、無駄な仕事が多いっていうのは、みんな認識しているんですね。
 みんな無駄だって認識しているからこそ、それを「無駄な仕事」として捨てちゃっているんですよ。どうせこんなの役に立たないっていって捨てちゃってたんです。

 

はいはい。

 

木暮 みんな「膨大な無駄な仕事」をさばく能力があるにもかかわらず、誰もそこに目をつけてない。その能力を活かせてないんですよね。で、僕はサイバーで、藤田さんにその能力を見出してもらって、事業責任者に引っぱりあげてもらったんですけど。

 

「膨大な無駄な仕事をさばく」という能力は無駄じゃなかったわけですね。

 

木暮 そう。そこで気づいたのは、「自分が積み上げてきたもののなかに資産を見つけようとしなければ見つかんないんだな」ってことだったんです。
 だから、今までやってきたものが無駄に見えても、必ずそこに何か資産が1mmでもたまっているはずなんです。それに目をつけて、引っぱりあげるような努力を意図的にしないと、いつまでたっても見つけられない。見つけるのは自分自身なんですね。
 もう今日から働き方を変えると同時に、今までやってきたことのなかで積み上げは何かないかっていうのを意図的にほんとに、一生懸命探してくださいっていうことを言いたい。

 

なるほど。勉強になりました! 今日はありがとうございました。

 

(終)

インタビュイー紹介

木暮太一

木暮太一

作家、出版社経営者。1977年千葉県生まれ。慶應義塾大学を卒業後、富士フイルム、サイバーエージェント、リクルートを経て、独立。ビジネス書作 家として活動しつつ、出版社(マトマ出版)を経営している。大学の経済学部在学中に「資本主義経済の構造」と「労働の本質」を学び、その後10年間の会社 員生活で「労働者のリアル」を体感しながら、現代日本で若者が現実的に選択し得る「幸せな働き方」を追求してきた。その知見をまとめたものが本書である。 著書に『新版今までで一番やさしい経済の教科書』(ダイヤモンド社)、『マルクスる? 世界一簡単なマルクス経済学の本』(マトマ出版)、『学校で教えてくれない「分かりやすい説明」のルール』(光文社新書)など。

インタビュアー紹介

速水健朗

速水健朗

1973年、石川県生まれ。ライター、編集者。コンピュータ誌の編集を経て現在フリーランスとして活動中。専門分野は、メディア論、都市論、ショッピングモール研究(『思想地図βvol.1』ショッピングモール特集の監修)、団地研究(『団地団ベランダから眺める映画論』大山顕、佐藤大との共著を準備中)など。TBSラジオ『文化系トークラジオLife』にレギュラー出演中。主な著書に『ラーメンと愛国』(講談社現代新書)、『自分探しが止まらない』(ソフトバンク新書)、『ケータイ小説的。――“再ヤンキー化”時代の少女たち』(原書房)など。

きみに必要な武器

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