前回「同僚とランチに行くな」という衝撃的提案をした千田琢哉氏。今回は「自己投資」についての話だ。ビジネス書などでは、よく「自己投資をしろ」という提言をよく見かけるが千田氏は著書で「英語勉強をやめよう」「資格試験の勉強をやめよう」といった提言をしている。では、僕らはいったいどうやって「自己投資」すればいいのか? 今回も速水健朗氏が鋭く迫る。3300人以上のエグゼクティブと対話してきた経験から、「きみに必要な武器」を探ろう!
撮影:尾鷲 陽介
前編はこちら「若者のカリスマ・千田琢哉が語る! いま「やめるべきこと」とは?【前編】」
この本の中では、自分に投資しろということが幾度も語られますよね。でも、同時に資格試験の勉強はやめなさい、英会話教室は無意味ですと書かれている。「英語ができても馬鹿は馬鹿」「英語力は出身校より当てにならない」というのは名言だと思いました(笑)。でも、何が自分への投資なのかは、書かれてませんよね。
千田 いま現実逃避していることを頑張るというのがいいんじゃないですか。がんばってやるのが勉強で、それから逃げるためにやるのが現実逃避だって人は考えがちですけど、僕は現実逃避こそ勉強だって思ってるんですよ。
現実逃避って、例えば会社の仕事がうまくいかないから合コンに精を出すとか、受験勉強さぼってゲームに熱中するとかそういう?
千田 合コンにせよゲームにせよ、勉強なんですよ。それに熱中して、時間も投資すればいいんです。例えば、学校のテストで0点を取りました。裏に描いた落書きが先生にほめられた。これ、学校では0点という評価でしかないですけど、社会に出れば落書きで点数がもらえるんです。むしろ、成功するためには、落書きを極めた方が早いというのが社会なんです。
千田さんご自身も、逃避からはじめて今につながっていることってあるんですか?
千田 いま私が365日毎日24時間やってることって、現実逃避から始まって仕事になっていることです。大学の頃に本を読むことにはまったときに、俺はサラリーマンにはなりたくない、本を書くぞって思ったんですね。そこで何をしたかというと、自分にとってなるべく不向きで、古い大企業で辞めるのに未練が残らなそうな企業を選んで就職したんですよ。それで選んだのが由緒正しい大企業の代表格である損害保険会社です(笑)。
それは、本を書くネタになると思ったからですか?
千田 その当時は、誰も信じてくれなくて、みんなに保険会社だけはやめとけっていわれたんですよ。だけど、私はその仕事がつまらなそうだからこそ選んだんですね。
つまらないと思って入ってみたら、実際どうでした?
千田 それが、意外なことにおもしろかったんですよ(笑)。もともと期待がゼロだったこともあって、とにかく見ること聞くことどれもおもしろかったんです。まず大阪の本部に配属されて、法人営業をやりました。大阪の中小企業に対して「うちの保険の販売代理店をやらないか」という提案を経営者相手にしていくのです。そこでは、数多くの経営者たちに会うことができたんです。彼らに会って話をしているうちに、保険ビジネスの提案をするよりももっとスケールの大きい経営そのものに関わってみたいと思うようになったんです。それで、経営コンサルタントの仕事に興味を持つようになるんです。
それでコンサルに転職すると。それはそれでおもしろかったんですか?
千田 もうね、あと300年くらいやりたいと思うくらいにおもしろかったんです。これは天職だなって。だからサラリーマン生活を予定より延長してしまった。大学を出たときに、僕は30歳までサラリーマンをして、30歳ちょうどで独立するって決めてたんです。最後のサラリーマン生活の数年で、本を書く機会も巡ってきて、「あ、やっぱりな」って直感しました。
いまの話って、好きなことを貫け、好きこそ物の上手なれみたいなよくある話とは違いますよね。やりたいことをやるために、そうじゃないところに飛び込んでみたと。
千田 わざと遠回りした方が近道だっていう話ですね。それがなんでできたかというと、そういうことを教えてくれる本があったからですね。あと、10年間遠回りしても、それへのモチベーションが落ちないんだったら本物だろうって、自分をテストした部分もありますよね。
でも、その経験を教訓としてアドバイスするのは難しいですよね。プロ野球選手になりたいのならまずは豆腐屋になれ!みたいな話ですもんね。
千田 大学時代に本を読んでるうちに気づかされたことがあるんですね。著者には、一冊本を出して精根尽き果ててしまう人と、一冊出したのを機に、次々に本を世に出していく人の二つのタイプの著者がいるということです。で、100冊、200冊・・・と出し続けていける人ってデビューまでに時間がかかっている人が多いんですよ。
浅田次郎さんがまさにそうですよね。デビューがすごく遅くて、一度本が出るとすぐに2冊目、3冊目と次々傑作を書いていった。村上春樹さんだって、20代はずっとジャズ喫茶の経営をしてお客の愚痴をひたすら聞いていたわけで、ため込んだ貯金があったから次々書けたんだと思います。
人生は焦ることなくて、デビューは遅くても引き出しがあれば成功するよと。いま人生がうまくいってない人にとって、励みになると思います。
千田 まだ活火山になってないと思えばいいんです。マグマをぐつぐつ煮えたぎらせておいて、ここぞというときに爆発する力をため込む。それで、ここぞというときに爆発するんです。爆発するときには、チャンスをぐっと掴むための握力が必要です。絶対に離さないぞっていうチャンスを掴むための握力です。それをいかに蓄えておくかがとても大事なんだと思います。
今日はありがとうございました。
千田琢哉
愛知県犬山市生まれ、岐阜県各務原市育ち。東北大学教育学部教育学科卒。日系損害保険会社本部、大手経営コンサルティング会社勤務を経て独立。コンサルティング会社では、多くの業種業界の大型プロジェクトリーダーを務めてきた。現在までに延べ3,300人を超えるエグゼクティブと1万人を超えるビジネスパーソンと対話。それらの経験と知恵を活かして「タブーへの挑戦で、次代を創る」を自らのミッションとして活動している。現在、執筆・講演を行う他、複数の組織で社外顧問を務めている。著書は『死ぬまで仕事に困らないために20代で出逢っておきたい100の言葉』(かんき出版)、『人生で大切なことは、すべて「書店」で買える。』(日本実業出版社)等多数あり。現在、南青山在住。
1973年、石川県生まれ。ライター、編集者。コンピュータ誌の編集を経て現在フリーランスとして活動中。専門分野は、メディア論、都市論、ショッピングモール研究(『思想地図βvol.1』ショッピングモール特集の監修)、団地研究(『団地団ベランダから眺める映画論』大山顕、佐藤大との共著を準備中)など。TBSラジオ『文化系トークラジオLife』にレギュラー出演中。主な著書に『ラーメンと愛国』(講談社現代新書)、『自分探しが止まらない』(ソフトバンク新書)、『ケータイ小説的。――“再ヤンキー化”時代の少女たち』(原書房)など。ブログ「【A面】犬にかぶらせろ!」http://www.hayamiz.jp/「【B面】犬にかぶらせろ!」http://d.hatena.ne.jp/gotanda6/
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