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ジセダイジェネレーションズ U-25

【世界一大学生】ジャグリング世界大会優勝者 長竹慶祥の「戦略的人生」

2013年08月26日 更新
【世界一大学生】ジャグリング世界大会優勝者 長竹慶祥の「戦略的人生」

久しぶりのU-25は、世界一の経験を持つパフォーマー! 16歳の時にアメリカで開催されたジャグリング世界大会Jr.部門で優勝した経歴の持ち主。来年から広告の世界に飛び込む長竹さんに、ジャグリングから学んだことをうかがってきました。

取材:今井雄紀 元重慎太郎 構成:元重慎太郎

まずはこちらの動画をご覧ください。


Juggler Senjyu Promo Video from Yoshiaki Nagatake on Vimeo.


1日8時間、中高生の10000時間をジャグリングに費やす

 

今井:いやー動画見ましたけどすごいでね。ジャグリングをはじめたきっかけは?

 

長竹:僕が中学1年生の時、先輩が文化祭でパフォーマンスをしていて、それを見てすごいなーと思ったのがきっかけでした。パフォーマンスが終わった後に先輩に声をかけてやらせてもらい、文化祭そっちのけでハマってしまったんです。

 

今井:スポーツとか、他にも色々有る中で、どうしてジャグリングだったんでしょうか?

 

長竹:上達が目に見えやすいというのが、ジャグリングのひとつの魅力だなと思っています。ジャグリングって極端に言ってしまえば、その技ができるかできないかの二元論なんです。ちょっと練習すればできるみたいな技もあって、上達が目に見えるのが楽しいんです。それが刺激になったんじゃないかなと思います。

 

今井:なるほどなるほど。世界チャンピオンになったのは、学年で言うといくつのときですか?

 

長竹:高2ですね。

 

今井:中1ではじめて、高2で優勝! チャンピオンになるまで4年しかかからなかったんですね。

 

長竹:そうですね(笑) 当時は毎日8時間以上練習してて、あとから計算したら合計10000時間以上やってました。なんか人って、10000時間練習すると、そのスキルが身につくらしくて……。

 

今井:「10000時間の法則」ですね。ん? でも、1日8時間練習っておかしくないですか? 高校野球の強豪校みたいに、午後は「体育」と称した練習があるとか、そういうわけじゃないですよね。普通の人の生活で……。

 

長竹:朝7時に起きて、1時間くらい練習して。朝ご飯食べて学校行って、10分休みとかも練習して。昼休みも放課後ももちろんやって……。

 

今井:……友達いました?

 

長竹:きっといたと信じています(笑)

 

今井:放課後も、授業終わった瞬間から練習?

 

長竹:やりはじめて、暗くなったら家帰って、近くのスポーツセンターで練習して、風呂入ってまたやって、寝る、みたいな。

 

今井:スポ根ですね。

 

長竹:スポ根ですよ。でも楽しくって、自然に道具に触っちゃうみたいな状態に入ってたんで。苦しくはなかったですね。

 

ジャグリングは脳にいい?

 

今井:勉強する時間ないですよね?

 

長竹:世界大会直前は本当にジャグリング漬けの生活だったんですけど、普段はジャグリングを続けさせてもらうかわりに、うまく時間をつくって勉強もちゃんとしてました。

 

今井:自分の中で?

 

長竹:はい、親に文句を言わせないために(笑) あと、勉強とジャグリングがいい感じに相互作用するんですよ。テスト前の勉強期間中に、ずっと出来なかった技が突然できるようになったり。

 

今井:あるあるなんですね。

 

長竹:はい。周りのジャグラー友達に聞いても、同じような経験をしている人がたくさんいて。

 

今井:それは、限られた時間にやろうと思うからですか?

 

長竹:単純にリフレッシュしますし、科学雑誌『Nature』の論文でも紹介されてたんですけど、ジャグリングが脳に良い影響を及ぼすという学説もあります。記憶力の世界大会の会場では、休憩時間にジャグリングかルービックキューブをやってる人が多いとも聞きます。

 

元重:単純作業を繰り返していると、集中力が高まるって言いますもんね。

 

長竹:ジャグラーには、理系の方も多いんです。ジャグリングを始めたことで理系になるのではなく、もともと理系な人がジャグリングに興味を持ちやすいっていうのが正しいと思うんですけど。

 

 

「戦略」で世界大会を制す

 

元重:何歳ぐらいのときに世界大会に出ようと思ったんですか?

 

長竹:高校1年生くらいですね。色んなジャグリングサークルに通って周りを見渡したとき、自分の実力に少し自信が出てきて、出てみようかなって。友達に大会出場者も多かったので、世界大会は身近というかそんなに遠い感じではなかったんですよ。

 

今井:普段一緒にいる仲間って影響されると思うんですけど。

 

長竹:めちゃめちゃ影響されます。僕、練習の過程でいいお手本というか自分の嫉妬の対象になる存在を近くにつくるんです。どうすれば彼らに追いつけるかずっと考えていたので、周りの環境はとても大事でしたね。

 

今井:そういう意味では世界一になっても、自分が世界で一番うまいジャグラーだとは思っていない?

 

長竹:まったく思ってないです。だって僕よりジャグリングうまい人、いくらでもいますもん。でも、僕はとにかく大会で勝ちたかったんです。勝つ戦略を練って、技だけじゃなくて、魅せ方だったりとか、音楽だったりとか、観客をどうやって盛り上げるかを考えて。だから「そんなにうまくねぇだろ」って叩かれたりもしたんですけど(笑)

 

「身近に手本を置く」ことの効能

 

今井:4年という期間でかけあがったのがすごいなと思うんですけど、自分なりの上達のコツってありますか?

 

長竹:あくまで僕の上達のメソッドですが、いいお手本を近くに置くことだと思っています。僕が出来るようになりたい技を出来る人がいたら、まず仲良くなる。それで技をビデオで撮らせてもらう。その人と僕の映像を見比べて、違っている要素を全部洗い出すんです。その差が、「出来る・出来ない」の差だと思って。

 

例えば、腕の角度が違うなとか、ひもを持ってる位置が違うなとか。全てを変えるのではなく、異なるポイントを1つ1つ変えていくことで、その都度、技への取り組み方を変えます。これが、僕の上達のメソッドでしたね。

 

ポイントは、「あまり言葉で教わらない」ということかもしれません。「コツってなんですか?」なんて聞くと、みなさん親切に教えてくださるんですけど、そのコツはあくまで本人にとってのものなので……。百聞は一見にしかずってことなのかなと。

 

今井:聞かないっておもしろいですね!

 

長竹:言葉で聞くことももちろんあるんですけど、言語化が上手い方とそうでない方がいます。特に身体知は言葉にするのが難しい。だったら見た方が早いなと。

 

「天狗にはなりたくない」アメリカでの大道芸人生活

 

今井:事前情報だと、アメリカにも行かれてますよね? 行ったのは何年生のときですか?

 

長竹:大学3年生の3月から6月までの3ヶ月間ですね。

 

今井:短期留学という感じだったんでしょうか?

 

長竹:いや、そんなかっこいいものじゃなかったです。ちょっと天狗になりかけてた自分が嫌で……。大小色んなイベントに出演して顔を知ってもらったりして、大学生活が充実していた中で、次第に、「こんな居心地のいいところに、大学の時から浸かっててお前どうすんの?」みたいなことを思うようになりました。誰も僕のことを知らない環境で、僕はちゃんと生き抜けるのかってことを試してみたかったんです。

 

今井:自分に厳しい! 向こうで大道芸をされたんですよね? 最初からたくさんチップもらえました?

 

長竹:初めてやったときは、30分くらいで10ドル稼げたんですよ。余裕じゃんと思って。

 

今井:時給でいうと2000円じゃないですか!

 

長竹:「全然食べていけるわ」と思ったんですけど、初日はたまたま運がよかったみたいで……。次の日は、2時間やって4ドルしか入ってなくて。そこからはもうナシのつぶてでした。いよいよ稼がないとまずいというタイミングで、ストリートパフォーマーのメッカのような場所へ行ったんですよ。「稼げるパフォーマーがなぜ稼げるのか」を分析しました。

 

今井:長竹流上達メソッド来たー!

 

長竹:そうですそうです(笑) 観客がどの大道芸を見るのか、どういう動線で集まっているのか。音が大きいから集まるのか、見栄えが派手だから集まるのか……。色んな方向から分析をしました。

 

あと、パフォーマーたちと仲良くなって「このままだと本当に死んじゃうから、どうやったらチップが多くなるのか教えてくれ。」って聞いたり。

 

そうして分析を重ねた結果、「Juggling Samurai」というコンセプトでパフォーマンスをするに至りました。日本から持ってきた袴を着て、筆で「Juggling Samurai」と書いた看板を作って、音楽も変えて……。そうして細かい工夫を積み重ねたら、最終的には2時間で150ドルくらい稼げるようになりました。

 

 

今後の、ジャグリングとの付き合い方

 

元重:本当の意味で、世界で通用しちゃったんですね……。いや、世界チャンプだけでも充分すごいんですけど。「ジャグリングの道に進めばいいのに」みたいな事を言う人っていませんか?

 

長竹:いますいます!

 

今井:僕も軽くお話聴くまでは、きっとプロになられるんだろうなと思っていました。(春から広告会社に勤務予定)

 

長竹:当時僕を含め3人の日本人が世界大会のJr.部門で優勝経験があったのですが、僕以外全員ジャグリング1本で生活しています。だとしたら逆に、優勝して他の道に行く人がいてもいいんじゃないかなって。

 

今の考え方、ジャグリングで人を魅せること、上達するためにどのようなコミュニケーションをとればよいかなど、ジャグリングから学ぶことがすごくあったので、僕は「もったいない」とは思っていません。ジャグリングさえできれば、アメリカで一人で生きていくには困らないことも分かりましたし。

 

元重:もうジャグリングには一切未練がないという感じですか?

 

長竹:いや、やめてないですよ!(笑) ご依頼があれば今後もイベント等に出演したいですし。 でも、これからはもう少し気楽に付き合っていくと思います。 あと、僕はジャグリング1本で食べていくことを諦めていた人間ですが、ジャグリングで食べて行く覚悟をした人、これからする人もたくさんいるんですよね。そういう人たちがちゃんと食べていけるように、何かお手伝いができればなとは思っています。

 

 

「スラッシュ」を辞めよう

 

今井:なんか長竹さんて、失敗しない感じがしますね。僕ももう少し戦略的に生きよ……。最後に1ついいですか? 行動機会提案サイト「ジセダイ」の読者、同世代の人におすすめしたい「行動」を、ひとつ提案してもらってもいいでしょうか?

 

長竹:行動……そうですねえ、難しいなあ……。SNSのプロフィールで「/」をやめるといいかなと思います。

 

今井:スラッシュで自分にいっぱい「タグ」を付けている人、多いですよね。

 

長竹:伝えたい自分はたくさんいると思うんですけど、相手が興味をもつ自分はそんなにいなかったりするじゃないですか。客観的に自分の市場価値を意識した方がいいと思うんです。僕はたぶんジャグリングのおかげでそれができました。ジャグラーとしてどうするかとか、世界大会で優勝するにはどうするかとか考えていたので、無意識のうちに自分の市場価値を考えていました。これがかなりプラスになったなと思います。

 市場価値って結局、「自分にしかできないこと(あるいは他の人よりはできること)」があるかないかだと思っていて。就活はもちろん、社会人になってからも大切な考え方になるんじゃないかなと思っています。

 

元重:自分だけしかできないって言うと、学生からはみんな似たような答えが出てきますよね。

 

今井:ちょっと得意なことに、何か掛けあわせればいいんですよね。

 

長竹:伝えたい自分が多くても、人はそこまで自分に関心を持っていないし、見てくれていない。まずはSNSのプロフィールのスラッシュの数を減らして、「ひとつだけで伝わる代名詞」を見つけられるといいと思います。

 

元重:確かに意識高い系の学生のTwitterプロフィールを見ると、「◯◯大学商学部/広告/ファッション/一眼レフ/SEKAI NO OWARI/インカレ××××2015代表/日々の出会いに感謝」みたいな。

 

今井:それよりも一言で伝わるフレーズの方がパッと覚えられますしね。いやー今日は面白かったです。ありがとうございました。

 

長竹:こちらこそ楽しかったです! ありがとうございました!

 

 

ジセダイジェネレーションズU-25の紹介

長竹慶祥

長竹慶祥

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22歳の大学4年生。ジャグリング世界大会Jr.部門優勝。蕎麦好き。

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