学習塾、著作および講演、学校および教育委員会との提携。教育を軸に3つの事業を展開し、躍進するプラスティー。そのCEOである清水さんから、これまでの人生と、これから成したいことについて、お話を伺いしました。
取材 竹村俊介・今井雄紀 構成 今井雄紀 撮影 尾鷲陽介
清水 面白い授業と面白くない授業の違いは何だろう、とかは考えながら聞いていましたね。生意気にも、「先生、こういうふうにしてほしいです」みたいなのは言ったりしましたけど。あと、授業以外でも「学校これでいいのか!」みたいなのがあったので、たくさん校則は変えましたね。指定カバンが、白カバンっていって、戦時中に使っているカバンだったんですけど、それを自由化にしたりとか。食堂は●●●●●が入ってたんですが、●●●●●はサービスが悪いからと言って、PTA会長さんと組んでムーブメント起こして、違う会社に替えてもらったりとか。けっこうそういうやんちゃな中高時代でした。
今井 生徒会長△(さんかっけー)!ですね。すごいなあ。昔から、「なんでこれはこうなんだろう」というのをゼロベースで考える性格だったんでしょうか?
清水 そうかもしれませんね。3冊目の著書『自分でも驚くほど成績が上がる勉強法』(実務教育出版)のコラムは、「◯◯に関する僕のそもそも論」というのをいくつか書いています。「そもそも」っていう問い自体が、すごく大切だと思ってるんですよ。「そもそも」から入ると、やっぱりほんとに本質的なところに話が進んでいくので。「そもそも学校ってなんで行かなきゃいけないんだろう」とか、「そもそも授業って何なんだろう」とか、そういう問いは昔から好きだったんです。会社の経営を始めて、よりいっそう考えるようになりました。会社をつくってしばらくしているうちに、教育の世界もこれまでと違ったふうに見えてきたりとか。教育学の研究、いろんな先生方の研究とかを見て、「え? こうじゃないだろう」とか思うようにもなりましたし。
なんか教育システムと経済システムってすごく仲が悪くて、経済システムの中でヒューマンリソースについて問題があると、「教育のせいだ」になるし、教育は教育で、「経済システムにお前らは飲まれていくのか」って言いますよね。教育システムでは「将来的に、成果主義バリバリの、お金で判断するような人間になってほしくない」みたいに言われていて、互いにすれ違いが起こっている。
ところで、僕、会社を作ってよかったなと思っていることがあって、経済と教育、両方経験できてることなんですよ。教育システムだけにいたら、「お前、就職したこともないくせに」とか、「お前なんか、ほんとに実社会なんかわかんないだろ」みたいに言われるかもしれなかったんですけど、会社を起こしてある程度のビジネス経験を積ませて頂けたというか……。社長って、起業したときに、ほんと最初全部やらなきゃいけないじゃないですか。これだけ働いているんだから「実社会知らないだろ」とか文句言われなくなるかな、とは正直思っていたんですけどね。
竹村 究極のビジネス経験と。
清水 ひょっとしたら、そうかもしれませんね。でも、学生起業は勧めないというか。やっぱりいろんな人に迷惑というか、心配と、あとはお力添えをいただくので、とりあえずやめろとは言いたいですけどね(笑)。
竹村 そうやって力を貸してあげようと思われるのも、またそれも能力だと思いますよ。
清水 そんなことはないと思います。
竹村 そもそもなんで学校に行かなきゃいけないのかを考えている教育関係者って……
清水 まあ、少ないですよね。
竹村 僕が見てきた中では、ほとんどいなかったですよ。「そういうもんじゃん」みたいなとこがあると思う。「そもそも」をすっ飛ばしてますよね。
清水 そういうのを、子どもたちが20代前半の僕ら若者と一緒に考えることができるような本とかを出せるといいなと思って、3冊目の本も、「これは受験テクニック本ではなくて、勉強について考える本です」っていうのを「はじめに」で何回も書きました。一方的に勉強のやり方を教えるのではなく、一緒に考えたかった。
そもそも、今までの教育って、やっぱり上下関係というか、教育者が学習者に対して、なんか知識を注入していくような感じになってしまっているんです。でも、この構図って、絶対におかしいと思うんです。教育者と言われている人も、同じ学習者であると。ただ、教育者は学習者よりも数歩リードしているので、教育者と子どもたちというのは、自然とフラットにはなれない。ただ、繰り返しになりますが、「教育者も学習者である」というスタンスは絶対にもつべきで、そこだけを切り取ってみたら、完全にフラットとも言えるでしょう。
竹村 今までの教育の図式って、そうですよね。「俺から与える」みたいな。答えを先生が握っていて、問題を与えて。
清水 はい。
竹村 小さいときは、勉強しなきゃと思うというよりは、恐竜かっこいい!とか、世界でいちばん高いビルって何なんだろうとか、そういう単純な好奇心で、勉強しようと思って図鑑を見ていたんですよね。それが、いつしかテストが始まって、勉強しなければいけない、みたいな、義務みたいな感じで、例えば算数とか興味がなくてもやらなきゃいけない。好奇心があって、それを追求していくことが勉強になっていたのが逆転しちゃってて、面倒くさいことになってるな、っていうイメージがあります。
清水 現状では、教育っていうのが我慢大会みたいになっていて、教育が担っているのは、ただの選抜機能になっちゃっていますよね。そもそもその人が何を学んだとか、何を学ぶべきであるかという話ではなくて、どれだけテスト勉強を我慢して頑張りましたか、というものに回収されていて、悲しいですよね。結局、何を学ぶかをこれから考えなきゃいけないので、“HOW TO(どうやるのか)”じゃなくて“WHAT TO(何をやるのか)”のほうが大事でしょ、というのが僕の考えなんですけど。
竹村 教育がどうあるべきかというのは、表現できないかもしれないですけど、1つはWHAT TOのところにあると。
清水 それは、なんですかね、表現は難しいですけど、教育業界全体は、昔から今まで通りWHAT TOに向かっていると思うんですけど、僕ら若い世代が教育に携わろうとすると、例えば起業しようとかしたりすると、プラットフォームづくりとか、アプリ開発とか、あっちに行っちゃっていて。その世界ってほんとに資金がないとダメだし、教育のコンテンツってそもそも面白くありませんよね。面白くないものの学び方を面白くしてもそれは違っていて、大切なのはコンテンツそのものを面白いものに変えていくことだと思うので。これは若手の僕らが気をつけなきゃいけないことの1つで、ITを駆使したプラットフォーム作りに安易に逃げてはいけないんじゃないかと。
今日の議題は教育問題についてということですが、「教育」ってどこに限定します?学校教育にするのか、家庭教育とか生涯学習とか、色々あります。
竹村 まあ、学校教育が。
清水 学校教育でいうと、一番の問題として挙げられるのは、やはり学校の先生がものすごく忙しいというところにあります。先生方が忙しいので、いちばん学校の先生のすべきことの1つである、教材研究ができない今の教育では、教材研究をする時間をつくることが必要なんです。
竹村 それで3つ目の学校とか教育委員会との提携というのが、忙しい先生のお手伝いをしたいと?
清水 そうですね。僕らは直接的に先生方に時間を差し上げることはできません。僕らができることは、生徒の吸収力を上げて、先生が教えやすい状況をつくることです。勉強のやり方を知らない子ども達に授業すると、復習ができなかったり、ノートの取り方がわからなかったりと、なかなか子どもたちが授業を吸収できないことになってしまいますよね。その問題を解消するお手伝いを、僕らがさせて頂いているんです。
竹村 確か清水さん、どこかの町で教育改革を……
清水 青森ですね。行ってます、行ってます。
竹村 それはどういう経緯だったんですか。
清水 あれは教育委員会の方が1冊目の『習慣を変えると頭がよくなる』を読んでくださって、メールをくださってという感じですね。
竹村 それで町の学校に導入するお話があったんですか?
清水 最初は、まず「講演会に来てくれないか」だったんですけど、お話を進めていくうちに、「じつは町全体で導入を考えているんです」って言ってくださって。だから頻繁に向こうへ行って、講演会をして、三戸町っていうところなんですけど、人口が1万人ぐらいの町ですので、学校数もそんなに多くないので。学習コーチを子どもたちにしたりとか、授業を見学させていただいたりだとか、教育長の方とか、町長さんとか、教育委員会の方とディスカッションをさせて頂いて、「こういう教育がいいんじゃないですか」というのを、学習アドバイザーとして入らせていただいているんですけど。
今井 町全部っていうのがすごいですよね。
清水 ほんと光栄ですよね。こういう場合のコンサルティングで大事なのは、その町のメソッドをつくることだと思うんですよ。町の子どもたちに独り立ちをしてもらうというか。ビジネス的には、いかに関係の継続、リピーターをつくって、契約の年数をいかにして長くするかっていうのを問われると思うんですけど、教育って逆だと思うですよね。いかに手を離すかと思っていて。ここ、すごく大切なポイントです。そもそも、教育というものは、誤解を恐れずに言えば、必ずしも必要なものではないはずなんです。人は教育者の意図と違って勝手に成長していきますし。
だから本質的な問いは、「教育には何ができるか」じゃなくて、「教育には何ができないか」だと思っています。やっぱり教育は絶対的な力を持っていないと思うんです。
例えば、三戸町で今やろうとしているのが、中高生が小学生に勉強のやり方を教えるという仕組み作り。これがつくれれば、高校生も小学生に学習方法や勉強そのものを教えることで自分の学びにもなるから、先輩と後輩で学び合うような、文化をつくっていきたい。僕らが目指しているのは「リピーターをゼロにすること」です。生徒ひとりひとりが僕らがいなくても主体的に勉強できるようになってもらうのが、目標なんです。
竹村 いいですね!いやー日本の未来が明るくなるお話が聞けた気がします。本日はどうも、ありがとうございました。
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