学習塾、著作および講演、学校および教育委員会との提携。教育を軸に3つの事業を展開し、躍進するプラスティー。そのCEOである清水さんから、これまでの人生と、これから成したいことについて、お話を伺いしました。
取材 竹村俊介・今井雄紀 構成 今井雄紀 撮影 尾鷲陽介
竹村 今日は、よろしくお願いします。
清水 こちらこそ、よろしくお願いします。
竹村 まずは、PlusTの事業内容から伺いたいんですが。
清水 はい。大きく分けて3つの事業があります。1つ目は学習塾の経営です。飯田橋で、プラスティーという学習塾を経営しています。2つ目に本や講演を通して発 信していく啓蒙活動があります。3つ目が、学校や教育委員会と連携して、学力向上を目的に、講習や講演を通して学習指導やアドバイスさせて頂くコンサル ティング活動です。最後が少しわかりにくいかと思いますが、『ドラゴン桜』のようなことを全国の学校でさせて頂いております。
竹村 なるほど。「教育」が軸になっているんですね。1つ目の学習塾について詳しくおうかがいしてよろしいですか?
清水 学習塾の授業は2つに分かれています。教科指導と、学習コーチです。教科指導は、一般的な学習塾に近い形です。ただ、内容にはこだわっています。 better than everの教材、授業、その一つひとつに、こだわっています。自分自身、教育学をずっとやってきているので、その知見を生かしつつすべての講義で、「なぜ それを学ぶのか」というところから考えてもらいます。学習コーチというのは、勉強のやり方を教えるというものでして、計画の立て方や、自己管理の仕方、予 習復習の仕方などを学んでもらいます。
竹村 勉強を教えるだけではなく、勉強のやり方から教える塾は、確かにあまり聴いたことがありませんね。
清水 そうですね。意外となかったかもしれません。
竹村 確かに学校で、「勉強しろ」とは散々言われるけど、じゃあどう勉強すればいいかって言うと、誰も教えてくれなかったですね。
清水 そうなんです。私には2人の兄がいるのですが、2人の兄が勉強のやり方を教えてくれました。そのお陰で、中学・高校時代に生徒会長や、応援団長、文化祭実 行委員、サッカー部などたくさんやっていましたが、それでもなんとか東大に行けました。受験勉強のためにやりたいことを諦めるのって、すごくさびしいなと 思っていまして。もちろん、勉強したい人は勉強だけやればいいとは思うのですが、つい美徳とされがちな、「何かを得るために何かを犠牲にする」というの が、あんまり好きじゃないんです。ビジネスでは、「orじゃなくてandだ」と言いますよね。どちらかを選択するのではなくて、どちらもやる方法を考えよ う、みたいな。そういう発想っていうのが、中高生にもあってもよいと思うんです。
竹村 やり方を知らないから、どっちかを捨てざるを得なくなると。
清水 もちろんそれだけじゃないとは思うんですけど。例えば学校の授業の聞き方や、授業の受け方、そしてノートの取り方を変えるだけで、自宅学習が3分の1で済 んだりします。家でノートまとめする時間がない人が、汚いノートをとって「あとでまとめればいいや」じゃなくて、授業中にノートをまとめることができれ ば、家へ帰ったらあとは覚えるだけで済みますし。そのノートの覚え方も、記憶の忘却曲線とか、いろんな計画の作り方とかがあるので、それを知ることができ ると、闇雲にやるよりは短時間で済むようになります。例えば、ノートの取り方なんですけど、具体的には「消える化ノート術」っていうやり方を伝えていま す。
竹村 見える化じゃなくて?消える化ですか?
清水 はい。ノートを取るときに、「大事なところをオレンジのペンで書く」というやり方です。それをやっておくだけで、復習が楽になるんです。赤のチェックシー トをかぶせればオレンジで書いた部分が消えるんです。簡単ですが、授業中にオレンジのペンで書くのって、けっこう度胸がいるんですよ。家に帰って落ち着い てやるのはできるのですが、授業中にやるのはけっこうドキドキします。なにせ、消せないので。そうすることで、先生のおっしゃっていることで何が大事かと いうのを考えながら聞くようになるんです。つまり、主体的になれるんです。オレンジのペンで書くという小さな工夫だけで、色々変わってくる。
今井 確かに、それは効果がありそうですね!授業を大事に受けるって、一番効率のよい方法ですよね。中高生にとって、1日のほとんどは授業が占めてるわけで。
清水 これは暗記系の科目向けの勉強法です。「消える化」によって覚えるべきポイントははっきりしているので、赤シートをかぶせてそれを覚えさえすればOK。こ うやって復習を前提としたノートづくりを授業中に終わらせてしまえば、かなり時間も短縮できるし、授業も集中できるし、一石二鳥ですよね
竹村 すごい合理的ですね。私の経験では、漠然とただ先生の話を聞いていました。プラスティーに通ってみたくなりました。
清水 こういうやり方をワークショップ形式で行い、生徒自身が理解して、実践できるようにすることが目標です。
今井 会社は1人で始められたんですか。どこかに所属していたとか?
清水 仲間は多くいましたが、ほとんど最初は1人でやっていました。1年間は会社に泊まりこんで仕事していました。体育会で副キャプテンをやりながらだったの で、とてもキツイ毎日でした。家に帰るのは、月に1回くらい。最初に始めたのは家庭教師でした。ただ、みんなで学ぶ「協調学習」というものをやりたかった ので、人数がある程度集まった段階で教室にしました。
今井 何歳ぐらいの頃から、勉強ってやり方があるって思われたんですか。
清水 中高時代から、やり方は大事だなとは思っていました。ただ、それを自分で将来仕事にしようなんて、まったく思っていませんでした。起業は、なんか胡散臭い というか、「怖いな」みたいなイメージがありました。当時僕らが大学生のときは、いろんなIT社長がバーッと出たときで、テレビですごくスポットライトが 当たっていたときだから、「あっちの世界は行きたくないな。六本木ヒルズとか、あんまりカッコよくないな」というふうに思っていたぐらいでした。
竹村 でも、結果的に起業されるわけですよね?
清水 そうせざるを得なかったというが、実際のところですね。将来的に自分で学校を創りたいと思っていて、既存の学校との連携を活発に進めたかった。話が通っ て、いざ契約というとき、学校の先生に、「法人じゃないと契約書が結べないから」というふうに言われてしまって、「じゃあ、会社にします」っていう。
竹村 会社を立ち上げようというわけじゃなくて、目的があって、そのために会社が必要だったと。
清水 はい、仕方ない、っていう感じで(笑)
今井 会社じゃなくて、当時、実績もなかったわけですよね?どうして、学校と契約するようなところまで至れたんですか?
清水 いや、ほんとそれはもう口コミというか、お世話になっている方々が……
今井 みんな推してくれて?
清水 そうですね。ほんとにありがたいことです。最初なんか、会社作ったのはいいものの、生徒数はゼロ。売上もなくて、ヤバいな、ヤバいな、どうしようかなと思 いながら、渋谷で食事をしていたんですよ。そしたら、その定食屋さんのオーナーの方から「あなた、普段何してるの?」って言われて。なんか、あんまり若い 人が行くお店じゃなかったから珍しかったみたいで。で、「東大の学生なんです」って話をしてたら、「じつはうちの子、大学受験に落ちて浪人してるのよね」 と仰っていて。で、そこで僕のプレゼンが始まるわけですよね。「いや、大学入試っていうのはこういう仕組みになっていまして、で、これを突破するには、こ こでこうで、こういう力が必要なんです」って言ったら、「あなた、一回うちの息子に会ってみてくれない?」と言われて、会ったらその子が習いたいって言っ てくれて、ワーイって。それが生徒第1号でした。そこからは、もうひたすら口コミですね。資本金50万円だし広告宣伝費なんてまったく持ってなかったん で。とにかく生徒を1人ずつ必死にみて、今の生徒数100人まで、コンスタントに増えていきました。でも、僕は拡大志向ではないので、意識的に増やそうと はしませんでした。
今井 色んな偶然が重なって、今のプラスティーがあるわけですね。もともと教育に興味があったわけではないんですか?
清水 あ、それはありました。14歳で中学2年生のとき、教育問題に目覚めましたね。
今井 はやっ!
清水 きっかけは「ゆとり教育」なんですよ。学校の社会のレポートがあって、自分で社会問題を設定して、調べてレポートを書けっていうのがあったんですね。で、 ちょっと調べ始めたら、当時ゆとり教育の是非があって、円周率が3になるとか、台形の面積を習わなくなるとか、そういうのが議論されているときだったんで す。1987年以降はゆとり世代って言って、バカになるっていう話が、日曜の討論番組とかでされてたんですよ。「87年生まれ以降、大変だな〜」とか思っ てたら、「自分、87年じゃん!」て気づいて。僕らがつくった法律じゃないのに、なんでこんなバカにされなきゃいけないんだろうと思ったんですよ。すごく 腹が立ってきて。それをきっかけに、教育問題を調べ始めたんです。
このレポート課題、2人以上に取材をしてこないといけなかったんですね。友達 は、例えば教育だったら区役所の教育の関係で、福祉を調べてるんだったら、区役所とか市役所とか、割と取材に応じてくれやすいところにみんな行ったんです けど、僕はちょっと、そういう意味では変わり者なので、その討論番組に出ている人たちの事務所を調べて、直接電話して、「海城中学2年6組19番の清水章 弘と申しますが、こういうレポートを書いていて、○○さんの本を読んで、ここをインタビューしたいので、40分お時間を頂けませんでしょうか」みたいなこ とを言いました。
そうしたら、教育関係の人ってお優しいから、全部通しくださったんですよ。尾木直樹さんも、和田秀樹さんもそうでした。あと は、かつて早稲田で総長をされていた西原春夫さんも2~3回会ってくださったりとかして、それで、教育関係の方たちはかっこいいなと思ったんです。自分も 将来こういう職に就きたいな、こんな大人になりたいなと思いました。
竹村 中学生でその行動力はすごいですね…
清水 変わり者だったんです。そのときに読んでいた本の中でいちばん面白かったのが、東大の教授が書いている本だったんですよ。なので、この人に習いたいと思っ て、東大の教育学部に入るんだって決めたのがその時ですね。だから、もうほんとに教育関係、教育しか僕は、逆にいえばもうずっとそれしかしてこなくて、 14歳から20歳のときまで7年間ぐらい、いろんな教育関係の本を読みました。
今井 そういう志を持って中高の授業を受けていると、先生のことってどんな風に見えるんですか?
清水 どうなんだろう。
今井 ダメだなあと思うときも?
(後編へ続く)
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