ジセダイ教官初!美大の先生の登場です。
わかっているようで全然わからないデザインの役割から、
「ぶっちゃけセンスじゃないの?」というところまで、
美大の講師であり、現役のトップアートディレクターでもある茂出木先生に、
わかりやすく解説して頂きました!
前編はこちら
取材・構成:今井雄紀(星海社) 撮影:尾鷲陽介
今井 最近茂出木さんがこれはいい!と思ったデザインてありますか?
茂出木 そうですね…代官山蔦屋書店は、「あそび」があって素晴らしいと思いました。過ごし方色々というか、「大人のTSUTAYA」を標榜してはいるんですけど、子供と行っても、犬と行っても楽しい。奥さんと子供が遊んでる間にお父さんが好きな本を探すなんてことが、自然とできるようになっています。郊外のニュータウンとかでたまにあるんですが、デザインを押し付けてしまっている空間ってあるんですよ。ここで買い物して、この公園に寄って、ここで井戸端会議があって…みたいな。そういうところで過ごしても、気持よくないんですよね。窮屈で。そういう意味で蔦屋書店は、意図がありつつも、適度に「あそび」があって、過ごしやすくなってますよね。書籍が集まった空間を中心に、カフェやラウンジはもちろんのこと、知育玩具に強いおもちゃ屋や、ペット用品やトリミングができるお店も併設されている。書籍を中心とした暮らしが作られているので、利用しやすいどころか、居心地が良い時間が過ごせますよね。代官山という街、文化にもフィットしていて、且つ街全体に新しい提案もなされている。あれは相当考えて作られていると思います。そういうものを、Webでも作れればいいなと思うんですよね。
今井 それおもしろいですね!Webの、特に広告って基本、1本道引きたがりますもんね。最初のページで商品のキャッチ出して、次のページがその理由で、その次が申し込みページで…みたいな。
茂出木 そうなんですよ。作ってみたいですね。一本道じゃない、人それぞれが好きなように触れるものを。
今井 もしかして、このオフィスのデザインにしても、そういうことを考えられているんですか?
茂出木 はい。例えば玄関のところにある長めの椅子。これは、来客用はもちろん、会社でパーティをやった時に休憩してもらえる場所にもなれば、ちょっと気分を変えたい社員が座って作業することもできます。
今井 確かに以前オープニングパーティでお邪魔した際、不意にその椅子に座っていました。あの「不意」は、茂出木さんの「故意」だったんですね。手の上で転がされていたのか…
茂出木 必ずしもそうとは限りませんけどね(笑)ただ、そういう、「デザインの意図」に気づくようになると、色々楽しいですよ。景色を見ている時に不意にもたれかかった壁。その壁がすごくもたれやすく出来ていたりした時に「もしかして…」って気づくのってすごいおもしろいですよ。建築家と対話してる気さえします。
柿内 本作りにも同じ事が言えるかもしれません。星海社新書は、「昔の自分」に向けて作っています。昔町田に住んでいて、会社まで満員電車で通ってたんですけど、座って、両手で本を広げて読めることなんてまずないんですよ。立って片手で読むのがやっと。だから、星海社新書は、文字が少し上よりに配置してあって、片手で持っても指で字が隠れないようにしてあります。
茂出木 すばらしいデザインですね。きっと、電車で読んで気づいてる人がいますよ。そこに気づいた時の喜びこそ、ブランド体験ですから。
今井 ブランド体験…僕もWii Uのデザインを見た時に、「任天堂すごい!」って思ったんですよね。Wiiは、「お母さんに嫌われないゲーム機」をコンセプトに作られたって聞いたことがあって、だから省エネで、コンパクトで、白くて、その上コントローラがゲームっぽくなくしてある。続くWii Uは、テレビを消しても、コントローラ側の画面で続きのプレイができるって聞いて「いよいよ、ナイターを見たいお父さんを攻略しにきたか!」って勝手に感動したんです。
茂出木 おもしろい考え方ですね。確かに任天堂のデザインは、いつも洗練されています。
今井 最後に、ジセダイの読者に、メッセージを頂いていいですか?
茂出木 はい。今の世の中って、「若いから世に出れない」ってことが、少なくなってきていると思うんですよ。だから、どんどん自分の価値観や意見を、言葉や表現に載せて、世に出していって欲しいとおもいます。しかも、自分とは違う価値観の人たちに対して、それをやって欲しい。きっと否定されて、少し腹が立つと思うんですけど、「じゃあどうすればいいのか」を考えるじゃないですか。仲間内での「~だよね」、「~いいよね。」では、何も成長しませんから。
今井 仰ってること、すごくよくわかります。ただ、いざやるとなると、色々考えてしまいますよね…
柿内 なんか思い当たることあるの?
今井 そうですね…例えば僕が新しい新書のアイデアを思いついたとして、それを「これおもしろくないですか?」って、星海社のTwitterアカウントからつぶやくとしますよね。それに反対意見がきたり、そもそも何もリアクションがなかったりすると、すっごい凹むし、会社にも迷惑かける気がしてしまいます。
茂出木 アイデア自体もさることながら、プレゼンの仕方とタイミングは、きちんと考えないといけないと思います。最近ってSNSが特にそうですけど、「早く言ったもん勝ち」っていう雰囲気あるじゃないですか?あれがよくないんですよ。確かに一理あるんですけど、だからと言って、思いついたことポンポン出せばいいってもんじゃない。プレゼンのチャンスは大抵1回ですから、どんな内容でいつ投稿すればたくさんの賛同を得られるか。そこは、熟考が必要だと思います。
柿内 そこもデザインなんですよね!Twitterとかでも、ワードに書き出して、何度も何度も推敲してからつぶやく人いますものね。
茂出木 いますねー。そういう人に限って、思いつきでやってるように見せるのがうまかったりします。
今井 なるほど。僕は何か思いつくと、嬉しくなってすぐ出してしまうことが多いです。これからは、考えてからやろうと思います。今日は、ありがとうございました!
茂出木 こちらこそ、ありがとうございました。
アートディレクター / 代表取締役 / 日本大学芸術学部非常勤講師
1976年東京都生まれ。日本大学藝術学部デザイン学科卒業。ビジネス・アーキテクツなどのデザイン会社を経て、2010年5月、デザインスタジオTWOTONE INC.を設立。国内大手企業のコーポレートサイト、ブランディングサイト、プロモーションサイトなど、多くのインタラクティブコンテンツのアートディレクション、デザインを手がける。
文化庁メディア芸術祭優秀賞、カンヌ国際広告祭 Titanium and Integrated Lions、グッドデザイン賞、東京インタラクティブ・アド・アワード グランプリ、OneShow、WebbyAward、ロンドン国際広告賞など国内外のアワード受賞歴多数。2005年より出身校である日本大学芸術学部にて非常勤講師を勤める。
氏名
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茂出木龍太
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フリガナ
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モデキリュウタ
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所属
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日本大学芸術学部
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職名
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非常勤講師
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キーワード
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デザイン
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