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ザ・ジセダイ教官 知は最高学府にある

「批判なくして、創造なし!」松井剛先生のお話を聞いて、マーケティングが学びたくてたまらなくなった!【後編】

2013年04月15日 更新
「批判なくして、創造なし!」松井剛先生のお話を聞いて、マーケティングが学びたくてたまらなくなった!【後編】

前回に続いて、一橋大学松井剛教授に、マーケティングの深〜いお話を伺ってきました。誰にとっても「武器」となる普遍的なお話がたくさん聞けたので、大学生はもちろん、若手社会人も必見です。

取材:柿内芳文・今井雄紀 構成:今井雄紀 写真:今井雄紀


前編はこちら「「マーケティングはモーケティング」松井剛先生のお話を聞いて、マーケティングが学びたくてたまらなくなった!【前編】

ポリデントの広告にAKBを使うと?

 

柿内:「二郎の神聖化」おもしろそうな話ですね!

 

今井:(だめだこの人。二郎のこと好きすぎる……。)

 

松井:要するに、世俗的なものに聖なる意味を与えちゃって、大事なものにしちゃうっていうことですね。いろんな分野で見られる現象なんですけど、やっぱりそういうプロセスって、文化人類学がフィットしてるんですよ。説明の型がいろいろあるので。

 

それとは全然違う研究もありますよ。いま修士論文書いてる子なんていうのは、割と典型的な社会心理学的研究なんですけど、広告に出てくる人とそこで広告される商品の一致度が、見る人の意識にどう影響を与えるかみたいなことを研究してくれています。

 

例えば、ポリデントの広告にAKBを使うとフィットしない。じゃあポッキーはどうだろう。これはフィットするねと。まあ言われたら当たり前なんですけど、それを実験してみると、全く一致しない場合はもちろんダメだし、かと言って一致しすぎるのもダメで、適度な不一致っていうのが実は一番好意的な反応を呼ぶんじゃないかなっていう仮説をテストしようとしているんですよ。

 

今井:おもしろい!

 

松井:僕もそう思います。どういう結果になるのか楽しみです。そういう感じで、ほんとに色んなことやってる人がいるので、商学部は分かりづらいんですよ。

 

松井:商学は社会科学の一つなんで、分かりやすい鮮やかな「新発見」ってあんまりないんですよ。既存のものの再解釈が多いんです。でもだからこそ、過去の資産が活用できる例が多くて、例えば100年前に、ソースタイン・ヴェブレンって人が『有閑階級の理論』ていう本を書いてるんですね。「ゆうかん」って「閑(ひま)が有る」で「有閑」。すなわち金持ちで時間がある人たちについての研究ですね。その中にとても有名な議論があるんですよ。

 

「Conspicuous Consumption」、日本語で「見せびらかしの消費」と呼ばれるものです。100年前のアメリカのお金持ちは、自分が社会的に成功したことをアピールするために、妻を着飾らせたりとか、立派な家に住んだりとか、執事を雇ったりしてたらしいんですね。代行消費って言ってて、主人の栄光を示すために、周りの人たちが豪華な消費を行うって話なんですよ。

 

今井:ペットと一緒ですね。

 

松井:そうなんですよ。正にそういう展開ができるんです。それって、100年前のアメリカの話じゃない、関係ないじゃない、ていう事ではなくて、じゃあこの見せびらかしの消費とか代行消費っていう概念を使って今の世の中を見たらどうなるんだろうかっていうと、けっこうあるじゃないかと。そういう議論を学生の間でするわけですね。そうすると、見せびらかしって金持ち軸だけじゃないよねって学生が出てきて、おしゃれアピールってのもあるよねとか。すなわち、いろんな次元で他者にアピールするための消費っていうのがあるでしょと。初期のiPhoneなんかがそうだったかもしれないねなんてところまでいったりして……。そういう議論を重ねると、やっぱり勉強したほうがいいよね、同じものが違って見えてくるねと納得してくれるんです(笑) 概念とか理論の持つレンズとしての力を実感できるんですよ。それが、大学の商学部かなって思うんですよね。

 

思考の補助線を引くトレーニング×5億回

 

柿内:なんだか数学でいう補助線のようですね。思考の補助線というか。「面積求めよ」とあって、補助線を引かない限りはどうやって求めていいのかわかんないですけど、補助線引いたら、「あ、三角形二つじゃん」とか、見えてくる、そんな感じですね。

 

松井:それ非常にいいメタファーですね。補助線を引く練習を5億回ぐらいやるっていう感じです。

 

今井:途方も無い量ですね(笑) でも、力付きそう!

 

松井:街歩いてるときもずっとできますからね。ナンパと同じで、練習すればだれでもできるんです。

 

柿内:場数ですよね。

 

松井:そう、場数なんで。

 

今井:ふたりが「ナンパと同じ」でやたら共感している!!

 

松井:あはははは(笑) でもぼくはナンパしたことありません(きっぱり)。

 

柿内:いやでも、ほんと数って大事なんだと思います。僕、中学受験したんですけど、塾で、補助線を引く場所を瞬時に判断するトレーニングをすごいやらされたんです。秒数を測られて、はい次、はい次って、どんどん補助線だけ引かされるんですよ。そうすると、パターンがわかってくるんですよね。ひとつの問題を熟考するのも当然重要なんですけど、数をやるのってホント、トレーニングとして重要なんだなというのをそれで教わりました。それがないと熟考もできなかったりするんですよ。

 

 

松井ゼミでは、「〜的な」はNGワード的な扱い

 

松井:おっしゃる通りで、パターン化はすごく大事な、次のプロセスなんです。要するに場合分けができるようになるわけですよね。この場合にはこうするべきであると。つい先日のゼミでも学生に議論させて、「これは場合によって違う」っていう結論になったんですけど、僕はそれの結論を却下したんですよ。それは情報として何も意味がないから。議論する前と全然何も変わりないがないじゃないっていう風に。で、どういう場合にどうなのかっていうのを、もうゼミ終わるからとりあえずの結論でいいから出せよっていう風に言うんですね。それはまさに、数多ある出来事をパターン化するっていう知的な力技が必要なところ。それを日々練習してもらってるつもりです。

 

今井:たしかに「場合によって違う」じゃ、怒られますね。大学の先生に。

 

松井:魔法の言葉みたいなものですもんね。「そういう時代だから」なんてのもそれで。「誰だその時代ってヤツは?連れて来い」って言うんですけど。

 

一同:(笑)

 

松井:それはやっぱり言葉に対して敏感じゃないからだと思うんですよ。

 

今井:「いったん~する」の「いったん」もそうですよね。

 

松井:そうそう。あとNGワードにしてるのは「~的な」。概念で物事を見るっていうのは、言葉で物事を見るってことなんで、言葉に対して意識的でなければならない。それはやっぱり、大学生らしい、知的な態度だと思うんですよね。

 

柿内:「~的な」ってのは、学生はどんな感じで使っちゃうんですか。

 

松井:「見せびらかしの消費的な」

 

今井:知識と態度が合ってない(笑)

 

松井:おいお前、それは見せびらかしの消費なのかどうかはっきりさせろって。

 

柿内:たしかに、すごい思い浮かびますね。僕もやってしまいそうですし。

 

松井:なんかこう、ビジネスのミーティングだと、まあちょっとやわらげる言い方でね、そう言ったほうがいいっていうのもあると思うんですけど、それは意識的に使ってるからいいと思うんですけどね。

 

今井:自分でわかって、意識的にルールを外れるのはOKなんですね。

 

松井:そうなんです。「場合による的な」とか言ったら、もう終わりです(笑) 言葉って世界を分節するので、「セクハラ」なんていい例だと思うんですよ。『知的複眼思考法』っていう本にある話なんですけど、セクハラって言葉が普及すると、「君そろそろ結婚しなくていいの」って言うことと、エッチなグラビアを人前で読むってことが、同じダメなこととしてカテゴライズされることになってしまったわけですよね。それまでは多分ちょっと別の話だったと思うんですよ。それは、セクハラという概念が普及することで、世の中のカテゴリーが変わったっていう事だと思うので、それは言い方を変えると、言葉を知ると、世の中が違って見えるということ。そのためにはやっぱり、たくさんの言葉を使えるようになってないとダメかなって思うんですよね。

 

柿内:全部「~的」とか、そういうので集約しちゃうとレンズが曇っちゃうってことなんですね。

 

松井:そうなんです。だから僕も「〜的な」とか使えないんですよ。言いたくなっても。逆に、言ったら、「言った、いま言った!」って、鬼の首を取ったように言われてしまうので。

 

一同:(笑)

 

柿内:いやあ面白いですねすごく。「的」を封印するだけでも、「使えないんだったらどうすりゃいいんだろう」って考えますもんね。何か自分に制限を加えるっていうのは、いいトレーニングになりそうです。

 

松井:そうなんですよ。それをやるためにはやっぱりたくさんしゃべるのとたくさん書くのが大切なんです。商学部に限った話ではないと思います。大学生として当然の訓練ですよね。言葉に敏感になる、と。学生にはぜひ、この知的な訓練を楽しんで欲しいですね。

 

Creative(創造的)であるためには、Critical(批判的)であり、Constructive(建設的)でないといけない

 

松井:あと、卒論とかもすごいいじめますよ。マーケティングと、卒論は「説得する」という点で同じなので。論文っていうのは、読み手が納得してナンボだぞと。書いて、製本して終わりじゃなくて、読み手が「なるほど」と言わないとダメだぞと。あとできたら、「そうなんだ!」って驚きもあってほしい。マーケティングも同じで「なるほど」と「そうなんだ!」がないといけない。マーケティングのプロセスっていうのは、人とのコミュニケーションのベーシックなプロセス、その一形態ですね。

 

柿内:たしかにホントはそこまで求めないとなんですよね。今の大学の卒論は何か、書き上げること自体が目的的な面がありますものね。「的な」って言っちゃった。

 

松井:減点です(笑) 毎年卒業論文発表会を公開でやるんですけど、今回は1年生も呼ぶことにしたんですよ。発表する側からすると、ある意味一番の難敵ですよね。知識量が圧倒的に不足していますから。全く知らない人が初めて聞いても、ちゃんとわかって、納得してもらえるような内容じゃないと伝わらない。

 

柿内:「~的な」「~的な」と専門用語を並べても全然伝わらないわけですね。

 

松井:そうなんです。だから論文のエッセンスを、初めて聞く人にも説得的に伝えるっていうのは、これはまさにマーケティングと同じなんです。

 

今井:マーケティングは、色んな、結構一般的なことと共通点が沢山あるんですね。逆に、他の学問とここが違う!ってところはありますか?

 

松井:ひとつあるのは、対案を出さなきゃダメなところですね。じゃあどうすんの、ということを言わないといけない。いい案を出すにはひとつコツがあって、きちんとした批判ができないとダメなんです。何だっけな……。昔、BCCC原則って考えたんですよ。イギリスのBBCじゃなくてBCCC。Be Critical、Constructive、and Creative、かな。Critical(批判的)であることで、Constructive(建設的)になれる。 Constructiveになることで、Creative(創造的)になれるんだよと。そんな、何かくだらないことを考えてたんですけど。

 

柿内:じゃあ根本にCriticalがきて、まあある意味構造化的なのがきて、はじめてCreativeで…

 

松井:そうなんです。建設的であるってことは、その前に批判的でなければならないっていうことだし、批判、建設的っていうプロセスを経ることで、何かユニークなことが生まれるっていう、そういう順番かなって。自分で言ってて忘れてた……また使えますねこれ。

 

今井:使えますよ! ちょっと感動しました。

 

松井:ありがとうございます。「批判」は日本だと「ダメ出し」といった意味にとられやすいので、Criticalと言うようにしています。お互いに批判しやすい空気を作るのは大事ですね。ゼミではいくらでも批判していいけど、それは人格批判じゃないし、批判されたとしてもそれはお前の行動とか言動についてであって、お前そのものじゃないからと。お前が嫌いなときははっきり言うから大丈夫!って言うんですよ。

 

柿内:それは学生の時に身につけておくとすごく役立つ「癖」ですよね。僕なんかつい、自分が批判されてると思ってしまう質なので。

 

 

「意図を読み取るメガネ」を持て!

 

今井:それでは最後の質問に移らせて頂きます。僕らは「武器としての教養」というのをテーマに新書を作ったり、ジセダイをやったりしてるんですけれども、先生が配ってらっしゃる、商学が授ける「武器」は何なんでしょうか?

 

松井:「世の中の意図を読み取るメガネ」でしょうか? タルコット・パーソンズっていう社会学者がいて、「概念はサーチライトである」っていう有名な表現があるんですよ。言葉をきちんと学んで、概念を知って、社会を洞察できるようになってもらえればいいなと思います。街の看板にも、バラエティ番組の笑い声にも、全てには意図があるので。

 

今井:そのメガネ、もらいに行きたい! 今日はありがとうございました!

 

松井:ありがとうございました。

 

ジセダイ教官の紹介

松井剛

松井剛

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一橋大学商学部教授。2000年、一橋大学商学研究科博士後期課程修了、博士(商学)。同年、一橋大学商学研究科専任講師、2004年同助教授、2013年より現職。2007年8月から2009年3月までプリンストン大学社会学部客員フェロー(2007年から2008年にかけて安倍フェロー)。2013年3月25日碩学舎より『ことばとマーケティング癒しブームの消費社会史』を発売予定。


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ネクストアクション!

電車の中吊り広告を見て、広告主の意図を推測してみる

「誰に」、「何を」「どうして」欲しい広告なのか。作った人の意図を想像してみましょう。

松井先生の著書『ことばとマーケティング―「癒し」ブームの消費社会史』を読んでみる

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