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ジセダイジェネレーションズ U-25

将棋界のジセダイを担う棋士・中村太地の素顔に、憲法学者・木村草太が迫る! 【後編】

2012年11月08日 更新
将棋界のジセダイを担う棋士・中村太地の素顔に、憲法学者・木村草太が迫る! 【後編】

プロ将棋棋士・中村太地さんへの特別インタビュー。後編も憲法学者・木村草太先生と共にさらなる将棋の魅力や対局観戦などについて熱く語り合います!

取材 木村草太・柿内芳文・岡村邦寛  構成 岡村邦寛  撮影 山崎伸康

 

前編はこちら「将棋界のジセダイを担う棋士・中村太地の素顔に、憲法学者・木村草太が迫る! 【前編】

勝負を終えたらすぐに“反省会”


木村 将棋は対局が終わった後に“感想戦”をするじゃないですか。

 

中村 そうですね。勝負を終えた後に今まで対戦していた者同士が一緒に反省会をやる、という冷静に考えると非常に特殊なことを将棋ではやります。

 

木村 勝ったら気分よくできるかもしれないですけど、負けたら悔しさいっぱいの状態で臨まないといけないじゃないですか。

 

中村 たしかにちょっとは悔しい気持ちで行うときもあるんですけど(笑)。ただ、お互いに対局中どういう風に考えていたかをざっくばらんに話し合う事で新しい発見があって勉強になるので、感想戦をみっちり2・3時間することもありますね。

 

木村 感想戦をしているところを見ていると、なんというか勝敗を忘れて純粋に最善手を探求している印象を受けるのですが。

 

中村 おっしゃる通りです。この間羽生さんとタイトル戦を行ったんですけど、羽生さんも対局が終わったらすごく楽しそうに感想戦をされてたんです。それで「ああ、棋士って本当に将棋が好きなんだな」と改めて思ったりしました。

 

中村太地さん

 

感想戦はとても参考になりますね。出版業界は刊行した本について「何故売れたのか?」「どうして売れなかったのか?」とか反省・分析することはまずないですから……。今度一回試しにやってみるのもいいかもしれません。

 

木村 それは素晴らしいですね!

 

それでは木村先生の新書デビュー作となる星海社新書『キヨミズ准教授の法学入門』(11月22日発売)で是非やりましょう!


木村 え!?

 

 

盤上には性格が表れる


木村 昔、羽生先生が将棋をする意義についてお話していたんですけど、その中で「将棋にはものすごく自分の性格が表れる」とおっしゃっていたんです。それは本当にその通りだなと思っていまして。私の場合は趣味で将棋を指していて、小学生の頃に地元の将棋道場で二段くらいまで勉強したんですけど、勝負に自分の性格が表れるのを実感しました。

 

中村 二段! すごい!!

 

木村 光栄です(笑)。で、自分の性格が全面に出た上で勝ち負けが決まるというのは相当シビアなことだと思うんです。負ければ自分が否定されたようなものなのに、そのあと感想戦とかもやらないといけない。そういう言い訳できないシビアさが成長する上ですごく重要ではないかと考えているのですが、中村先生は自分が将棋を指していて成長を実感する事がありますか?

 

中村 成長という意味ではメンタルでの成長が一番大きいと思います。特に集中力がついたと実感しています。将棋大会とかに行くとよく見かける風景なのですが、今までワイワイガヤガヤ騒いでいた子供が、対局が始まると急に静かになってすごい集中力を発揮するんです。そういうのを見ていると集中力を養う手段として将棋は本当に有効だと思います。他には将棋は相手の思考を読んだり考えたりするゲームなので、相手を思いやる気持ちも身に付くのではないかと思っています。あとは他の世代とのコミュニケーションですね。子供の頃って普通に生活をしていたら両親以外の年上の人と話す機会ってあんまりないじゃないですか。でも町の将棋道場に行くと、本当に幅広い年代の方々がいらっしゃって、そういう人達と話したり学んだりできるコミュニケーションツールになりますね。

 

将棋を通したら大人と子供も対等ですからね。そういう意味だとお互い丸裸になるわけですよね。大人だから偉くて強いわけではない。

 

中村 結構子供が勝つ場合もありますからね。感想戦も大人が悔しそうにしている姿をよく見ますよ。

 

木村 大人の性格も盤にでますよね。

 

中村 そうなんですよ。大人も一発狙いの手を指してそれで負けるとかありますね(笑)。

 

木村 わたしは道場では「頓死(とんし)の木村」と呼ばれてまして……。

 

木村草太

頓死? どういうことですか。

 

木村 「頓死」というのは、終盤で自玉の詰みを読み落として、突然負けてしまうことなんです。優勢だったはずの将棋が、一手のミスで突然、負けになってしまうので、かなりしんどい負け方ですね。何回か、相手を頓死に追い込んでしまって、いつの間にか「木村君は頓死狙いだから気をつけろ」みたいな噂が立ってしまったんです。

 

一同 笑

 

最後にひっくり返して打ち負かすのが快感……そういう性格なんですか?

 

木村 いや、単に、勝つとしたら、そういう勝ち方しかない、という感じで……。終盤の訓練になる詰将棋は好きだったんですが、序盤・中盤の勉強不足で、当時の棋力は「序・中盤3級、終盤三段」みたいな感じだったんです。なので、かなりリードされた局面から、相手のミスに乗じて即詰み勝ちみたいなことが結構あったんですね(笑)。最後まであきらめない性格、といえば聞こえがいいですが、好きなことしか勉強しないんでしょうね。そう言えば、中村先生は「棋風は?」と聞かれて「無理攻めです」と答えたことがあるそうですが……やっぱりそういう性格なんでしょうか?(笑)

 

中村太地さん、木村草太さん

中村 そうですね(笑)。僕は将棋だと攻めっ気たっぷりなんです。普段の生活ではそんなにガツガツしているとは思っていませんが……。僕のことをよく知っている人に言わせると「外見は落ち着いているように見えるけど、中身は気が強い」らしいのですが。

 

木村 中村先生の著作『速攻! ゴキゲン中飛車破り』をとても楽しく読ませていただきましたが、非常に丁寧な解説をされていますよね。著書には性格が出るものですが、読んでみて無理攻めが好きという印象はあまりしないのですが……。

 

中村 車のハンドルを握ると性格が変わる人みたいに、将棋を指すと地が出ちゃうんですかね(笑)。

 

 

初心者でも観戦して楽しめる


木村 わたしの妻は2・3年前に将棋のルールを覚えて、詰め将棋も三手詰めが解けないというぐらいの棋力なんですけど、それでもタイトル戦を観ていて、非常に面白いと言っているんです。今までは棋譜が読めないと対局の流れがわからない、つまり棋力が有段者レベルぐらいないと対局を見ていて楽しめない部分があったと思うんです。だけど現在はそれほど棋力がなくてもネットで始めから順を追って流れを理解できるようになってきています。それは観戦者を増やしたり将棋に興味を持ってもらえる良い機会ではないかと考えていますが、中村先生は将棋を指すときに観戦者にどういうところを観てほしいと思っていますか?

 

中村 一番は良い将棋をして良い棋譜を残すところですね。二番目は「自分らしい将棋」です。将棋を観てくださるファンの方には「この棋士はこういう人だから頑張ってほしい」と応援してくれる人もいると思うんです。なので自分らしい将棋を指して、観ている人に楽しんでもらいたいと考えるようになってきました。最近では将棋をテレビ観戦する女性ファンの方が増えてきていますし、木村先生のおっしゃるとおりネットという観戦方法から楽しみ方の間口が広がりましたね。

 

中村太地さん

木村 棋力がなくてもタイトル戦を観て「すごい」ということがわかるようになっていくんですよ。

 

中村 そういう人々がどんどん増えていけばとても嬉しいのですが、現段階だとやはり将棋を観ようと思うには何かとっかかりが必要だと思うんです。なのでファンの方がどういうことを観て楽しんでいるのか、というのを知るのは観てもらうきっかけづくりの勉強になりますね。以前対局がニコニコ動画で放映されて、角を盤面のとある場所に打ったら「ウオー!」っていうリアクションがあったりしておもしろかったです。あと女性の方だと対局中の棋士の服、スーツや和服の色とか午後に出てくるおやつが気になるらしいんです。棋士本人にはそんな着眼点はないので「そうなのか」と逆に教えられたような気持ちになりました。

 

木村 対局中の棋士の方は本当にかっこいいですよね。スーツや和服をビシッと着て真剣に考えて勝負に臨んでいる姿とか。もっともっと女性ファンが増えてもいいと思うんですけどね(笑)。

 

 

好きなことを続けて欲しい

 

最後に同世代の方にメッセージをいただけますか。

 

中村 「好きなことを続けて欲しい」ですね。僕は幸いにして4歳のころから一番好きなことをやり続けて職業にすることができていて、本当に幸せだと思っています。今、自分のやりたいことをやっている人も、まだ自分が将来やりたいことが見つかっていない方も、好きなものを見つけて続けて欲しいです。今はやりたいことをやるのに自分自身でブレーキをかけてしまう人が多いと思うんです。将来のために、楽しむことよりも先にすることがあるだろう、という感じで。たださっきの三段リーグの話じゃないですけど、もし好きなことを続けて成功できなくても、その経験が他の世界でも生きるということが必ずあると思うので、好きなことを一生懸命楽しんで続けていってもらいたいです。

 

木村 厳しい世界で戦う中村先生から、「好きなことを続けて欲しい」という言葉を聞くことができて、心が洗われる思いです。私も、学問の世界に入った時に胸に抱いた目標を諦めずに追求し続けよう、と決意を新たにしました。将棋の世界は、本当に魅力的です。ネット中継にアクセスして、ぜひ、一緒に、中村先生を応援しましょう!

 

一同 ありがとうございました!

 

中村太地さん、木村草太さん

 

中村棋士・木村先生がお話していたように、今は様々な方法で将棋を楽しむことができます。あなたのケータイ、スマートフォンで対局をしたり、注目対局のリアルタイム観戦などができる「日本将棋連盟モバイル」のサイトを是非一度ご覧ください。


※中村太地×木村草太の対談はNHK EテレのWebサイト「ジレンマ+」でも掲載されております。
是非合わせてご覧くださいませ。

■定跡を超えてゴキゲンに勝つ! 中村太地×木村草太(棋界×憲法学界)【前編】頂点(てっぺん)は、どこか

http://dilemmaplus.nhk-book.co.jp/talk/1507


星海社新書「キヨミズ准教授の法学入門」木村草太 Illustration/石黒正数

 

ジセダイジェネレーションズU-25の紹介

中村太地

中村太地

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プロ将棋棋士。1988年生。
幼少の頃から将棋を始め、2006年プロ入り。07年に早稲田大学政治経済学部に進学。11年度は勝率第1位(8割5分 40勝7敗 歴代2位)を記録、12年度は羽生善治棋聖に対し自身初のタイトル挑戦を果たすなど、将棋界の次世代の期待を担う棋士。

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