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HOME > ジセダイ編集部 > エディターズダイアリー > トンデモな「江戸しぐさ」を検証。

エディターズダイアリー

トンデモな「江戸しぐさ」を検証。

築地教介
2014年08月25日 更新

*ジセダイにて連載「続・江戸しぐさの正体」、更新中です。是非、このブログと合わせてご覧ください。

最新回はこちら!

第12回:芝三光の特別講義② 昭和10年代の思い出


こんにちは、広報の築地です。

突然ですが、みなさん「江戸しぐさ」ってご存知でしょうか?
お恥ずかしながら、僕自身、このタイトルを弊社から出すまでは、その名称と教育関連の何か、という程度の知識しか持ち合わせておりませんでした。

そのタイトルとは、星海社新書『江戸しぐさの正体 教育をむしばむ偽りの伝統』。
著者は、歴史研究家、そして偽史・偽書の専門家である原田実氏。

なんというこの物々しいタイトル。
「偽り」ということは、嘘をついている? しかも教育という現場で?
そうなのです。まさにこの危機的状況に警鐘を鳴らす一冊なのです。


「江戸しぐさ」とは?

さて、「江戸しぐさ」とは? に関しては、現在「江戸しぐさ」普及の中心的役割を担っている「NPO法人江戸しぐさ」という団体のHPにて次のように定義されています。

「江戸しぐさ」は、江戸商人のリーダーたちが築き上げた、上に立つ者の行動哲学です。よき商人として、いかに生きるべきかという商人道で、人間関係を円滑にするための知恵でもありました。江戸時代は、260年以上もの間、戦争のない平和な時代が続きました。その平和な安心な社会を支えたのが「江戸しぐさ」という人づきあい、共生の知恵です。

一見したところ、もっともらしい定義ですよね。
「傘かしげ」「こぶし腰浮かせ」などの個別のしぐさをご存知の方もいらっしゃると思います。


ところが、です。
この「江戸しぐさ」、原田氏による徹底検証が暴いたその実態は、“偽史であり、オカルトであり、現実逃避の産物として生み出されたものである。”というのです。
なんとも不穏でありながら、それでいて実体を知りたいという欲に駆られる題材だと思いませんか?

その実態とはどのようなものなのか。


「私は最初、近世の江戸の住人たちが日常的に行っていた動作(しぐさ)の意味だと思った。しかし、少し調べただけでこの認識は誤っていたことがわかった。「江戸しぐさ」は現代人の造語だったのである。」ー本書P18より
「「江戸しぐさ」は一九八〇年代に提唱されはじめたものであり、芝三光をはじめとする現代人の創作である。 ゆえに、実際の江戸時代の風俗とかけ離れていたり、江戸時代においては使う意味がない、或いは使うと逆に不利益を被りそうなもののオンパレードである。」ー本書P40より


そう、「江戸しぐさ」は虚偽なのです。
野菜やキノコをじっくりコトコト煮込んだスープ」や「バナナ」「かき氷」「チョコレート」などが「江戸時代にもあった!」と主張されているなど、創作するにしても時代考証をやる気がなさ過ぎる。(詳しくは本書第二章にて。試し読みも公開中


そして、原田氏は、以下のような動機で本書を書かれました。


・教育現場への浸透を防ぎたい
・「江戸しぐさ」の誕生と普及の過程を明らかにすること
・オカルトとしての「江戸しぐさ」を分析し、トンデモが社会に受け容れられる理由に迫ること


この動機を含め、本書「はじめに」(P3〜8)の部分に原田氏の想いが込められております。


本書のポイント

さて、本書は全6章で構成されております。
各章のポイントを本書からの引用にて紹介します。

※個別のしぐさの検証は第二章で行っています。また、本記事末尾のリンクから第二章半ばまで試し読みが可能です。「傘かしげ」「こぶし腰浮かせ」「肩引き」「時泥棒」など、様々な江戸しぐさが、軒並み否定されていく様は圧巻です。


第一章 「江戸しぐさ」を概観する
・「江戸しぐさ」は「江戸商人の行動哲学」と定義されている 
・企業や教育現場に広く取り入れられている 
・しかし、その「発明」は一九八〇年代を遡らないと考えられる
つまり、「江戸しぐさ」は江戸時代に由来するものではなく、現代人によって創作されたものである

第ニ章 検証「江戸しぐさ」 パラレルワールドの中の「江戸」
・ 個々の「江戸しぐさ」は、いずれも江戸の実態にそぐわない 
・ むしろその描写は、昭和以降の風俗と合致する 
・実際に江戸時代の庶民の哲学となったのは、身分制の論理を含んだ「心学」であった 
身分制に関する眼差しの欠けた 「江戸しぐさ」は、江戸時代の庶民の哲学としては認めがたい

第三章 「江戸しぐさ」の展開 越川禮子と桐山勝
・「江戸しぐさ」普及の功労者・越川禮子氏は、もともと 高齢者問題・アメリカ公民権運動に興味を持っていた
・ 芝との出会いで「江戸しぐさ」普及に乗り出し、 芝の最期を看取ったことで「唯一の伝承者」の地位を得た 
・ 一九九二年からは、桐山勝氏が加わり、 NPO法人化などに大きな役割を果たしたと思しい
越川氏に桐山氏が協力する形で、「江戸しぐさ」は社会へ浸透していった

第四章 「江戸しぐさ」の誕生 創始者・芝三光と反骨の生涯
・ 芝三光の経歴は、「江戸の良さをみなおす会」の公開している情報のほうが正しく、華族の庶子といった情報はヨタ話である
・「江戸しぐさ」は芝の反骨の産物であり、 その中の「江戸」は反現実のユートピアであった 
・ 江戸が舞台となったのは、 七〇年代の前近代見直しの風潮を受けてのものであり、 芝自身は西洋的な教養の持ち主であった 
しかし、反骨の産物であった「江戸し ぐさ」は、芝の死後一人歩きし、芝の最も嫌った「権力に都合の良いもの」として教育現場に浸透を深めている

第五章 オカルトとしての「江戸しぐさ」 偽史が教育をむしばむ
・証拠のない「江戸しぐさ」は、開き直った オカルトとしてしたたかであった
・専門家が社会的責任を果たさなかったことで、 結果的に、「江戸しぐさ」は黙認状態にあり、浸透を防げなかった
・「江戸しぐさ」は芝の反骨の産物であり、 その中の「江戸」「江戸しぐさ」は黙認状態にあり、 浸透を防げなかった
・コンサルタント業界はオカルトと相性がよく、 船井幸雄も「江戸しぐさ」を認めていた 
オカルトである「江戸しぐさ」は、このようにしてブレーキをかけられることなく、社会に浸透していくことになった

第六章 「江戸しぐさ」教育を弾劾する 歴史教育、そして歴史学の敗北
・教育現場には、「江戸しぐさ」の他にも奇妙な話が蔓延している
・教科書検定制度や日教組も、これらのトンデモを防ぐには無力である
・これは歴史教育の敗北であり、 そのような義務教育を受けた世代が成長すれば、歴史学ですら無傷ではすまない 
「江戸しぐさ」の基本は現実逃避であり、現状否定のために偽の歴史を作り上げ、それが 抵抗できない子供たちに教えられている

私の知人に中学の教師がいて、「江戸しぐさ」、もちろん知っていました。
そしてこの内容を話したところ、ひどく驚いていました。
現場の教師の方の多くは、学校側から指示のあった教育教材(しかも道徳)を疑いもなく使う、というのが多くの現実のようです。「江戸っ子狩り」薩長が江戸っ子を虐殺したとされる)のような史実と反する内容があるにも関わらず、です。
歴史を教える立場でもある教師が、かたや「江戸しぐさ」
という偽史も同時に教えてしまうという矛盾……。

これは本当に危機的状況であると思いますね。
ただその反面、「江戸しぐさ」が孕むオカルト要素には、単純に「怖いものみたさ」のような、ある種怪しい魅力も感じてしまうというのも正直な感想です。

ちなみに、現在ではその数8000種とも言われている「江戸しぐさ」。本書の原田氏の言葉を借りると「これから水増しする気満々」ということで、まだ増えていく様相です。本書に記載のある「江戸しぐさ」の一例がこちら。

喫煙マナーに関する「江戸しぐさ」、「喫煙しぐさ」。
詳細は本書P71〜75に記載されておりますが、「江戸しぐさ」では、「煙草は、相手がすわなければ自分も吸わなかった」「店側が、根付けごと預かっていた」とされています。

これは、「男女共に喫煙者がおおく、店に入れば、まずは煙草盆が出る。煙草盆を出さないと失礼に当たる」という、江戸時代の人々の喫煙習慣や文化的背景を知らない人物が創作した謎の習慣です。
当時の喫煙習慣を表している浮世絵も掲載されていますので、合わせてご覧ください(本書P72〜73)。


「「江戸しぐさ」の作者は、どうも江戸期の風俗をまともに調べて創作することをしていないのではないか」、と本書にて原田氏が示しています。登場する「江戸しぐさ」の数々は、まさにこれらの連続で、読んでいて「そりゃないだろ」とツッコミを入れたくなることばかりなんです。
みなさんも是非ともお手にとって頂き、ツッコミを入れて頂きたいですね。

最後に、本書制作過程で撮影した写真を一枚。
編集担当・平林と芝三光が眠る回向院(えこういん)を訪問しました。

        芝三光のお墓に手を合わせる編集担当・平林

 

星海社新書『江戸しぐさの正体 教育をむしばむ偽りの伝統』、本日8月25日から発売です。

それではみなさま、是非ご一読を!

 


アマゾンでの購入リンクはこちら
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4061385550/seikaisha-22

第ニ章までの試し読みはこちら
http://ji-sedai.jp/book/publication/edo.html


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築地教介

印刷営業から戦う出版社へ ライブ狂いのアクティブ広報

築地教介

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星海社広報担当。
1977年11月17日生まれ、O型。東京都八王子市出身。立教大学社会学部産業関係学科を卒業後、凸版印刷株式会社に入社。凸版印刷へ入社以来13年間、出版社を得意先とする営業を経験。数多くの編集者に刺激を受ける。出版というフィールドで躍動する夢を実現させるため、ミニマムな組織で大胆に戦う星海社に、2014年4月、合流。音と映像をこよなく愛し、インディーズ、メジャーを問わず、全国のライブハウスを今も駆け巡る。好きな言葉は「疾風勁草」。

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