102年前の1923年9月1日に発生した関東大震災では、多くの方が犠牲になり、また震災の混乱の中で多くの朝鮮人の方々が殺害されました。
偽史・偽書研究の第一人者である歴史研究家の原田実さんの新刊、星海社新書『関東大震災「朝鮮人虐殺」否定論を否定する 偽史研究からの新知見』が9月18日(木)に発売されます。
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著者/原田実
定価:1250円(税別)
発売日:2025年9月18日より ※お住まいの地域によって異なります
レーベル:星海社新書
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近年、WEB上などの言説で、この朝鮮人虐殺事件そのものを否定するような主張が目に入るようになってきました。本書は、そのような言説に抗し、偽史・偽書研究の観点から関東大震災の朝鮮人虐殺事件を見つめ直す一冊です。
本書が注目するのは『契丹古伝』という戦前の書籍です。この本は偽書であり、古代東アジアに朝鮮人・日本人・満州人・モンゴル人の共通祖先となる民族「東大神族(東大古族)」が存在し、その系譜を契丹の祖と結びつける内容でした。
この『契丹古伝』について戦前期に多くを語り、また『契丹古伝』そのものを制作したとみられる浜名寛祐(宗教家・軍人)が、じつは関東大震災での朝鮮人虐殺事件を契機として、このような偽の歴史を構想したとみられることに原田実さんは着目します。
『契丹古伝』は関東大震災と朝鮮人虐殺事件の惨禍の中で、過去に遡って日本人と朝鮮人、さらに満洲人やモンゴル人との融和を求めるものだった。
しかし、その『契丹古伝』もまた、当時の大日本帝国が抱えていた矛盾から逃れることはできず、アジアの融和を目指す高邁な理想と、生々しい領土への欲望をともに内包するものとなった。
(「まえがき」より『関東大震災「朝鮮人虐殺」否定論を否定する 偽史研究からの新知見』)
このような経緯で構想された『契丹古伝』の存在自体が、朝鮮人虐殺事件が実際に起きたということの証拠のひとつとして見ることができるのは言うまでもありません。『契丹古伝』とその周辺を読み解くことで、戦前日本における関東大震災朝鮮人虐殺事件の余波、そして当時の時代を紐解いていく新書です。
*目次
はじめに
第1章 関東大震災が生んだ偽史『契丹古伝』
第2章 関東大震災朝鮮人虐殺の記録・証言を読む
第3章 大正時代の日本には、何故数多くの朝鮮人が暮らしていたのか
第4章 偽史運動の諸相―― 『富士文庫』と『契丹古伝』の興亡
第5章 「探偵」と「敵」―― 震災の大衆心理
第6章 偽史と戦後史―― 「古代史ブーム」と「檀君顕彰」
おわりに
本書は『契丹古伝』の詳細な検討に加え(第1章・第4章)、関東大震災朝鮮人虐殺の記録・証言を文学者や歌人、詩人の言葉から紹介し(第2章)、大正時代までの日本と朝鮮半島の関係を検討します(第3章)。また震災における大衆心理や、戦後における偽史の消息を辿り、流言飛語や偽史・偽書との向き合い方についても考え直す一冊です。
近年みられるような朝鮮人虐殺事件を否定する主張が、おそるべき新たな「偽史」とならないようにという願いを込めて本書を刊行いたします。
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星海社・編集担当
前田和宏
エディター
星海社エディター。1989年生まれ。偏愛したものは、何年かけても追いかける。小学校時代にチェロの響きに心奪われて、以来、チェロ演奏暦25年。一般社団法人全日本ピアノ指導者協会勤務時代にはピアニスト養成事業に携わり、アカデミックとビジネスが交差するクラシック音楽界のリアルを駆け抜けた。一方、高校時代に「社会学」に稲妻的衝撃を受けて、社会学者を志す。必死の勉強の末、東京大学に進学。最終学歴は東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。偏愛から生まれるエネルギーで人生のカーブを複雑に切ってきたが、偏愛力をストレートに出し尽くすための場所を求めて、星海社に合流。
偏愛する作曲家・音楽家はアーノルト・シェーンベルク、ダニイル・シャフラン。偏愛する社会学者・思想家はエミール・デュルケム、ミシェル・セール。偏愛する作家はオノレ・ド・バルザック、ニコルソン・ベイカー。偏愛範囲、全方向に拡大中。
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