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アジアIT闇鍋紀行

第9回:中国ライター、チャイナクオリティに直面する

2014年12月16日 更新
第9回:中国ライター、チャイナクオリティに直面する

 大型マンション建設のため、住み慣れたスラム街を追い出され、「やや高級マンション」に引っ越した山谷氏。
 しかし、チャイナクオリティは「やや高級マンション」をも容赦なくむしばむ。
 建物はものすごい速度で劣化し、椅子の足は折れ、電化製品は突然壊れる……。中国ライターはチャイナクオリティといかに付き合っているのか、日常の一端をご覧いただきたい。

スラムを去り、「やや高級マンション」で暮らす

 私は雲南省昆明の作業部屋でひとり不思議な格好で倒れていた。
『ドリフ大爆笑』で雷様に扮した高木ブーが倒れる、アレにそっくりである。『ドリフ』で定番のおばちゃんの笑い声はなく、私を囲むのは、記事でレビューした謎の中国製品。
 因みに、さっきまで座っていた椅子は足が折れている。
 ──またも、チャイナクオリティである。

 2007年、私は第一回の記事で紹介した昆明のスラム「城中村」から「区画整理で大型マンションを建てるから」と追い出され、同じく昆明のやや郊外に位置する「やや高級マンション」に引っ越した。
 ライターを始めて5年目で、そこそこ連載を持つようになった頃のことだ。
 新居は内装済みの中古マンションで、広さは100平方メートルちょっと、居間は日本のマンションではなかなか見ることのない広さだが、これが現代中国のスタンダードだ。
 鯉が泳ぐルーフバルコニーも付いているが、家賃は当時のレートで約5万円と日本の都市部の物件と比べてずっと安い。

 このマンションでは、別の部屋の中がよく見える。居間の様子や、家の中の家電まで見えるのである。
 ということは、逆もまた同じで、自分の家のトイレや浴室までもが向かいの家から筒抜けなわけである。
 あるとき気づかないで、向かいの家の女性にだらしない裸体を晒したことがある。その女性は一目散に退散した。
 急いでダイエット……ではなく、ガラスを曇りガラスにするシールを買って対処したが、前の住民はどうしていたのだろう。

 また、やや高級マンションであるにも関わらず、庭園では毎日ここに住む老人が徘徊し、ゴミ箱から換金できるゴミを回収していく姿が見られる。
 僅か30、40年前の貧しい時代に体に染みついた習慣が抜けないのだろう。
 老人たちはとても元気で、朝にはよほど寒くない限りは外の共用プールで泳ぎ、金曜3時に中庭で合唱する。合唱が聞こえると、平日も終わりなんだなあと感じる。

 

新居にはプールまである。が、綺麗に保たれてはいない

 

 住む地域が、「学生も多く住むスラム」と「やや高級マンション」では、老人を除いて、住民も大きく異なる。
 スラムの子供らは、道路工事の砂山を滑り台にし、駄菓子屋で売られたようなおもちゃで遊んでいてバイタリティーにあふれている。
 一方、マンションの子供たちは、遊具でも遊ぶが、ニンテンドーDS(2007年当時なのでニンテンドー3DSではない)で海賊版ゲームも楽しんでいた。スマートフォンの経過とともに、子供らが持っているものはスマートフォンに変わっていった。

 住み始めた最初は静かだったマンションの入口も、時間が経過するごとに、荷台に荷物を山積みにした宅配バイクがよくとまるようになり、住民が小包を引き取りにくるため、賑やかになっていった。
 オンラインショッピングが昆明でも普及してきたのだ。昨年には、マンションに新たに宅配ロッカーが設置された。

 一方で、建築から7年を経過した建物は、パッと見で築30年くらいかなと思うほど早く劣化した。それでも不動産価格は上がり続け、ようやっとこの1、2年ほどで横ばいになった。

 

功夫な運び方の業者もいる

 

引っ越してもついて回る「チャイナクオリティ」

 劣化したのは見た目だけではない。
 ドアホンのボタンが、昔のファミコンの四角ボタンのように押しても戻らなかったり、前の家主がつけていた部屋の中のハンドドライヤーや間接照明がついたりつかなかったりと、問題はいくつもある。
 しかしここは中国、日本的完璧さを求めてはならない。
 椅子の足が折れたり、ドアホンが鳴らなかったりすることも、これもまた私の中国での現場での知識として積み重なる。

 2002年に昆明に住み着いて以降、雷様コントのオチのように椅子が突如壊れて崩れ落ちた経験は3度ある。
 2回が家具屋で購入した椅子で、1回が食堂の椅子だ。
 壊れれば直せばいい。買った家具屋に訴えれば交換してくれる。
 ドアホンが鳴らなければ、管理室に言えば直してくれる。

 壊れた椅子は、近所のIKEAみたいな家具屋で購入したものだ。
 ちなみにその店は、「昆明にIKEAにそっくりな家具屋がある」と日本で報道されたこともある。
(これについて執筆したのでは私ではない。遠路はるばる別件ついでに取材に来た人がいたのか、昆明に住む数十人の日本人の誰かが取材したのか。何にしろ取材ネットワークはあるもんだなあと思う)

 チャイナクオリティはなんでも酷いのかというとそうでもない。
 マンションの広い共有スペースは庭園のようになっているが、今も恐ろしく手入れが行き届いている。
 建物はメンテナンスしないが、庭はメンテナンスするものなのか。
 日本とは重視するところが違うわけで、要はそれに慣れればいいのだ。

 

妙に親切なサポートセンター

 さて、故障について、日本との違いをもう少し紹介しよう。
 私はデジタル製品においては、購入してレビューした後、しっかり使い倒そうとしている。
 しかし使っていると、それが突然短い寿命を迎えることがある。日本製品ならこうしたことは少ないが、中国製品ではさほど珍しくはない。
 こうしたときは、サポートセンターに持っていくと、無料で修理、ときに交換をしてくれる。
 これは中国政府から「三包」なる修理のルールで決められていることなのだが、しばしば指定された期間以上の修理交換対応をもしてくれる。
 会社の評判向上のためだろうが、こうしたメーカーの対応はありがたい。
 壊れもするが、直してもくれる……というわけだ。
 ごくまれにいくら修理しても同じ問題が残る製品もある。壊れては修理をし、修理上がりのモノがまた同じ壊れ方をし、直せばまた壊れ、最後に私が根負けする。有名メーカーでもなければ、リコール問題には発展しない。メーカーの勝利である(?)

 また、サポートセンターも日本とは少し違う。
 ある時、レノボの変わり種パソコンを購入しようと、レノボのサポートセンターに電話相談したことがある。
 リアルショップではどこでも見たことがないそのパソコンは、「中国独自開発のCPUが搭載されているため、Windowsはインストールできず、Linuxしか動作しない上に、薄型でハードディスクも入っていないシンクライアント」という、要はどう見ても使えなささそうな製品なのだ。
 それを購入しようとレノボのサポートセンターに電話したら、「あの製品はお勧めできないから買うな」と電話口で告げられ、「仮にもメーカーの人間がそんなこと言うか!?」と驚かされたことがある。
 日本ならこんなことは口が裂けても言わないだろう。

 

ジャンク屋のチャイナクオリティ

 そんな親切な(?)サポートセンターでも、時には修理を受け入れてくれないこともある。そんな時には、街中に点々とある修理屋に修理を依頼する。
 専門の修理屋からよろずの修理屋まであるが、数年前ではパソコンの修理屋を、最近ではスマートフォンの修理屋をよく見るようになった。
 ただ、パソコンの修理を依頼すると、経験としても、たいていデータを覗き見されてコピーされる。

 

場末の店は生活の場に

 

 パソコン修理屋や中古パソコン屋が集まる地域は、日本のパソコン街よりも中古パソコン屋よりもずっと薄暗くて、サイバーパンクで場末感な雰囲気が漂う。
 各店には、売れそうにない、ネットカフェからのおさがりのデスクトップパソコンや、電子パーツが雑に積まれている。
 ここばかりは、私が中国滞在を開始した2002年から雰囲気がまるで変わらない。

 修理屋が集まる地域をあてもなく歩き回き、ネタ収集で店員に声をかけたところ、「アナタハ日本人デスカ?」と日本語で反応が返ってきた。
 その店員いわく、昔桂林で日本人向け旅行ガイドをやっていたけれど、昆明でパソコンの修理業者に転職を決め、妻と一緒にやりくりしているという。
 随分と思い切ったジョブチェンジだし、それについていく奥様にも尊敬する。それから時々パソコンパーツが必要な時に彼らの店に行って買っていたが、ある時、彼らはまたジョブチェンジをして、別の人の店となった。

 彼らがいなくなった後、その中古屋で中古のノートパソコンを購入した。
 しかしバッテリーが既に利用できないほか、いくつか壊れていて問題があった。購入時に「大丈夫、安心して。問題があったら持ってきて」と言った店員は、文句を言いに行ったときにはいなかった。
 長い間中国にいて会得したのは、「知り合いから買わないと安心できない」という、中国やインドなど多くのアジアの国々で、誰もが口をすっぱくして言っているごく当たり前のことだった。

 一方、日本国内では「中国で何かが爆発する」ニュースが頻繁に報じられているが、中国の人々から「爆発するから気を付けろ」とは言われたことはないし、筆者のまわりの中国のデジタル製品が爆発したこともない。
 そういう意味で、日本国内における「チャイナクオリティ」のイメージと、私が直に中国で経験した「チャイナクオリティ」は少し違う。
 いずれにせよ、生活情報については長くその土地にいる現地の人々の言葉に何より含蓄がある。

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ライターの紹介

山谷剛史

山谷剛史

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東京電機大学卒。SEを経て中国やアジアを専門とするITライターとなる。この道12年。バックパッカー並の予算で、現地の消費者に近い目線での取材を行う。そこから生み出される、独自の切り口の記事に定評がある。著書に『新しい中国人 ネットで団結する若者たち』(ソフトバンク新書)など。「ITMedia」「ASCII」「東洋経済オンライン」「ダイヤモンドオンライン」 「JBPress」などの系Webメデイアで連載を多数持つ。

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