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HOME > ジセダイ編集部 > エディターズダイアリー > 『「百合映画」完全ガイド』における表現につきまして

エディターズダイアリー

『「百合映画」完全ガイド』における表現につきまして

石川詩悠
2020年07月04日 更新

読者のみなさま


刊行直後より『「百合映画」完全ガイド』を多くの方に手にとっていただき、また、多くのご感想をお寄せいただき、まことにありがとうございます。

そのなかで、本書第1刷の104ページに掲載の『バウンド』レビューに対するご指摘をいただきました。
当該レビューは下記のとおりとなっております。


ある空間にいる限りその隣室の様子を見ることはできない。隣室からセックスや拷問の声が聞こえても、見えるのは自室の壁紙とその模様だけ。だが映画にはカット割りが可能だ。次のカットが別の空間を写せば、見たかったものも可視化される。一方それは、前後のカットが「異空間」であることを確実に意識させる。近いようで遠い異空間である隣室。この距離感は本作のヒロインらの心理関係を表象しているように思える。たった数晩肉体関係を持っただけの二人は、マフィアから大金を奪い取るなどという重大な共謀をするに足る信頼関係なのだろうか。そんな両者の不安も本作の重要なサスペンスとなっている。ウォシャウスキー「元」兄弟による秀作。

監督:アンディ・ウォシャウスキー+ラリー・ウォシャウスキー/1996年/アメリカ/108分


このうち、〈ウォシャウスキー「元」兄弟〉という表現は、トランスジェンダーであるラナ・ウォシャウスキー氏ならびにリリー・ウォシャウスキー氏に対するミスジェンダリング(当事者のジェンダー・アイデンティティとは異なる性別で扱う行為)であり、発信者の意図にかかわらず、明確な差別表現にあたるものです。

また、監督名も〈アンディ・ウォシャウスキー+ラリー・ウォシャウスキー〉と記載しております。
これは、「製作当時の名義を記載する」という本書の統一的な編集方針に基づいたものでしたが、大手映画データベースサイトの IMDb においては、「ハラスメントや差別につながる可能性がある」として、出生名の記載を削除する方針が2019年8月に発表されています。

以上をふまえ、当該『バウンド』レビューにつきましては、お詫びして下記のとおり訂正させていただきます。
また今後、本書を重版する機会があった際には、同様に訂正させていただきます。


ある空間にいる限りその隣室の様子を見ることはできない。隣室からセックスや拷問の声が聞こえても、見えるのは自室の壁紙とその模様だけ。だが映画にはカット割りが可能だ。次のカットが別の空間を写せば、見たかったものも可視化される。一方それは、前後のカットが「異空間」であることを確実に意識させる。近いようで遠い異空間である隣室。この距離感は本作のヒロインらの心理関係を表象しているように思える。たった数晩肉体関係を持っただけの二人は、マフィアから大金を奪い取るなどという重大な共謀をするに足る信頼関係なのだろうか。そんな両者の不安も本作の重要なサスペンスとなっている。ウォシャウスキー姉妹による秀作。

監督:リリー・ウォシャウスキー+ラナ・ウォシャウスキー/1996年/アメリカ/108分


今回ご指摘いただいたような差別表現は、当然あらゆる場面においてあってはならないことですが、とりわけ本書のようなセクシュアル・マイノリティの方々をも中心的な主題として扱う書籍においてこのような記述をしてしまったことは、制作上の重大な過失であったと重く受け止めております。
重ねて深くお詫び申し上げます。


2020年7月4日
『「百合映画」完全ガイド』執筆者一同/編集担当・石川詩悠

エディターズダイアリー

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