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ニッポンのスタートアップ

【デザイン×町工場】町工場の技術を"翻訳"する新時代のデザイナー「BRANCH」

2013年05月21日 更新
【デザイン×町工場】町工場の技術を

3年後に再会すること(例え路頭に迷っても)を約束して行う、未来アポ付き取材コンテンツの「日本のスタートアップ」インタビュー。今と未来を線でつなぐことで見せる、行動の歴史こそが、挑戦の最前線!

第2回目のゲストは、日本が誇る町工場の技術を、デザインの力でプロダクト化し、発信している「BRANCH」。BRANCHのサイトを見ると、町工場の技術で作られた魅力的な製品がたくさん並んでいます。日本のものづくりの最先端の現場から考える、デザインと技術の融合が起こす未来について、「BRANCH」代表の前川曜さん、そしてちょうど新製品を共同開発中の「金型製作ミヨシ」の杉山耕治さんに、お話を伺いました。

 

取材・構成:江口晋太朗、今井雄紀 写真:今井雄紀

デザイナーと町工場をつなげる仕事

 

江口 本日はよろしくお願いします。まずは、最初にBRANCHの活動について、説明して頂いてよろしいですか?

 

前川 BRANCHは「町工場デザイナー」という肩書きのもと、町工場の「知恵や技術」とデザインをつなぐことを目的としています。世界に誇れる日本の町工場が持つ優れた技術を、一般の人たちにも分かりやすい価値に変えて、製品化するお仕事ですね。 

 

江口 BRANCHが今までに関わった製品は、何かありますか?

 

前川 例えば、精密切削加工が得意な由紀精密さんと、止まっているように見えるくらい、3分以上回り続ける「精密なコマ」を一緒に開発しました。

 

 

 

 

また、精密板金加工が得意な海内工業さんとは、一枚の板金で出来た名刺入れ「CLIP」を製作しました。こうした製品を、BRANCHのサイト内で販売しています。

 

 【デザイン×町工場】町工場の技術を"翻訳"する新時代のデザイナー「BRANCH」

 

今井 え、これって一枚の板を曲げて作られているんですか? すごい! 普段生活をしていると、なかなか町工場について考えることってないけど、こういう形でアウトプットされて、手にとると、日本の技術がいかに優れているか分かりますね!

 

前川 ありがとうございます。町工場の技術を、こういった形で翻訳して分かりやすいカタチにすることが仕事なんです。買った人に喜んでもらえるのはもちろん、町工場にとっては、各社の技術をアピールするツールにもなります。

 

 

きっかけは、工場の遊休設備を使った製品開発

 

 【デザイン×町工場】町工場の技術を"翻訳"する新時代のデザイナー「BRANCH」


 

 

江口 もともと町工場で働かれていたんですか?

 

前川 いえ、そうではありません。元々はデザイナーでした。父親が建築家だったこともあって、子供の頃から家には図面や模型がたくさん並んでいました。自然とものづくりやデザインが面白そうだなと思うようになって、美大に入学したんです。大学ではプロダクトデザインを専攻していましたが、工場の現場や、実際にどう製造するかということはあまり勉強できず、それがずっと心残りでした。そこで、ものづくりの現場に行きたくて、大学卒業後は金型メーカーに就職しました。

就職先では、デザイナーとしてデザイン全般に関わっていたのですが、もっと製造現場を体験をしてみたいと思い、1年ちょっとで会社を辞めました。そこから、実際にプレス工場で作業員をやりながら、現場のことやデザインの修行の期間を過ごしました。アルバイト生活だったので、正直言って食っていくのもやっとなくらいのギリギリな生活をしていましたね。

 

江口 ものづくりの現場を覚えたいという思いがあっても、会社員を辞めて現場に働きに出るというのは、なかなかできることではないですよね。そこから、どうやって今みたいな仕事にたどり着かれたんですか?

 

前川 先ほど紹介した「精密コマ」の由紀精密さんとお仕事をするようになったのが、BRANCH発足のきっかけです。前職の先輩のご実家が由紀精密さんで、その工場のデザインを担当してくれないか? と、声をかけてもらいました。デザインの仕事ができる喜びで必死に仕事をしました。そんな姿勢を評価してもらうことができ、一緒に製品開発をするようになったんです。

ある時、「工場の遊休設備を使って何かできない?」と依頼され、そこからTIPSYというワインのコルクを加工したデジカメ用のカメラマウントができました。そこから、工場の遊休設備を使って製品を作ることの可能性を感じ、BRANCHという名前を考え、工場の技術とデザインをつなぐ活動をスタートしました。

 

 【デザイン×町工場】町工場の技術を"翻訳"する新時代のデザイナー「BRANCH」

 

 

江口 デザイナーから工場勤務を経て、町工場の人と一緒に製品を作っていく動きから、BRANCHができたんですね。BRANCHの活動は、デザインと町工場の人をつなぐことを目的にされていますが、これまで、両者はあまり接点がなかったんですか?

 

前川 これまでは、関係がしっかりあるとは言えないという状況だと思います。新しいプロダクトをデザイナーが作りたいと思って見積りを工場に出しても、工場からしたら一見さんなのでほとんど足下をみられます。笑。互いにうまくコミュニケーションが取れる関係になっていないのが現状です。

デザイナーでもあり、工場で勤務した経験もある自分は、デザイナーはものを作ることが嬉しいし、作ったものが売れれば、工場としても技術が認められて嬉しいということを知っています。両者がもっと協力しあえる関係性になれば、お互いにメリットがあるはずで、この両者の間に入って関係性を作る存在になることがBRANCHの目指すべきところだと考えています。BRANCHを名乗り始めてからは、工場の人とデザイナー双方と互いに色々な話をしながら、次第にネットワークができるようになってきましたね。

 

 

プラスチックの射出成形で作る新製品の開発

 

江口 いま、金型製作のミヨシさんと一緒に製品を作っているんですよね?

 

前川 そうなんです。ミヨシの社長杉山さんとは、3年ほど前に工場の方々が主催した勉強会で知り合いました。昨年は渋谷ヒカリエで2012年夏に開催した「BRANCHと町工場展」にも協力してもらっています。

現在一緒に開発している商品は、製品設計の際にエンジニアやデザイナーが「角R」を一覧できるものです。「角R」とは、プラスチック成形によく使われる製品の角の丸みのことで、0.1ミリ単位でその丸みの違いを確認できる板チョコ型のサンプル「Resiina」を作っています。

 

 【デザイン×町工場】町工場の技術を"翻訳"する新時代のデザイナー「BRANCH」

 

杉山 もともと自社で「角R」の数値が分かるサンプルを作っていたのですが、正直分かりづらく、いつも説明が難しかったんです。しかも、今は3DCADを使ってPCの画面で設計やデザインする人がほとんどで、実寸大の角Rの大きさを視覚的に把握せずに設計する事も多く、実際に金型が出来てから実物のイメージが食い違うという問題も起きる事があります。このような問題を解決し、誰にでも分かりやすいサンプルの必要性を感じていました。

昨年のヒカリエでの展示会で、フォーマットとしては板チョコ型にすると面白いんじゃないかと、一緒に出展していた由紀精密さんのアイデアからこのプロジェクトがスタートしました。あらゆるチョコを買ってチョコらしい色やカタチの要素を抽出してデザインに落とし込んでいます。アイデアから3Dデザインと設計は由紀精密さんにご協力頂き、パッケージのデザインもグラフィックデザイナーにお願いし、販売はBRANCHさんにご協力頂いています。

 

今井 これ見ちゃうと、街中で板チョコを見たときに角Rが気になっちゃいますね(笑)

 

前川 そういう楽しみ方もありますね。デザイナーと工場の人がやりとりをする際に、こういったサンプルがあれば、実物の数値をお互いにすぐ確認できます。意思決定も早くなり、仕事も円滑に進むと思います。さらに、ミヨシさんの金型技術アピールだけでなく、こういった技術的なサンプルはニッチな製品なので価格が高いのですが、誰でも手に入れやすい価格にして、実用的に使えるようにする事がこの製品の価値でもあります。表面的にきれいやかっこいいだけじゃなく、販売やビジネス全体も考える事がデザイナーには求められます。

 

 

これからのデザイナーも、変わらなきゃいけない

 

江口 前川さんから見て、今後、デザイナーという職業はどうなっていくと思われますか?

 

前川 これから、デザイナーを取り巻く環境はものすごく変わってくると思います。僕がいた美術大学は、定員が僕の頃から4倍に増えています。しかし、企業はデザイナーを受け入れる枠があまり増えていません。デザイナーになりたくても、これまでの働き方では、難しくなってきているのではと思います。

 

江口 前川さんみたいに、自分自身で新しい仕事を開拓したりチャレンジをするような人が増えてきそうですか?

 

前川 デザイナーも受身でいるのではなく、自分から提案し挑戦することが大事だと思います。企業にいると、縦割りで部分最適化された人になりがちです。しかし、ものづくりの方法そのものが多様化し、SNSやネットを駆使すれば誰とでも繋がる事が出来る今だからこそ、自ら様々な分野の人とつながり、そこから新しいものを作っていくよう自分自身で動かないといけません。これからのデザイナーは製品を企画し、製造工程の始めから終わり、販売や物流までを経験することで、新しい道ができる可能性があると思います。

 

 

目指すは、町工場の新しいネットワーク

 

江口 最後に、BRANCHの今後の展望をお伺いしてもいいでしょうか?

 

前川 今は町工場1社づつと共同開発をしていますが、今後はプラスチック成形や板金、切削、プレス、鋳造といった複数の工場の技術や素材を組み合わせた製品を開発したいと思っています。複数の技術を掛けあわせたら、これまでになかった製品ができたり、掛けあわせの中から、新しい技術が生まれるかもしれません。「ものづくり同士のコラボレーション」を作り出すことで、町工場の技術が生まれ変わるための挑戦をしていきたいと思います。

そうしたコラボレーションを生み出されると同時に、工場同士が連携し協働する環境ができることで、仕事の方法も変化していくと思っています。 例えば、ある工業地帯に1人でも英語ができる人材がいれば、海外から仕事を共同受注して請け負うことができます。複雑な材料と加工が必要な製品の案件も、複数の工場が関わることでより柔軟に対応することもできます。一緒に開発をしたり、仕事を請け負う関係性を築く相互連携のネットワークができることで、技術を活かす場が増えてくると思います。

 

江口 町工場ネットワーク! すごくワクワクしますね。そうしたきっかけとして、BRANCHの活動は活きてきそうですね!

 

前川 そうですね。デザイナーだけでなく、町工場同士もつなぐ役割を担っていけると思います。まだまだ、「日本の町工場の技術」はうまく連携しているとはいえません。埋もれてしまう技術、なくなってしまう技術を掘り起こすためには、もっと町工場の良さを伝えていかなきゃいけません。よく野菜売り場とかで「誰々が作ったキャベツ」ってあるじゃないですか。顔が見えるからこそ、信頼して野菜を買える、そんな状況を町工場でも作っていきたいですね。顔が見え、信頼される技術を持っていることを知ってもらうことで、仕事のやりとりが増え、さらに町工場に就職したいと思う人が増えていくといいなと思います。

 

今井 顔が見える町工場、面白そうですね!

 

前川 顔が見える関係によって、自分の地域にある工場の良さに気づき、地域の中で仕事を作るネットワークができるようになることで、経済が回る仕組みになるかもしれません。ものづくりの地産地消と呼べるような、地域の枠組みになると面白いですよね。

 

江口 町工場のあり方そのものを見つめ直す時代なのかもですね。BRANCHの活動は、デザイナーと町工場も含めた、まさに新しいネットワークのハブ的存在ですね!

 

前川 そうなれるよう、頑張っていきたいと思います。

 

今井 3年後にまたお会いしましょう! その時は、もっと多くの町工場の人と一緒に取材させてください!

 

前川 ぜひ! 3年後は、もっと多くの工場の話をさせてください。



 

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前川曜
千葉県出身。多摩美術大学プロダクトデザイン科を卒業後、金型加工メーカーにて無人金型工場の立ち上げ等に参画。その後、工場デザイナーとして、さまざまな工場へデザイン活動を行う。2010年より、町工場とデザインを繋ぐプロジェクト、BRANCHを立ち上げる。「モノ」をつくる工場から「価値」を創造する工場へと変化させるデザインをソリューションとして提供している。



杉山耕治
アルミ金型と小ロット成形の「株式会社ミヨシ」代表取締役社長。

 

会社概要

会社名
合同会社BRANCH
所在地
〒279-0002 千葉県浦安市北栄1-5-32-203
事業内容
町工場デザイン
HP
http://store.branchproducts.com/
Twitter
@youphone

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