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ザ・ジセダイ教官 知は最高学府にある

「マーケティングはモーケティング」松井剛先生のお話を聞いて、マーケティングが学びたくてたまらなくなった!【前編】

2013年03月21日 更新
「マーケティングはモーケティング」松井剛先生のお話を聞いて、マーケティングが学びたくてたまらなくなった!【前編】

一橋大学商学部の松井剛先先に、わかってるようでわからない「マーケティング」についてお話を伺ってきました! こんなに楽しそうで役に立ちそうな学問て知ってたら、商学部入ったのに……。聴けば聴くほど興味が出てくるモーケティングの深〜いお話、ご堪能ください。

 取材:柿内芳文・今井雄紀 構成:今井雄紀 写真:今井雄紀

「ありがとう」と「お金」このふたつを一緒にもらうにはどうしたらいいか

 

今井 今日はお忙しいなか、お時間頂きありがとうございます。

 

松井 いえいえこちらこそ。よろしくお願いします。

 

今井 まず「商学」とはなんなのかという、根本的なところからお聞きしたいと思っております。商学ってどういう学問で、学ぶと何が世の中がそう見えるようになりますか? なんとなく名前から、商売のことを学べそうだというのは感じるんですが……。

 

松井 「ありがとう」と「お金」、この二つを同時にもらうために何をすればいいのか考えるのが、「商い」であり、「商学」だと思います。お金をもらうだけで もダメだし、かといって感謝されるだけでもダメなわけです。地元に愛されるお店が惜しまれつつ閉店なんてニュースがよくあるじゃないですか? あれは、 「ありがとう」に比重が行きすぎた結果。僕、好きな言葉があって、ちょっとくだらないんですけど、「マーケティングはモーケティング(儲けティング)」っ ていう言い方があるんですよ。

 

柿内 日本語だ!

 

松井 そうなんです(笑) 1950年代、日本に「マーケッティング」っていう概念が輸入されたんです。戦後ですね。当時、「日本生産性本部」って組織があって、そこが、戦後日本が 復興する中で、いろんな産業の代表団をつくって、アメリカに派遣してるんですよ。例えば鉄鋼業とか、広告業とか、そのなかにマーケッティング専門視察団っ ていうのがありました。

 

今井 遣隋使みたいですね。

 

松井 そんな感じだったんだと思います。その視察団が一番驚いたのが、アメリカでは「消費者が王様」であり、ごくごく当たり前の考え方としてみんな信じて るってことだったんです。学者も、マーケッテイングマンもみんなそう言ってると。小さい「ツ」が入るところが時代を感じさせるんですけど、要するに顧客志 向であるというのが、建前でなく本音で考えられていたんですね。これはちょっと学ぶべきところがあるなってんで、それ以降マーケティングっていうのが、産 業界で流行ったんです。それで、何でもかんでもマーケティングって何だよそれってちょっと馬鹿にしたような言い方で、「マーケティングはモーケティング」 という言葉が生まれました。結局儲けるためじゃないかと言うんですね。これは、図らずも本質を突いてるなあと思います。顧客のためだけに商売をし続けた ら、商いは成り立たないですから。

 

 

オンラインゲームを使って勉強

 

今井 でも、そこのバランスのとり方ってほんと難しいですよね。あちらを立てればこちらが立たずで……。

 

松井 そうなんです。社会に出て働いてみると、よくわかりますよね。僕らのゼミで、マークストラット・オンラインっていう、欧米のビジネススクールで使う経 営のオンラインゲームをやるんですよ。ソーナイドとボーナイドっていう架空の製品を売るんですけど、これがやたら難しい。毎週一回意思決定の期限を設け て、五社が競争して、意思決定の内容を踏まえてシミュレーションかけてという感じで……。そうすると、例えばお客さんに満足させようとすると、プロダクト のラインを増やすってことになるわけですよね。そうするといろんなタイプの製品が造れるんで、沢山のお客さんに満足して頂けると。でも何が起こるかってい うと、製品の数が増えすぎて管理できなくなっちゃう。2つだったものが5つになっただけで、どのチャンネルで、いくらで売るのかっていうことに目が配りき れなくなるんですね。

 

柿内 なるほど。儲けを目指すと、ひとつのラインで徹底的にコストをかけずに造るみたいなことができるわけじゃないですか。でもそれやっちゃうと、顧客に飽きられるわけですよね。

 

松井 そうなんですよ。だから、そこをどうバランスさせるのかとか、局面ごとの対応っていうのは、ほんともう、単純な正解がない世界ですよね。ある時点で最 適だったことが、次の時点でダメになるってこともざらにあるわけですから。「ありがとう」と「お金」のバランシングっていうのも、環境によって変わってき ます。そうやって、ゲームとはいえ“身を持って”痛い目にあことで、学生達には学んでもらっています。

 

柿内 こういうシミュレーションって、模擬店とかでやってみるとすごくわかりそうですね。

 

松井 おっしゃるとおりです。

 

柿内 フランクフルトひとつ売るのだって、焼けば売れる、みたいな感じではないわけで。

 

松井 まあ学園祭なんてのは、あれはほとんど人件費を計上してないですから、実は儲かってないですよね。ほとんどの場合。

 

柿内 そうですね。仕入れのコストのみ出しますしね。時給800円とかで計算したら大赤字ですよね、大抵。

 

松井剛先先

 

みんな「意図の嵐」の中で生きている

 

松井 そうなると思います。だからよく言われる原価率なんかの話についても、一歩進んで考えないといけない。ラーメン屋やたこ焼き屋の原価率ってすごく低い と言われますけど、じゃあ彼らがぼろ儲けしてるかと言うとそんなことは全然ありませんから。ゼミだけじゃなくて授業もそうなんですけど、全てには理由があ るからと。街角にある看板一つとっても、必ず何か理由・狙いがあって、機能してるかどうかは別として、何か意図を持ってやってるんだから、その“意図を読 み解く”ということをできるようになってくださいって、そう言ってます。

 

柿内 ああ、それはすごくいい言葉ですね……。

 

松井 何でこの看板が赤いのかとか、この大きさなのかとか、接客の仕方がなぜこうなのかっていうのを、マーケティングとか消費者行動論の授業でよく聞くんで す。だいたい4ヶ月くらい授業やってると、学生にもそういう癖がついてきますね。陳列の仕方がなんでこういうふうになってるのかとか、見て、考えてくれる ようになります。何かこう、世の中を素直に見なくなってしまうプロセスであるかもしれないんですけど、ただ、それは、要するに僕らの世の中ってのは様々な 意図に満ち満ちてるわけですから、それを多少でも読めるようになるってのは、けっこう普遍性のある知的プロセスだと思うんです。そのひとつの具体例として マーケティングとか消費者行動を勉強してもらうってのがいいんじゃないかなって思ってやってるんですけど。

 

柿内 確かに、意図に晒されながら暮らしてるっていう感覚は、なかなか無いですよね。こないだ、カリフォルニアに1週間ぐらい行ってきたんですけど、日本に 帰ってくると、ホントに何か嵐の中にいるような、もう、「これを買って!」、「私を見て!」ってあらゆるものが言ってて……。もちろんアメリカも消費社会 なんですけど、まあ土地が広いというのもあって、日本ほど広告が生活の邪魔をしてないんですよ。そういうところから帰ってきて、めまいのするような感覚 を、久しぶりに味わいました。普段から嵐の中にいると、いまが嵐の中だって気付きませんよね。

 

松井 そうなんです。いまのお話僕すごい大事だと思ってて、大学だと、留学生と一緒に学ぶことができますよね。今日も午前中、大学院で、日本人、中国人、台 湾人×ふたりの3カ国の4名の学生たちを相手に授業をやってたんですけど、そこで「男らしさ女らしさ」って話が出たんですよ。中国人と、台湾人のふたりは みんな女の子なんですけど、普通にひとりで吉野家に入れるって言うんですね。むしろ、日本の女の子が躊躇するのにビックリすると。あー、文化による価値観 の違いがよくわかる話だなーと思って。ある文化ではOKなことが、別の文化ではダメになってしまう。留学生と触れ合うことで、それを知る機会が沢山できる んですよね。だから必然的に、自分たちが当然視していたことが、実はそんなに根拠無いことだったり、他の文化ではそうじゃなかったりするっていうことを発 見する機会も増える。自分の生きてる世の中とか環境を、実体験を踏まえてクリティカルに見ることができるのは、なんだか羨ましいなと思って。

 

柿内 そうですね。そういった意味で、いまの大学生の方が昔よりもいい環境にいますよね。

 

松井 そうなんです。これから大学卒業する人たちって、いろんな意味で“出て行く”可能性が高いですよね。こういうのって慣れの問題で、才能とかの話では全然ないので、早めにそれができる大学は楽しいなと思いますね。

 

 

常識を疑う力をつける

 

今井 今のふたりのお話って、「自分たちの時と比べて」ってのが前提としてあると思うんですけど、松井先生から見て、最近の大学生はどうですか?

 

松井 今の学生は、ホントに勉強します。成績の評価システムがそうなっちゃってるんで、構造的にそうなっているところもあるんですけど……。でも、ちゃんと大学で「学んでやろう」という意識の人も増えましたよ。大学に期待する人が増えたと。

 

柿内 それはすごく感じますね。一方で、その代償かどうかわからないんですけど、ちょっとクリティカルに考えたり、少し俯瞰して考えたり、常識っていうのが 常識じゃないかもしれないって、ある意味疑常識的な、社会学とかも疑常識的な学問だと思うんですけれども、そういう視点が足りなくなってるんじゃないかと いう声も聞きます。そこら辺に関してはどうですか。

 

松井 そうです ね。僕はけっこう楽観的というか、すごい前向きに考えてます。高校までっていうのは、与えられた問いに対して答えを出すという作業だったのが、大学に入る と、卒論がね、その集大成としてそうなんですけど、自ら問いを立てるというプロセスじゃないですか。で、問いを立てるっていうのは何かに疑問を抱くという ことなんで、常識を常識としてただ享受してるとできないことだったりするんですけど、それは教えてあげれば全然身につくんで。教わる気があるから全然大丈 夫なんですよ。今の学生、立派だなと思います。

 

柿内 商学部の学生は、ひょっとしたらそういう問い立てが得意なのかもしれないですね。

 

松井 どうでしょうね。僕よく言うのは、みなさん生まれながらにして消費者なんで、最初は自分でお金払ってないかもしんないけど、ミルクなり、おしめも、全 部世の中で売られて買われてるものだから、もう生まれながらにしてマーケティングに染め上げられちゃってるんだよって話です。それがどういう成り立ちかっ ていうのを、知りたいでしょ?って(笑) 対象物がどこにでもあるという点では、常識を常識じゃないんじゃないかと疑ったり、仮説を立ててみたりする機会が多い人たちであるっていう風に言えるかも 知れませんね。

 

今井 松井先生の授業、終わって外出た瞬間に、世界がちょっと違って見えそうですね。

 

松井 あははは。だと嬉しいですねえ。

 

今井 いや、絶対そうですよ。受けたかったなあ……。そうやって、日常的に入ってくる情報をフィルタリングするような術も教えれば、逆にアウトプットの方法も教えられたりするんですか?

 

松井 それはすごく大事にしています。これは商学に限った話じゃないんですけど、どんなに考えが優れていても、伝わらないと意味がありませんから。「大学生 協の陳列がショボい」と思ったのなら、なぜそうなっているのか、どんな言葉で話したら、相手に共感してもらえるか。丁寧に考えて、話してもらいます。

 

柿内 編集者も同じですね。面白い映画を見て、「面白かった」で終わっちゃダメなんですよ。何がどう面白かったのか、自分の中で咀嚼して、しかもそれを著者 さんに説明しないといけなかったりしますから。ある意味での問い立てをして、「何が面白いのか」とか、ここが面白いと思ったっていうことをもっと突き詰め ていって、言語化して他人に説明しなきゃいけない。それはもうホントに学問のジャンルでもまったく同じだと思いますね。

 

松井 そうですね。おっしゃることを言い換えると、よくteaching is learningって言いますけれども、要するに、人に説明できるようになってはじめて「わかった」っていうことになると思うんですよね。これは、僕の学 部のゼミでも使ってるテキストなんですけど……。

 

柿内 何という本ですか?

 

松井 『Consumer Behaviour: Buying, Having and Being』、ですね。この本を読んでもらって、説明し合ってもらうんです。最初はまあ、なんと言うか、直訳調の説明をするわけですね。これは“”わかっ て”ないと。メモとかテキストを読み上げないで自分の言葉で説明してよと。そこの街を歩いてるおじさんおばさんでも分かるように説明しろとか、吉祥寺の焼 き鳥屋でビール飲んでるおっちゃんでも分かるように説明しろとか、けっこう無理難題を押し付けては突っ返すんです。自分の解釈・言葉で語れてはじめて、 知ってるが“わかる”になります。他のゼミもそうでしょうけど、僕のゼミはとにかく議論議論議論。専門的とはいえ誰もが経験している“商い”について学ん でるわけですから、説明できないわけがないって追い込んで……(笑)

 

今井 こ・わ・い。

 

松井 あはは(笑) その分、テーマはとっつきやすいですよ。例えばバレンタインデーってどうやってできあがったのなんていう歴史を調べてもらったりとか。

 

 

バレンタイン、ハーレー、ラーメン二郎……研究対象は無限大!

 

柿内 あ。なるほど。身近なことで……。確かに、バレンタインデーっていつからあるんだろうってみんな知らないし、あるのが“常識”ですもんね。お歳暮とかもそうですけど。

 

今井 そうですね。当たり前の、もうホント、生まれたときからあったものの、成り立ちを知ってこそ、全てに意図があるってことはより深く印象に残りますよね。

 

松井 その次の段階っていうのが、意図と意図との絡み合いとそれが生み出すものに関する考察です。神さまじゃないんでもちろん全部予測はできないんですけど、その読み解き方ぐらいは、練習できるんですよね。

 

柿内 そこら辺って、経済学にも近づいてきますか?

 

松井 経済学的な、割とフォーマルな分析っていうことをやってらっしゃる方もいますけど、僕らのマーケティングの、特に僕の場合は、もうちょっと具体的な、 血が通ったプロセスを、人間の様々な、エゴとか、妬みとかも含めてですね、リアルなプロセスを分析します。その際に、概念とか理論というレンズを導入して 理解していくといったかたちですね。

 

柿内 それは例えば感情とか、心理的なところとかそういう……。経済学ってどっちかって言うと合理的な、経済人みたいなのをモデルにするじゃないですか。それとはまたちょっと違って、ていう感じなんですか?

 

松井 そうですね。経済学、僕は専門外なんですけど、行動経済学なんてのは、そういったリアルなプロセスを分析する道具立てをいろいろお持ちのようですね。 商学とか、マーケティングとか、消費者行動でもいいんですけど、僕らって、分析対象で仕切られた学問なんですよ。すなわち、経済学とか、心理学とか、社会 学なんかは、一応それぞれのメソッドがあって、分析の方法ってのがあるわけですよ。経済学が一番分かりやすいと思うんですけれども。

 

柿内 わかります。

 

松井 僕ら、名前がマーケティングなんで、マーケティングについて研究する、マーケティングについて学ぶ、ってことなんですよね。だから、いろーんな研究分 野が参入してるんですよ。それこそ、経済学者もけっこういたりして。他にも、社会心理学、社会学、記号論、文学理論、それから歴史学、文化人類学っていう 風に、要するに、消費者行動というものについて考える人たちってすごいたくさんいるんです。

 

柿内 そっかそっか。商学部って異質ですね。そういう意味では。

 

松井 そんな感じなんで、うちの学部・研究科にもいろんなタイプの人がいます。例えば、僕のところで博士号を取って、いま明治学院大学の先生になった若い人がいるんですけど……。

 

柿内 何という方ですか?

 

松井 大竹くんっていうんですけど、彼はハーレーに乗ってですね、ハーレー乗りの人たちと一緒に行動して、彼らが、ハーレーというブランドに対してどういう意味を作り出しているのかっていうのを、文化人類学的に研究した……。

 

柿内・今井 面白いですね!

 

松井 今日一番の食いつきですね(笑)

 

柿内・今井 僕ら、バイクに乗るので……。

 

松井 あっ、そうなんですか! じゃあよくお分かりになられるでしょう?

 

柿内 はい。でも、ハーレーには乗れなかった。入れなかった……。入っちゃいけないって思ってた。なんとなく入るんだったらハーレーを汚すんじゃないかって思ってた。

 

今井 半端な覚悟ではいけないんですよね。

 

松井 やっぱりそうなんですね。あるカンファランスで大竹くんが発表して、コメントする人がハーレー乗りってことがあったんですけど、「5種類じゃなくて7種類にハーレーのバイクは分けられるんだ」とか言って……(笑) 話す視点がもう、バイカーなんですよ。

 

柿内 いやーハーレー乗りはそうですよ。ラーメン二郎とかもそうかもしんないな……。

 

松井 そうですね。二郎って僕よくわかんないんですけど、二郎好きの人たちが勝手にルールを作ったりとかするじゃないですか。あれは、神聖化のプロセスなんですよね。

 

柿内 社会学的にもすごく面白いですよね。

 

(後編へ続く)

ジセダイ教官の紹介

松井剛

松井剛

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一橋大学商学部教授。2000年、一橋大学商学研究科博士後期課程修了、博士(商学)。同年、一橋大学商学研究科専任講師、2004年同助教授、2013年より現職。2007年8月から2009年3月までプリンストン大学社会学部客員フェロー(2007年から2008年にかけて安倍フェロー)。2013年3月25日碩学舎より『ことばとマーケティング癒しブームの消費社会史』を発売予定。

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