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野食のススメ 東京自給自足生活

第11回:春の具材たっぷり! 海と山の食材を合わせて野食ピザを作ろう

茸本朗
2017年04月28日 更新
第11回:春の具材たっぷり! 海と山の食材を合わせて野食ピザを作ろう

 ついに春が来た!

 冷たい北風に凍えながら魚を釣り上げたり、水の中に手を突っ込んで海藻を集めたり、そもそも全然採れない獲物に心を病んだりする季節が終わった!

 この喜びをどう表現しようか……近所に植え込みに生えていたノビルを引き抜きながら、週末の予定にいろいろと頭を巡らせる。

 春の野食といえば何か。

 多くの人はきっと「山菜」と答えるだろう。

 確かに春が旬となる植物性食材は多い。種子や胞子から芽生え、生育し始める最も柔らかい時期だからだ。
 最近では春になると、スーパーの店頭にもたくさんの山菜が並ぶようになっており、「春=山菜」という構図がより強固なものになった。

 しかし、当連載ではこの考え方に敢えて反旗を翻したい。

 「山菜」と聞いて多くの人が想像するもの、たとえばタラノキやワラビ、ゼンマイなどは有名であるため競争が激しく、都心近郊では狙って採取するのは難しい。
 また、山菜が増えるということは同時にそうでない植物も旺盛に伸びるということであり、初心者にとってはややハードルが高くなってしまう。
 さらには毒草の存在も恐ろしい。

 『野食のススメ』は野食初心者向けの記事を載せることにしているので、判別が難しいものや競争が激しいものについてはあまり積極的には取り上げない。
 そのかわりに紹介したいのは、街中で簡単に採れる野草類、そして同じく街中で見つかるキノコだ。

「春告茸」アミガサタケを採ろう

 筆者にとって春の獲物といえば、第一に挙げたいのがアミガサタケ類(チャワンタケ目アミガサタケ科)だ。

 これはキノコなのだが、非常に変わった形状をしているのですぐに判別でき、誤食による中毒の危険性が少ない。
 非常に初心者向けの野生キノコといえる。

 日本では「キノコ=秋の獲物」というイメージがきわめて強いため、春に生えるこの種のキノコは狩りの対象としてはそれほど認識されていない。
 しかし、ヨーロッパではキノコ狩りといえばこのキノコ(当地ではモリーユ(仏)モレル(英)などと呼ばれる)というほど人気が高く、乾燥品はかなりの高値で流通されている。

 日本でも、関東周辺では3月の下旬ごろから、イチョウの樹下に顔を出すトガリアミガサタケ類が採れ始め、

 やがてサクラやツツジの樹下によく発生する狭義のアミガサタケ類、チャアミガサタケなどにとって代わる。
 いずれも街中の植え込みや公園、時に庭先などにもひょっこりと顔を出す。

 いずれも湿度が高い場所のふかふかした土壌で、地表が露出しているようなところに生えている。
 こういう場所はえてして前年の落ち葉が積もっていることが多いのだが、頑張って地表が見えるところをよく探せばきっと見つかるだろう。
 一度ポイントを見つければ、毎年同じ時期にそこで採取できるのもキノコの楽しいところ。

 アミガサタケ類にはいくつかの種があるのだが、どれも同じような味で同じように利用できるため、採取に当たってはあまり深く考える必要はない。
 まるで某特撮ドラマの怪人のような穴ぼこぼこだらけの頭が目印だ。

 一方で、近縁でもなければ見た目も似ていない「シャグマアミガサタケ」というキノコがあるのだが、こちらは致死的な毒成分を含むので利用はオススメしない。



 ご覧のとおり、まったく間違う要素がないので、心配の必要は皆無なのだけれど、念のため写真を載せておく。
 マツやモミのような針葉樹の樹下に生えるのも、アミガサタケ類との違いのひとつ。

タコは春先の貴重なターゲット

 続いて、メインの食材となるタンパク源の確保に移るのだが、正直に言うと今回はこれまでで最もターゲットの選定に悩まされた。
 春になり、暖かくなって「啓蟄」を迎えたのだから、冬と比べると動物性食材も楽に捕まえられるだろう、と思われるかもしれないが決してそんなことはない。
 両生類や爬虫類はまだ顔を出してきてくれないし、昆虫類もまだ簡単には見つけられない。
 なら魚を釣れば? と言いたい気持ちはわかるが、実は春先は海や川の水温が最も下がる時期であり、都心部で対象となりえるターゲットがごくわずかとなってしまう。

 この時期ならではのターゲットが見つからなければ、一年中変わらず採れるものがあればいいのだが、あるだろうか。



 ......タコとかどうだろう。



 タコ類は、非常にシンプルな道具立てで、誰にでも釣ることができるターゲットである。
 東京湾や相模湾のような近い海にも大量に生息しており、ときに川崎港のような都心の岸壁で釣れ盛ることもある。
 初心者にオススメの釣りものと言って問題はない。

 さらに、一年中コンスタントに釣ることができる。
 春先の低水温期でもよく釣れるので、狙いの魚がボウズに終わったときのお土産確保として釣ることもしばしばだ。

 ただ問題があって、タコはアワビやサザエと同様に漁業権が設定されていることがあり、どこでも釣っていいというものではない。
 工業港などで漁業権が放棄されている場所なら問題ないが、漁港などで狙う場合はあらかじめ、該当する都道府県の漁業権の設定状況を確認したほうがよいだろう。

 というわけで善は急げ、早速タコ釣りに向かうことにした。
 ただ、釣りなれた筆者がサクッと釣っても「初心者向け」という言葉に説得力が出ないので、釣り初心者をゲストに迎えてトライしてもらう方がよいのではないかと考えた。

 編集部に許可を取り、お越しいただいたのは、

 おせち料理の回でもご活躍いただいた、漫画家の小林銅蟲先生。

 あの後、イブニング誌で連載中の『めしにしましょう』は2巻が発売され、「このマンガがすごい!」の月間ランキングにランクインしたり、テレビで取り上げられたりと、その勢いはとどまるところを知らない。
 今回もペン入れを控え非常に忙しい状況の中お呼び立てしてしまったのだが、快く引き受けてくれ、タコをイメージした坊主頭(偶然です)に作務衣、そして業務用長靴というイカした出で立ちで湘南の海に降り立った。

 先生は初めての釣りで釣ったのがイイダコ、次がネンブツダイ、さらにウツボという実にファンキーな経歴をお持ちで、今回が4度目の釣りになる。
 漫画家ならではの洞察力の強さで、教えたことをすぐにマスターしてくださるのだが、それでも釣り初心者と言って差し支えはないだろう。

現地に到着し、仕掛けを準備する。

 使うのは「エギ(餌木)」と呼ばれる、本来はイカを釣るための漁具だ。
 (参考:エギ Google画像検索)
 値段はピンからキリまであるが、キリの方を選んでいただいて問題ない。
 筆者が使っているのは某100均で購入したものだ。

 タコは頭のいい生物と言われるが、目立つものが動いているとついつい乗っかってしまうらしく、暖色系のよく目立つものの方がよく釣れる。

 釣り方はとても簡単だ。
 竿にリールをセットし、先端にエギをつけて足元に投げ込み、海底まで沈める。
 そのまま30秒待って少し引きずり、またそこで30秒待つ。
 これを送り返していると突然、ごみでもひっかけたかのように重くなる。
 タコが餌と間違えてエギに乗っかったのだ。

 あわてず急がず一定のスピードでぐるぐると巻き続ければ、



 一丁上がり!
 高級な地物のマダコ(タコ目マダコ科)だ。

 これで取れ高はOK、あとは小林先生に釣れたら取材は大成功なのだが......。



 おおっ! さすが先生!
 やや小ぶりながら、しっかりとマダコを釣り上げた。



 さらにその後、同サイズを1匹追加し、完全にマスターした模様。
 「一度アタリがあって、上手く乗らなかったけど少し待ったらまたアタってきました」とタコ釣り玄人顔負けのコメントも飛び出した。

 ああ、よかった! 一安心だ。
 平林氏と2人で来ないでよかったわ......。
 あれ、そういえば氏はどうなった?

 ご心配なく、ちゃんと釣ってました。



 足を。



 タコは吸盤の力が強いために、海底や岸壁に全力で貼り付かれると剥がすのに難儀する。
 一方で足は柔らかく千切れやすいため、運が悪いとこうやって足だけが切れて揚がってきてしまうのだ。



「平林さんやりましたね(棒読み)その足そのまま食べてみたらどうですか?」
「......美味しいです(棒読み)」
※タコの足をそのまま食べると、喉に張り付いて窒息することがあるのでやめましょう

 その後平林氏が吸盤をひとつ追加したところで、風が強くなってきたので納竿。

 帰りに岸壁に張り付いていたカサガイ類(カサガイ目ヨメガカサ科)を数枚、



 さらに岩肌に張り付いていた海藻のヒラアオノリ(アオサ目アオサ科)を採取して、海の部を終了とした。



 帰り道、木陰に生えていたアマチャヅル(スミレ目ウリ科)、そしてコハコベ(ナデシコ目ナデシコ科)を採取した。
 アマチャヅルは一見何の変哲もない雑草だが、あのチョウセンニンジンと同じ成分が含まれており、古くから薬草茶の原料としてマニアの間では人気が高い。
 葉の形がよく似たヤブガラシと間違えやすいので、採取の際は葉や茎が黄緑色になっていることを確認されたい。

もっとも便利な野草・ノビル

 江ノ島からロマンスカーで都心に戻り、借りているキッチンに向かうのだが、この時点でまだビタミン源が確保できていない。
 「栄養バランスのよいメニュー」が条件の当連載、このままでは不成立となってしまう。

 しかし心配は不要、今の時期は街中で採れる美味しい野草がたくさんある。
 その中でも、筆者が最もお勧めしたいものがある。
 それはノビル(キジカクシ目ヒガンバナ科)だ。



 ノビルはふだん野食をしない層にもよく知られた野草で、簡単にいうと野生のネギ(野蒜)だ。
 肥大化した鱗茎がミニチュアのタマネギのようで、ここを掘り取って利用されることが多い。
 しかし実際は葉の部分も美味で、市販のネギと全く同様に利用ができる。

 筆者は仕事の帰りに近所の空き地で数本抜いて持ち帰り、そのまま夕食に利用することもある。
 この利用性の高さを知っていれば、春から初夏にかけてはスーパーでネギを購入する必要もないくらいである。

 都心を流れる神田川沿い、ちょっとした公園の植え込みを覗きこめば



 予想通り、立派なノビルがたくさん見つかった。
 ゆっくりじわじわと引っ張れば、見事な鱗茎と一緒に、ずぼっと抜けてくれる。

 これですべての材料が揃った。

春の味たっぷりの野食ピザ!!

 キッチンに到着し、早速調理を始める。



 まずは強力粉5:薄力粉1を混ぜて、ぬるま湯にドライイーストと砂糖少量を溶き、生地と混ぜ込む。



 15分ほどしっかりと練りこみ、濡れ布巾をかぶせて1時間ほど発酵させる(1次発酵)。

 この間に具材を調理していこう。



 アマチャヅルはよく洗い、細かく刻んで、電子レンジにかけて乾燥させる。
 コハコベは水洗いする。



 アミガサタケは中が空洞になっており、様々な虫(ときにムカデも)は入っていることが多い。
 そのため一度冷蔵ないしは冷凍して殺虫してから調理すると、台所が阿鼻叫喚に包まれずに済む。
 半分に切り、表面をよく洗って土を落としておく。



 ノビルは鱗茎のひげ根を切り落とし、葉先と偽茎(白ネギ部分)を切り分けておく。

 アオサはさっと水洗いすればOK。



 マダコは胴の部分(タコのイラストで鉢巻きを巻いているところ)に墨袋と内臓が詰まっており、調理前にはそれを取り出さないといけない。
 胴体の部分はポケットのようになっており、中心が筋でつながっている。
 筋を指で引きちぎりながら、靴下を裏返すように胴体を裏返し、流水をかけながら内臓を取り去る。
 墨袋は破らないに越したことはないが、破れてしまったらすぐに流水をかけてよく洗い流す。



 それから、全身がたっぷりのぬめりでおおわれていて、これが臭みの原因となるので、少量の酢をかけてぬめりを凝固させ、よく洗い流す。
 酢がなければたっぷりの塩でも問題ない。



 下処理をしたマダコを、塩を少量入れて沸騰させた鍋に、足先から漬けていく。



 熱が通ると足がくるんと丸まり、おなじみの形になる。
 表面だけに火を通すイメージで30秒程度茹でたら鍋からあげ、流水で締めておく。



 カサガイは殻ごと茹で、殻が外れたらザルにとり、流水をかけながら内臓を取り、きれいに洗う。



 1次発酵が終わった生地は、軽く押して余計な空気を抜き、小分けにして丸めて再度発酵を15分ほど行う(2次発酵)。



 フライパンにたっぷりのオリーブオイルを入れ、刻んだノビルの葉先を入れてじっくり加熱し、香りをオリーブオイルに移す。
 ノビルを取り出して、今度はヒラアオノリを入れてじっくり炒める。
 いわば「アオノリソースジェノヴェーゼ風」だ。



 発酵が終わった生地に打ち粉をして平らに伸ばし、



 皿に乗せて、先ほど作った「アオノリソース」をたっぷりとかけ、



 その上にぶつ切りにしたマダコとノビル、アミガサタケ、カサガイを盛り付け、少量のチーズ(調味料枠)を乗せて、ハコベの葉をバジルっぽく乗せたら、230度に温めたオーブンで15分焼く。

 その間に余った具材をフライパンでいためる。
 この時、アミガサタケはよく加熱しないといけないので、まずアミガサタケを炒めてから、他の具材を混ぜるようにする。

 乾燥させたアマチャヅルの葉を急須で煮出せば、



 春の野食ピザセット、完成!





 いただきまーす



 「美味い!」(全員)
 「やっぱり地ダコは美味いな......」(茸本)
 「ノリから磯の香りが出てますね」(平林)
 「ネギの風味もちゃんとあります」(小林)

 じつは小林先生、伝説の漫画「ねぎ姉さん」の生みの親でありながら、ネギ類が大の苦手。
 それでも、
 「ノビル美味しいですね」(小林)
 ありがとうございます。



 ノビルの鱗茎は風味こそそこまで強くないが、カリッとした歯ごたえがピザの具材にはとてもいいようだ。

 コハコベは見た目以外はバジルの代わりにはならないが、ほんのわずかな青臭さがピザのアクセントになっているようだ。



 ソテーの方も問題なく美味しい。
 こちらはチーズがない分アミガサタケの風味と歯ごたえを感じられる。
 アミガサタケがヨーロッパで高く評価されるのは、クルミやアーモンドを噛んだ時のような心地よい香りがあるからなのだが、ノビルやタコにこの香りが移るとまた出色の味わいになる。



 アマチャヅル茶はわずかな青臭さとともに、名前の由来となった甘みがじわっと感じられて美味しい。
 冷たくしても美味しく飲むことができそうだ。

 やはり、当連載の取材、特に釣りをするときは誰かゲストをお呼びしたほうがよい結果が得られるようだ。
 小林先生、ご多忙の中しかもぎりぎりにお呼び立てしたにもかかわらず、快く引き受けてくださって本当にありがとうございました。とても助かりました。

 次回の取材は初夏、一年で一番獲物が多い時期だ。
 インパクトのあるものを狙っていきたいが、さてどうなるか......


 【次回は5月下旬更新予定です】

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駆け出し図鑑編集者。川崎在住の30代。2012年にブログ「野食ハンマープライス」を開設。海産物に野草、キノコ、虫など、ありとあらゆる変わった食材を入手して調理して食べてレポートするという、食材へのアグレッシブな探求心が話題を集め、現在では月間50万PVの人気を誇る。胃腸は弱め。

ブログ:http://www.outdoorfoodgathering.jp/

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