はじめましての方もそうでない方も、
ジセダイにお越し頂きありがとうございます。
編集長の今井雄紀です。
ほぼ毎月開催しているトークイベント「星海社新書夜話」。
星海社と縁の深い賢人・達人をお迎えし、その頭の中を拝見させてもらっています。
今回は、星海社新書『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立』発刊を記念しまして、
アジアITライターの山谷剛史さんが登場!
担当編集をして「奇人でしかない!」と言わしめる山谷さんの秘密に迫りました。
今回は「中国のインターネット史」がテーマ。フード&ドンリクは中華風にするのが筋ってものでしょう。
担当編集平林と、ジセダイ編集長今井とで、朝から池袋まで買い出しに行きました。
中国に行き馴れている平林と、行ったことのない今井との間では、早くも齟齬が……。
今井:ドリンク、一通りそろいましたね!
平林:だね。あとはおつまみを……。ひまわりの種でいいよね?
今井:え?
平林:え? ってなんだよ。ひまわりの種だよ。
今井:ひまわりの種って、ハムスターとメジャーリーガーのものじゃないんですか?
平林:(あきれ顔で)君は本当に何にも知らないんだな……。中国ではみんな食べてるから。
今井:うっそだー! さすがに騙されませんよ。ハム太郎やジーターの食べ物です!!
平林:(哀れみ顔で)もういいよ。遅れ気味だし、神楽坂へ行こう。
今回の会場、おなじみ「かもめブックス」が工事中ということもあり、かもめブックスの経営母体である鷗来堂の会議室をお借りしました。鷗来堂さん、いつも本当にありがとうございます!
開場直後から続々と集まる観客のみなさん。
入り口では、中国製ドリンクから好きなものを一つ選んで頂きます。
1番人気は、安定の「青島ビール」ですが、奇抜なデザインの謎ドリンクを躊躇無くセレクトする猛者も。
類は友を呼ぶ、奇人は奇人を呼ぶということなのでしょうか……。
そんな不安の中、イベントがスタートします。
今井:お集まり頂きありがとうございます。星海社の今井雄紀です。
平林:同じく星海社の平林です。
今井:今日は『中国のインターネット史』刊行記念ということで、著者の山谷さんにお越し頂いています。今は楽屋にいらっしゃいますが……。
平林:担当は僕なんですけども、今日は書籍の内容はもちろん、「山谷剛史」という人間について、皆さんに知って頂きたいなと思います。本当にちょっと……いい意味で変わった人なので……。
今井:ふふふ。では、さっそくお呼びしましょう! 山谷さん、お願いします!
(山谷さん、諸葛亮風のうちわを片手に、楽屋から登場)
山谷:みなさん今日はお集まり頂きありがとうございます。山谷剛史と申します。
平林:山谷さん、よろしくお願いします。
山谷:変な人だとかなんとか言ってましたけど、全然普通ですからね。
平林:普通じゃないですよ! 安宿で机がないからって、便器にパソコン置いて原稿書いてたりするじゃないですか? おかしいでしょ!
今井:き、きたない……。
山谷:蓋の上に置いてるんで清潔ですよ! じゃあお二人は腸詰食べないんですか? ウンコ通った管洗って食って、うめぇうめぇ言ってるじゃないですか! それに比べれば、全然まし!
今井:(どん引き……)
平林:(会場に向かって)みなさん、僕の言っていた意味が少しはわかっていただけたと思います。
山谷:今日は、中国およびアジアのITの面白さを伝えられたらなと思います。おそらく、中国のITというとTwitterもGoogleもFacebookも使えなくて検閲だらけで日本以上のガラパゴスだと思われていると思うのですが、彼らは別にそれを不都合に思っていないんですね。
今井:別に不幸ではない。
山谷:そう、民主化なんて割とどうでもいいわけです。民主化を望む人は、日本でいうなら極端な右や左の人みたいなもので、すごく少ない。あと、中国のインターネットって、市場規模で言えば、日本の何倍もあるわけです。中国のネットユーザーは6億5千万人います。
平林:日本が今1億ぐらいですから、ざっと6倍ですね。
今井:そっか、市場規模的にはよっぽど大きいのか……。
平林:日本がいくら西側サービスが使えると言っても、日本語サイトしか見なければ所詮1億人の世界ですよね。中国人は日本人より英語嫌いですけど、それでも6億5千万人の世界がある。日本のインターネットの方が狭いんじゃないですか?
山谷:その通りです。だからまず勘違いしないで欲しいのは、決して中国が「遅れている」わけではないということですね。「独立国」として別の体系を持っていますけど、小さかったり遅れていたりするわけではないんですよ。むしろ、今後、検閲システムなんかを各国に輸出していく可能性も十分にあると思います。そういう意味では先進国ですから。
今井:分野によっては、日本より全然進んでいるわけですね。
山谷:その通りです。例えば「小米」という会社があります。「シャオミ」と読みます。中国のスマートフォンメーカーなのですが、ここの販売戦略なんかは、日本人も学ぶところがあるんじゃないでしょうか。それまで中国人はガジェットを買う際、ガラスケース越しに、スペックを見比べて買う習慣しかなかったんです。ところが小米は違いました。
平林:一機種入魂で売ったんですよね。
山谷:そうです。多数のラインナップで会社を大きく見せるのをやめて一機種だけにし、店舗販売をやめてウェブ直販に変えました。こうすることで、高性能な商品を低価格で供給したんですね。あと、サイトもかなり綺麗に作りました。
今井:Appleっぽいですねー。確かに、日本のメーカーには出来ていないことです。
山谷:加えて、しょっちゅう「限定販売」をやるんです。すると、「予約のニュースが報じられマニアや業者が関心を持つ」→「予約開始からまもなく予約終了が報じられ、マニアや業者がさらに関心を持ち」→「しばらくしたらまた予約販売開始が報じられる」という流れが毎月繰り返され、話題になります。シャープやソニーに見習って欲しい部分ですね。
話題は山谷さんが持参してくださった中華ガジェットに移る。
一見どれも、普通だが……。
平林:まずはこれからいきましょうか! このニセAIBO! この辺のガジェット、しばらく星海社で預かってたんですけど、コイツ、夜中に急に鳴き出すんですよ……。
山谷:こいつはねー。ペットロボなんですが、自分で操作もできて……リモコンで動くんですよ。
今井:ペットなのに操作出来るんだ……コンセプトぶれぶれですね。
山谷:そういうところがねーいいですよね。
平林:このペコちゃんのパクリみたいなやつはどう使うんですか?
山谷:これはスーパーとかおもちゃ屋でよく見る商品なんです。学習ロボです。
今井:学習?
山谷:ボタンをこう押すとね、歌を歌ってくれるんですよ。「あいさつはこうしようね」とか、「数はこうやって数えるんだ」とか、そんな感じの「教え歌」をね。(山谷氏がボタンを押し、教え歌が会場中に響き渡る)しまじろうみたいなものです。
今井:しまじろう……。
平林:このミニiPhoneもやばいですよね。
今井:ちゃんと動いても、このサイズじゃ使えないでしょこれ。
山谷:いやいや、全然使えますよ! 僕、普通にSIMカード差してこれ使ってますからね。スマホ大型化時代に逆行するこのデザイン、最高じゃないですか? 会場の人も、ありだと思いますよね? そう思う方は手を挙げてください! (ちらほらと手が挙がる) ほらー!
今井:確かに、新しい可能性を探っているとも言えるのかも……。
平林:最後に、この話はしておかないといけないと思うんですが……本の最後でも問題提起した、あれについて。また真面目な話をしましょう。
今井:ああ、ISですね。
平林:そう、『中国のインターネット史』では、ISは「開かれたインターネットの弊害」としての面がある、という問題提起をしていますよね。
山谷:そうですね。彼らって、TwitterやYouTubeを使って宣伝活動をしていますよね。資金や義勇兵は、西側のネットインフラに依存して集めているわけです。
平林:でも、開かれたインターネットを正義とするなら、それはもう必然的に起こってしまうことでもありますよね。道具は悪用する人もいるわけですから。
今井:中国だと、ISは活動できないですよね?
山谷:そりゃもう、一発で検挙です。アカウントもすぐに消されるでしょうし。だから、先日「アメリカと中国が、IS対策で協調することで合意」ってニュースが流れたとき、GFWの技術を応用して、ネット上でISを閉じ込めるのかと思ったんですけど(笑)
今井:強制鎖国!(笑)
平林:でも、インターネットによるバラ色の未来を説いていた人たちは、知らん顔してないで、きちんと表に出てきて発言して欲しいですね。
今井:●●さんとかですね。
山谷:うん、今のは伏せましょうね〜。でも、本当にそうなんですよ。インターネットの未来は決してバラ色じゃなかった。それから、まだネットに触れたことがない人が、アジアやアフリカを中心に沢山いて、彼らにスマホ──最初に持つネットデバイスが彼らはスマホになると思うんですけど──が行き渡っていくのはまさにこれからなんですよ。
平林:ああ、人口的には……。
山谷:ものすごく多いですよね。彼らがスマホを持つことで生活がどのように変わり、インターネットにどんな変化が起きるか。今後も中国を中心に各国を回りながら、その歴史を見続けていきたいと思います。
平林・今井:本日はありがとうございました。
山谷:いえいえ、こちらこそ!
(会場拍手)
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