「飢えた子供の前で文学は無力か」
この言葉が発話者である大作家・サルトルの元を離れて「フィクションは飢えも渇きも癒やさない。ゆえに無価値だ」といったニュアンスで援用されるのを、見かけることがあります。
たしかにフィクションは、衣食住、人間の社会生活をなにも満たさないように見えるかもしれません。
フィクションは果たして必要なのだろうか......そんな疑いが鎌首をもたげたことはないでしょうか。
けれど、その暗鬱とした不安へ立ち向かう勇気を与えてくれる希望があることも、僕は知っています。
2006年、プレイステーション2用ソフト『.hack//G.U. Vol.3 歩くような速さで』発売直前、その開発会社である株式会社サイバーコネクトツー代表取締役社長の松山洋さんの元に、1本の電話が繋がります。
その電話は、病のために眼球摘出手術を受ける少年が『.hack//G.U. Vol.2 君想フ声』の続きを遊びたい、と望んでいることを告げるものでした。
ソフト発売は、手術の9日後----――そんな状況下で、松山さんは少年が視力を失う前に直接ROMを届けようと試みます。
この出来事を発端とするドラマを昨年の「奇跡体験!アンビリバボー」でご覧になった方も多いでしょう。
その仔細は、松山さんの著書『エンターテインメントという薬』(KADOKAWA)に綴られました。
このノンフィクションに感動するのは、難病の少年が暗闇の世界へ踏み出す最後に求めたのがゲームであった、ということに大きく依るのかもしれません。
しかしそれ以上に『.hack』というゲームを、フィクションを求める誰かの声がある----そんな当たり前のように見える出来事が、実は奇跡的な一瞬であることを伝えてくれるからだと、僕は思います。
そんな奇跡に立ち会った、『.hack』というゲームをつくった松山洋さんとはどんな方なのか?
松山さんが経営するゲームソフト企画・開発会社であるサイバーコネクトツーとはどんな場所なのか?
気になった方は、星海社新書『熱狂する現場の作り方 サイバーコネクトツー流ゲームクリエイター超十則』を読んでみてください。
この度、二刷の重版が決定いたしました!
「サイバーさんはめんどくさい」
『.hack』シリーズで名を上げ、『NARUTO -ナルト-』・『ジョジョの奇妙な冒険』で「キャラゲー」=「クソゲー」の常識を覆し、その異常とも言える働きぶりも相まって、業界内外から注目を集める福岡のゲーム開発会社サイバーコネクトツー。関係企業に「サイバーさんはめんどくさい」とまで言われてしまう妥協なき開発姿勢の源泉はなんなのか。世界累計約1300万本を売り上げる『ナルティメット』シリーズに見出した「成功の方程式」とは? 希代の経営者でありゲームクリエイターである著者が明かす、「熱狂する」現場と、「熱狂させる」ゲームの作り方。「誰でもできるけど誰もやらないことをやる。それだけ」。
松山洋さんの"熱さ"が、この本には凝縮しています。
読み終えたとき、先の奇跡は松山さん、サイバーコネクトツーさんが積み上げた不断の努力と飽くなき情熱のうえに訪れたものなのだと、知ることでしょう。
そんな松山さんが原作を務めるゲーム業界お仕事漫画『チェイサーゲーム』が現在「ファミ通.com」さんで連載中です。
こちらはなんと、サイバーコネクトツーが舞台!
松山洋社長、ご本人も登場します!
描かれるゲーム制作会社のリアルがもう身につまされるものばかりで、かなりしんどくなりますが、めちゃくちゃおもしろい!
(あと美園さんがかわいい、惚れざるを得ない)
そんな『チェイサーゲーム』をお読みの方も、ぜひ『熱狂する現場の作り方』を併読してください。
もっと濃厚に、松山洋さん、サイバーコネクトツーさんを知ることができます!
エディター
星海社エディター。
1994年生まれ、長野県岡谷市出身。三度の飯より読書が好きという、いかにも文系な嗜好だが、高校までは理系、根は体育会系。文芸誌『ファウスト』に触発され、編集者になろうと志し、早稲田大学文化構想学部文芸・ジャーナリズム論系に進学。文芸批評を学びつつ、文芸誌『早稲田文学』編集部にて学生編集員として勤務する。文学を勉強し、文芸誌編集を手伝い、書店と雑誌編集部でバイトする本まみれの日々を送った。大学卒業を控えた2017年1月より、星海社に合流。
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