星海社新書より『コミュ障のための面接戦略』が2/22(金)に発売されます。
本書はいつも緊張しがちで会話が苦手な、いわゆる「コミュ障」の就活生に向けた面接指南本です。
リクルートゼネラルマネージャー時代に2万人を超える就活生に面接を実施し、現在は採用・人事担当者へのトレーニング事業を手がけている著者・曽和利光氏だからこそ伝えることができる、面接官の思考を踏まえた面接攻略技術を袋綴じで収録しています。
本書で袋綴じにされていない1-3章では、日本の面接が抱える問題点を明らかにしています。
「面接」がいかに杜撰な採用手法であり、そして「コミュ障」にとって苦境であるか、発売に先駆けてその一部をお届けします。
面接という採用手法自体の問題点を指摘しましたが、日本ではさらに面接の精度や妥当性を下げてしまう要因があります。それは「人事のプロ」ではない人が面接官になることです。
面接は「人が人を裁く」という特殊な場面です。その責任を思えば、本来なら周到なトレーニングが必要になるはずのもの。
では、どのようなトレーニングが面接官に必要なのかというと、自分が持っている「人に対する偏見」を明らかにし、自覚するという訓練になります。
具体的には、1人の人間を複数の面接官でヒヤリングし、質問に対する答えから、それぞれがどう思ったかを突き合わせるのです。すると「自分はこういうタイプの人材を高く評価しがちだ」「こういうタイプの人材だと低く評価する傾向がある」といった面接官ごとの偏見が浮き彫りになります。そこで次の段階では、そうした偏見を削ぎ落としていきます。
ところが多数の応募者が殺到する大企業では、人事部のスタッフだけでは面接官をまかないきれず、一次面接に現場の社員が駆り出されることが少なくありません。多いのは入社3〜4年目くらいの若手でしょうか。トレーニングを受けていないどころか、ふだんは人事以外の業務にあたっているような社員が面接官になるわけです。そんな面接官が、無意識にコミュ障を排除する面接を実施してしまうことになります。
面接は世界中でさまざまな研究・検証が重ねられ、専門家たちの間で一定の合意が得られているような「面接官が面接時に押さえておくべき、基本中の基本」があります。しかし、普段現場の社員である面接官に、それは徹底されていないでしょう。
そこでダメ面接官がやりがちな「NG行為」の1つは「『事実を聞く』ことが徹底できていない」です。
面接で重要なのは「事実を聞く」こと。これは人種を超えた公正な採用が求められる国連の面接ガイドラインにも書かれている、面接の基本中の基本です。
ところが多くの面接官は、事実ではなく志望者の意見や解釈を聞いてしまいます。面接でよく質問される「あなたの強み・弱みは?」「5年後、10年後あなたはどうなっていたいですか?」といった質問は、志望者の意見や考えを聞いているに過ぎません。
こうした主観的な意見は、極端な話、その場でなんとでも言うことができるもの。ましてや「〇〇についてどう思う?」といった質問は、完全に無意味と言わざるを得ません。なぜなら、志望者の能力や素質にはまったく関係のない質問だからです。
ところが実際はそんな質問に対して、「おっ、うまいこと言うね!」と面接官に思ってもらえるような返しをする要領のよい学生が面接を突破してしまったりします。うまい答えをとっさに返す能力が評価されるような仕事など、世の中にはほとんどないにもかかわらず、なぜか面接に限ってはテレビ番組『笑点』の大喜利のようなトンチや機転が求められるのは、まったくナンセンスでしょう。
もう1つのNGが「面接官が自分の『心理的バイアス』を重視してしまう」ことです。
心理的バイアスにはいろいろな種類があります。たとえば、自分の思い込みや先入観を裏付ける情報ばかり収集して、それ以外のことを排除する傾向のことを「確証バイアス」といいます。「体育会系はガッツがある」「文化系は繊細である」といった思い込みなどがそれにあたります。
その人の持つ顕著な特徴に引きずられて、その他の特徴が歪められてしまうバイアスは「ハロー効果」と呼ばれています。美人とかイケメンという際立った特徴があると、それ以外の部分が矮小化されてしまうのです。
自分に似ている人を高く評価し、似ていない人を低く評価する「類似性効果」もバイアスの1つです。採用において「一緒に働きたいと思う人」という点を評価軸にしている企業がありますが、これは類似性効果の温床といっていいでしょう。
「(面接官が)一緒に働きたいと思う人を採りたい」ということは、裏を返せば「自分と合わない人は排除する」ということです。本来なら「こいつとは個人的に合いそうもないけど、能力があるからぜひウチに来て欲しい」とするのが正しい判断ではないでしょうか。ダイバーシティ(多様性)の推進とは逆方向の、似たようなタイプの人間だけが集まる組織になる可能性があります。
私は、面接官は特殊技能の1つだととらえています。体系化された論理的思考力の訓練を経ることで身につけることができる「スキル」です。
アメリカでは面接官のためのトレーニングが盛んに行われています。先にも触れたように人種差別の問題を抱えていることもあり、「なぜ落としたのか」「なぜ採ったのか」を客観的に説明できなければならないからです。
一方の日本においては、面接は「神秘的な目利き」によってなされるもの、といったイメージが根強いようです。「人を見る目」は天性のもので、後から身につけられるものでないという思い込みから、トレーニングで技術を習得するという発想にならないのでしょう。そのくせ「面接なんて人と喋るだけでしょ? 誰かと会話するなんて、そんなの毎日やってることだから」と、非常に安易にとらえている人も少なくありません。
こうなってしまう原因について、私は「面接」という言葉自体が悪いのではないかと考えています。面接という言葉を分解してみると「面を接する」――つまり「人と会って喋る」だけの行為と解釈されてしまい、簡単で日常的な印象を抱かせてしまうのではないでしょうか。
対して英語では、面接は「interview」です。インタビューとなると特殊なスキルが必要な印象になりますから、今後の就活においては「面接」ではなく「インタビュー」と表現を変えるべきなのかもしれません。
ともあれ、インタビュースキルの基本は、志望者の「事実」を聞くことが第一。そして、次に重要なのが「行動パターン」「思考パターン」を見極めることになります。これについて、私はもっと砕いて「できそうか」という言葉で表現しています。仕事という機会を与えた際にどの程度のことが「できそうか」、目の前で話している人材の「行動パターン」「思考パターン」を読み解くわけです。
ところがダメ面接官は、プロセスから「できそうか」を予測するのではなく、「できたこと」「結果」そのものに注目してしまいます。あるいは「その経験から学んだことは何ですか?」などと、面接のNG行為である「意見」や「解釈」を聞いてしまう。話のうまい学生なら、主観的なことをその場でそれっぽく語るのは得意とするところ。「大喜利」というのは極端な表現に聞こえるかもしれませんが、大なり小なり話術や機転=「コミュ力」を判断基準としてしまう面接が横行してしまうのです。
星海社新書『コミュ障のための面接戦略』
著者:曽和利光
ISBN:978-4065151570
定価:1100円(税別)
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「面接コミュ障」たちよ、集え! 君たちに面接突破の武器を伝授する。
曽和利光 × 中川淳一郎 トークイベント
日程:2019年3月26日 (火) 時間 19:00~20:30 開場 18:30~
登壇者:曽和利光さん、中川淳一郎さん
料金:1,350円(税込)
定員:50名様
会場:青山ブックセンター本店 店内小教室
お問合せ先:青山ブックセンター 本店 電話・03-5485-5511 受付時間・10:00~22:00
チケット販売:こちらのサイトにて受付中
*イベント概要
星海社新書『コミュ障のための面接戦略』は、これまで2万人を超える就活生に面接を実施してきた著者だからこそ伝えることができる様々な「面接ハック」をまとめた、既存の就活対策本とは一線を画した面接指南本です。
緊張しがちで会話が苦手な、いわゆる「コミュ障」の方々は、とりわけ就職活動における「面接」という場面で苦戦を強いられることが多いのではないでしょうか?
しかし、「面接」は人を判断する精度が低いとデータ的に証明されているレガシーな採用手法なのです。
現状の就活の問題点や仕組みをお話ししつつ、「面接」という精度の低い採用選考手法によってみなさんの貴重な才能を埋もれさせないために、みなさんへ具体的かつ実践的な面接突破法を伝授します。
・面接となると絶対に緊張してしまう。
・社交的でなく、コミュ力や話術に自信がない。
・勉強ばかりして、サークルもバイトも頑張ってない。
・短所ばかりで長所が思い当たらない。
・アピールするような実績や成功の経験がない。
そんな「コミュ障」でも問題ありません。
面接の本質と技術(コツ)を掴めば、必ず内定できます。
そして今回、不安まみれになる就活生の肩の荷を降ろしてくれる就活本『内定童貞』(星海社新書、2015年刊)を上梓いただいた中川淳一郎さんをゲストにお招きします。中川さんからは、人生における「就活」の何たるかを喝破していただき、面接に怯える就活生の不安を消し飛ばしていただきます!
就活生のみなさん、肩の力を抜いてどうぞお気軽にご参加ください。
エディター
星海社エディター。
1994年生まれ、長野県岡谷市出身。三度の飯より読書が好きという、いかにも文系な嗜好だが、高校までは理系、根は体育会系。文芸誌『ファウスト』に触発され、編集者になろうと志し、早稲田大学文化構想学部文芸・ジャーナリズム論系に進学。文芸批評を学びつつ、文芸誌『早稲田文学』編集部にて学生編集員として勤務する。文学を勉強し、文芸誌編集を手伝い、書店と雑誌編集部でバイトする本まみれの日々を送った。大学卒業を控えた2017年1月より、星海社に合流。
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