ごめんなさい。
これほどの躍進は考えてもみなかったことでした。
というか、世界基準を持ち込んだハリルホジッチ氏をわけのわからない論理で切り捨てた組織によって、オールジャパンという錦の御旗のもとに急ごしらえされたチームが、世界と渡り合えるはずがないと思っていました。
特に、グループステージから戦術的に洗練された熱戦の数々を見せられたあとには。
それでいいと思っていなかったといえば嘘になります。
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今回のW杯には複雑な気持ちを抱えながら向き合わざるをえないことは、あの4月9日からわかりきっていました。
だから「JFA」と「代表チーム」は別ものだと自分に言い聞かせつづけてきたし、もちろん代表チームのことはたしかに応援しています。
とりわけ個人的には、原口元気選手。
同じ91年生まれとして、小学生時代から一方的に名前を知っていた(「江南南の原口元気」、「浦和JYの原口元気」......)同学年のスーパースターだったので、彼が(紆余曲折を経ながら)W杯のピッチに立っている姿はとても誇らしく映ります。
けれどやはり、「ハリルホジッチ・プラン」の心臓部として、左サイドの上下動を90分間繰り返し相手を制圧するところが見てみたかった。
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ここまで、本当に見事な戦いぶりを見せてもらっています。
それを心底楽しめていたら、喜べていたら、どれだけよかったことか。
得点したとき、試合終了の笛が鳴ったとき、握りこぶしはもう15cm高く掲げているはずでしたが、どうしても少しセーブがかかってしまいます。
もし負けていたとしても、この3年ないし4年の集大成として、清々しい悔しさとともに楽しめていたように思います。
清々しい悔しさはすぐには無理か。
とはいえいずれにせよ、得られた結果は、勝敗はどうあれきちんと顧みて日本サッカーの今後に繋げられるものになっていたはずでした。
その機会が失われてしまったこと、そしてその損失をもたらすまでの意思決定プロセスのまずさ、不誠実さこそ、解任劇の問題の本丸だと思っています。
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できるのは、勝てば官軍と黙り込まされるのではなく、たとえ優勝したとしてもあのような解任はダメだったと検証をつづけること。
そして、博打に勝った成功体験の中毒になることも、博打に勝っただけだと一笑に付すこともせず、試合を丹念に分析して後代に残せるものを取り出し、共有すること。
特に後者のような理念のもとで、『砕かれたハリルホジッチ・プラン 日本サッカーにビジョンはあるか?』(星海社新書)でもその手腕を遺憾なく発揮した五百蔵容さんに、新著『ロシアW杯サッカー日本代表 全試合戦術完全解析(仮)』を書いていただいています。
(常識が一切存在しないスケジュール、ほんとすみません......)
ロシアW杯での日本代表全試合を徹底的に分析するとともに、それは大会を通じて見えたサッカーの世界的な潮流とどう関わっているか、ハリルホジッチたちの仕事とどう繋がって(あるいは切れて)いるかを明らかにする。
そういう一冊になると思います。
明日のポーランド戦をふまえて、グループステージ突破の場合には8月に、敗退の場合には7月に、同じく星海社新書より刊行予定です。
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以下、もうちょっと告知です。
すでに敗退の決まったポーランドがどのような編成、メンタリティで臨んでくるかはわかりませんが、ポーランド戦や来るべきラウンド16の予習に、グループステージの復習に、未読の方は『砕かれたハリルホジッチ・プラン』をまずどうぞ!
それから、7月4日(水)、高円寺のスポーツ居酒屋KITEN!にて、グループステージ3試合(と勝ち進んだ場合はラウンド16の1試合)をどこよりも早く深く解析するイベントをやります!
登壇者は、五百蔵容さんと、五百蔵さんの盟友である作家・中村慎太郎さん。
詳細とご予約はこちらから。
ぜひお越しください!
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一貫した強化指針のもと、才能豊かな選手がつぎつぎ育っていく。
映像メディアも文字メディアも、サッカーの本質に切り込んで、より広く深く魅力を伝える。
代表は世界のトップクラスへと躍り出て、Jリーグは戦術、インテンシティあらゆる面で成熟したもっとおもしろいコンペティションになる。
そんな日を夢見ています。
星海社はサッカー本専門の出版社ではないし、僕もプロパーのサッカー本編集者ではありませんが、優れた仕事を積み重ねてこられた専門媒体に敬意を表しながら、サッカーにめちゃめちゃ興味があるわけではない方にもアプローチできる「新書」の強みを活かして、草の根からやっていこうと思います。
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