「奥の細道」の俳句から天気図を再現!
日本人の多くに親しまれている芭蕉の「奥の細道」。江戸から最終地・大垣までの5カ月の旅で詠まれた俳句には、晩春から秋までの気象変化が巧みに記されている。これらを気象の観点から捉えるとどうなるか。「その時降った雨が梅雨の雨なのか、夏の夕立なのか」「この晴れは梅雨の晴れ間なのか」「海は荒れているのに空に天の川が見えるのはなぜなのか」......。長年にわたりNHKのお天気キャスターを務めた気象予報士の草分けである著者が、芭蕉の俳句に込められた季節感を天気図で再現しながら読み解いていく。新鮮な「奥の細道」を浮かび上がらせる実験的試み。
本文より
荒海や佐渡によこたふ天河(旧暦7月4日、新暦8月18日)
本来夏の日本海は非常に穏やかな海であり、多くの海水浴場がある。一方、この句では海は荒れているが空には天の川が見えていることから快晴である。この2つを満足させる天気図は以下のようになる。
❶前日に日本海西部を小さな台風が北上し、海はしけ模様になる。
❷翌日台風一過で晴天になるが、海には高波が残っているという状況である。
目次
第1章 江戸時代の気候と旅の準備
第2章 深川からの旅立ち
第3章 松島から平泉へ
第4章 初めての日本海の旅
第5章 旅の終わりの北陸へ
第6章 気象と季語
村山貢司
気象予報士
1949年東京生まれ、都立立川高校、東京教育大学を経て日本気象協会に入社。NHKテレビの気象解説を20年間担当。気象予報士第1回合格。専門の気象だけではなく、地球環境、健康、経済、エネルギーなど多方面で活動。紫峰山岳会に所属し、山の天気の著書もある。現在は気象環境研究所主任研究員として、環境省、林野庁、東京都などの委員を務める。主な著書に『異常気象』『気象病』『花粉症の科学』『お天気ジンクス』がある。
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