歌麿、写楽、北斎の仕掛け人「蔦重」とは?
蔦屋重三郎なくして江戸文化を語ることはできない。吉原大門口で細見屋(遊郭案内書の販売所)を開業していた重三郎は、勇躍出版に乗り出すと浮世絵や娯楽本(黄表紙、滑稽本など)の出版で斯界のトップに立つ。企画力に優れた重三郎は、南畝、京伝、馬琴ら著名な作家と交流し、才能溢れる浮世絵師を次々と世に送り出した。なかでも歌麿には美人画を描かせ才能を開花させ、わずか10ヶ月という活動期間の後に姿を消した写楽をデビューさせた。田沼意次から松平定信へと幕政が激変する時代に現れ、絶えず流行の最先端を追い掛け、人々の望むものを出版して江戸文化の粋を開花させた重三郎と江戸の出版文化の実態に迫る。
目次より
第一章 蔦屋重三郎と吉原
蔦屋重三郎の生きた時代
江戸っ子気質
重三郎の関係史料
石川雅望と大田南畝
重三郎の生涯
遊郭の源流
発展した傾城屋
三大遊郭の誕生
地方に波及した遊郭
吉原細見とは
版元になった重三郎
版元としての処女作
版元になった裏事情
出版点数を伸ばす
凋落した鱗形屋
復活した蔦屋
コラム❶ 吉原と遊女のことなど
遊女と遊ぶ相場
遊女との遊び方
遊女になった女性たち
遊女の一日
第二章 狂歌本への進出
日本橋通油町への進出
富本節、往来物の刊行
富本節と吉原
出版界の再編
狂歌の時代
天明狂歌壇の顔ぶれ
狂歌熱の広がり
狂歌壇での対立
狂歌界への参入
大ヒットした狂歌書
狂歌絵本の成功
第三章 黄表紙と出版統制
黄表紙の時代
重三郎のさまざまな支援
三作品の内容
暗い世相のはじまり
政治を風刺した作品
『文武二道万石通』の世界
発禁となった『悦贔屓蝦夷押領』
寛政の改革の骨子
出版への統制
幕府による弾圧
摘発された『天下一面鏡梅鉢』と『黒白水鏡』
山東京伝の登場
断筆を考えた京伝
京伝の三部作
重三郎と京伝の処罰
それぞれの事情
コラム❷ 発禁処分となった書物
天明・寛政年間に発禁処分となった書物
林子平とは
『三国通覧図説』と『海国兵談』
第四章 喜多川歌麿と浮世絵
浮世絵の発達
菱川師宣と鈴木春信
重三郎が交流した絵師
勝川春章とは
北尾政美とは
喜多川歌麿と重三郎
歌麿の狂歌絵本
美人画の時代と鳥居清長
歌麿の美人画
歌麿の最高傑作
冷えていった二人の関係
歌川豊国の登場
重三郎の対抗策
第五章 東洲斎写楽の登場
歌舞伎のはじまり
成熟していった歌舞伎
東洲斎写楽とは何者か
研究の進展
写楽の作風の変遷
二十八作もの作品
江戸市中に広まった評判
崩壊した写楽の画風
第六章 重三郎の最期
苦しかった経営
滝沢馬琴とは
馬琴と京伝・重三郎との出会い
十返舎一九と重三郎
京伝と歌麿
重三郎の最期
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