皇室の学問研究が顕す、もう一つの日本近代史!
昭和天皇が、当時まったく無名、無位無冠だった南方熊楠に会いに、遠路、軍艦で紀州に出かけたことから、何かが始まった
----荒俣宏(博物学者)
学問でしか自己実現できない? 皇族の"私的関心"が明らかに!
----辻田真佐憲(近現代史研究者)
天皇や皇族は多忙な公務の傍らで学問研究に励んできた。例えば粘菌学者の昭和天皇と魚類学者の明仁上皇は、親子二代で世界的博物学会・リンネ協会会員に名を連ね、山階宮家の山階芳麿が作った山階鳥類研究所は鳥学の権威として約一世紀の歴史を持つ。しかし私的な行為である天皇や皇族の研究は、実際には公的な行為と密接に関わっている。
平成の天皇が魚類学の知識を活かし、食糧事情改善のためブルーギルを日本に持ち帰ったことはその好例である。なぜ天皇や皇族はかくも学問に尽力するのか、その理由は戦後の特異な皇室制度と不可分だ。皇室の学問研究を紐解くことは、戦後日本の栄華と矛盾を直視することに他ならない。
小田部雄次
小田部雄次(おたべゆうじ) 歴史学者
1952年東京生まれ。
85年立教大学大学院文学研究科博士課程単位取得。立教大学非常勤講師などを経て、静岡福祉大学名誉教授。日本近現代史が専門で、華族や皇族をテーマに多くの研究成果を発表している。
主な著書には、『徳川義親の十五年戦争』(青木書店)、『梨本宮伊都子妃の日記皇族妃の見た明治・大正・昭和』(小学館)、『華族 近代日本貴族の虚像と実像』、『皇族 天皇家の近現代史』(いずれも中央公論新社)などがある。
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