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HOME > 新人賞 > 新人賞投稿作品 > 鬱でも必死に会社に行っている人のための教科書

新人賞投稿作品

鬱でも必死に会社に行っている人のための教科書

優しい名無しさん
2013年01月09日 投稿

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もし朝起きたら鬱病になっていたとしても、もうろたえないでいられますか?
いま鬱病の人にも、これから鬱病になる人にも必携の鬱病指南書の登場です。

カテゴリ

ビジネス

内容紹介

10人に1人は罹患すると言われるうつ病。最早他人事ではありません。


本書は実際にうつ病を罹患し、無職を経て社会復帰を果たし、5年間大過なく病と付き合い続けた著者が送る、鬱病の指南書です。

目次案・語りたい項目

序章 それは突然始まった
第一章 根拠なき鬱病概論
第二章 急性期と回復期
第三章 社会復帰と再発防止
第四章 永遠のリハビリ

書き出しの第1章

ある朝目が醒めると見知らぬ場所にいた。
正確には同棲中というか転がり込んで2年になる彼女の家のロフトだから、慣れ親しんだ光景の筈なのだが、不思議と知らない場所に居るような感覚なのだ。
何だかそわそわして落ち着かず全く熟睡感が無いのでもう一眠りしたいところだが、転職したての俺が初っ端から遅刻を噛ますのも良くないなと、目覚ましを止めて無理やり身体を起こす。
今日は金曜日。一日乗り切れば休みだ。
しかし、やはりおかしい。
何故だか異常に不安なのだ。
どういう訳か非常に緊張していて、みぞおち辺りが重く、口も乾く。
ロフトから梯子を使って降りる。何故だかとても恐ろしい。怖いのである。
風呂に入れば気分も変わるだろうと寝間着を脱ぎ捨ててユニットバスの個室に入る。もの凄い閉塞感に恐怖を覚える。蛇口をひねりシャワーから水が飛び出す。それに当たることが何故だか怖い。
おかしい。明らかに何かがおかしい。
風呂から出てスーツに着替える。はたと戸惑う。3年間ほぼ毎日同じ手順で身に着けていたスーツの着方が分からないのである。正確には意識しないと着れないのである。ネクタイがうまく結べず何度もやり直す。上着に定期入れをたった今しまったかどうか思い出せなくなり、何度も確認する。
明らかに自分自身に異常な事態が発生しているのだが、それが一体何なのか全く分からない。だからまずは平静を装う。
毎朝ギリギリの時間に起きるから朝食はとらない。
彼女が起きてくる。いつものように玄関口まで見送ってくれる。
外に出る。とても恐ろしい。
2月の冷気が容赦なく襲う。痛い。真冬の日差しが白すぎて痛い。
駅までの道々が初めて来た場所の様でとにかく全てにビクビクする。
電車に乗るのが怖い。
仕事場までの道々、同僚に声を掛けられるが、怖いのである。席に付きPCの電源を入れる。与えられた新人向けの課題を開始しようとする。しかし、全く集中できない。というか、椅子にじっとしている事が耐えられないくらい不安で不安で仕方がないのだ。
画面を見ていても文字が読めない。全然仕事にならない。
喫煙所とトイレに何度も逃げ込む。
得体の知れない不安感と焦燥感がずぅっとある。
頼む!時間よ早く過ぎ去ってくれ!
やっとの思いで定時が過ぎ、逃げるように居候先に戻る。
彼女はまだ戻っていない。取り敢えず一眠りしよう、と横になる。
全く眠れない。目が冴え渡っていて、全然眠くないのである。
一人暗闇の中で例の不安感と焦燥感に怯えながら布団に包まり震えていた。

結局その晩は一睡も出来なかった。
幸いな事に食欲だけはあったのだが、たらふく晩飯をかきこんだものの睡魔が来ない。
一晩中悶々として何度もタバコを吸いに外に出た。
今日が土曜だったことにどれだけ感謝しただろう。
日が昇る。昨日と同じように全てが恐ろしく、昨日よりもみぞおちが重く、明確に痛みを伴って辛い。歩くことも億劫なのだ。気晴らしに散歩をしてみるのはどうだろうか、と彼女と二人遊歩道沿いに隣町まで歩くのだが、気晴しどころか辛すぎて拷問の様だ。
その晩も同様に眠る事ができない。2晩徹夜である。
明らかに進行形で何かの病が自分を蹂躙していることを認めざるを得なくなった俺は当惑する。
さて、一体何科に掛かるのかと。
そこで直感的に閃いたのが、脳のイメージだった。
恐らくこれは、精神的なものだろうと、うすうすは察していたが、今それを承認したのである。

月曜日朝一番で心療内科に出向く。初診はどこも小一時間問診がある。
俺は言った。得体の知れない焦燥感と不安感に四六時中苛まれて昼は何も手に付かないし夜は全く眠れない。とにかく助けてくださいと。
処方はごく単純に頓服と安定剤だった。曰くこれを服用して様子を見ろと。
ふらふらになりながら帰宅し、頓服を1錠服用してみる。
するとどうだろう。
ものの10分で久しぶりの睡魔に襲われ、これまで経験したことも無いくらい安堵に包まれた幸福な眠りに落ちたのだ。

あれから丸8年が経とうとしている。
種類も量も減ったが、今でも薬は飲んでいる。
勿論、今でも調子が悪い日はある。いや、寧ろ調子が悪い日の方が多いくらいだ。
特に2月は日照時間も少なく厳しい期間だ。
当時の診断書には中程度の鬱病と書かれていた。
始業時間の早い勤め先だから、6時には起きてシッカリと朝食を取り、犬と遊んでから、手製の弁当を渡す妻に見送られて家を出る。
仕事は早いほうだからほぼ毎日定時過ぎには会社を出る。
有難い事に本職でも日本の平均給与以上を頂いている。
3年前に購入した自宅マンションまではおよそ1時間。
通勤時間は仕事の他に運営している写真団体の業務や、自分の作品の制作に集中する。
今や写真団体は日本有数の規模にまで成長し、自分自身はほうぼうに連載を持つ程だ。
週末は展示会の準備や設営に忙しい。日本全国どこでも出かけている。
気心が知れてきた仲間には自己開示をするのだが、ほぼ100%、嘘だろう、と言われる。
だがしかし恐らく俺は明らかに鬱病に罹患中であり、治療を継続しながら生活している、と思う。

本当の鬱病なら仕事なんかできないだろう、ましてや趣味の活動で全国を飛び回る事なんかできるはずがあるか、とお叱りを受けそうだが、現にやっている。

俺は休職ではなく退職した。
試用期間だったし、迷惑を掛けたくなかったからだ。
年収100万円UP。斜陽業界からweb業界への華麗なる転職成功から2週間で無職。
数ヶ月で貯金を使い果たし、親の脛をかじった。8ヶ月間の寝たきり生活。半年間のフリーター生活。1年半のwebディレクターとしての激務を経て、屈辱にまみれた長い長いリハビリ期間を終えたのだろうと思う。今は、屈辱的ではないけれども、これから永遠に続く長いリハビリ期間の黎明期に立っているような気がする。先は見えないけれども別に何とも思わない。普通だから。

この10年で友人知人を含め数多くの鬱病罹患者を見てきた。
個人的な感触では社会復帰できている人間は5人に1人程度の割合じゃないかと思っている。
それ以外は残念ながら被扶養人生を送っているようだ。

いわゆる治らない奴というのには共通点があると思う。
・適切な治療を受けていない
・なんでも自分以外のせいにする
の大きく2つだ。
それをやめたら案外簡単に社会復帰まで持っていけるんじゃないかと思っている。
少なくとも俺はそうだったから。

俺は医者では無いし臨床心理や精神保健福祉系の資格も持ってない、素人だ。
だから俺の話に根拠があるかと言えば、ない。
しかし現に10年近く鬱病を患いながら、底辺からふつうかふつう以上(だと思ってる)まで生還した鬱病の達人だという自負がある。
係る理由で、今まさに鬱病になった方は先ずはしかるべき場所でしかるべき処置をされた上で、そういう意見があるんだ、という程度に聞いてもらえればいいと思う。もし気が向いたら俺の考えを取り入れて治療に活かして貰えれば嬉しい。
またこれから鬱病になる方や鬱病患者の友人知人恋人家族は、うつ病がどういうもので、一人のうつ病患者がどういう経緯を辿ったのか、参考にしてもらえればと思う。

正直なところ、鬱病は治らないと思う。

というか治る治らないの尺度で考えていても誰も得をしない。
その辺を超越達観して、鬱病である事を所与としてしまったほうが明らかに生きやすいと思うのである。
それでもって、永遠に続くリハビリ期間をどう有意義に過ごすか、
これが最大のポイントなんだろうと思ってる。

そんな話をしよう。

応募者紹介

優しい名無しさんさん

病歴8年の33歳会社員(広告代理店勤務)

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