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HOME > 新人賞 > 新人賞投稿作品 > 人間リスクマネジメント  ~「援助交際」から学ぶストーカー・DV対策~

新人賞投稿作品

人間リスクマネジメント  ~「援助交際」から学ぶストーカー・DV対策~

阿川 悠成
2014年06月28日 投稿

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「あの人と絆を深めて本当にいいのだろうか?」
病的なまでに絆を礼賛する現代日本だからこそ知っておきたい、絆を結んではいけない相手の見極め方。

カテゴリ

教養

内容紹介

無縁社会、孤独死、ニート、ひきこもり、スネップ、ぼっち・・・。人とのつながりは重要で大切。今更言われなくても誰もがわかっている。だが一方、人とのつながりが生む不幸であるストーカーやDVの認知件数が過去最多を更新し続けているのも現実だ。安心で安全、かつ快適な人間関係を築き楽しむためにこそ知っておきたい、危険人物の見極め方や関わり方。心の専門家である臨床心理士が提言する対人リスクマネジメントである。

 

目次案・語りたい項目

ステージI【出会い】 僕はあなたを査定する
 ・趣味は人間観察です
 ・あなたはもう、査定されている
 ・生きるためには“力”が必要
 ・“力”がないとどうなるのか
 ・不快なものを抱える“力”
 ・メールの返信がないと情緒不安定
 ・電話の第一声が「いまどこ?」

ステージII【口頭注意】 対人リスクマネジメント
・独身無職の社会適応
・「あなたのこと信じてる」と言う人間はいろいろ疑え
・「私のこと信用してないの?」と言う人間は信用するな
・「妻に逃げられちゃって」と言う人間からは全力で逃げろ
・エリマキトカゲはなぜエリマキを広げるのか?
・「悪気はなかった」と言う人間はなぜ最悪なのか?

ステージIII【警告】 援助交際の仕組み
 ・「建前を言うしかない」という本音
 ・性善説も性悪説も間違っている
 ・僕たちの心にあるATフィールド
 ・交際終了を目指す『援助交際』
 ・蛙と蛇は出会ってはいけない
 ・僕たちやさしい詐欺グループ 

ステージIV【逮捕】 加害者にならないために
・恋愛をする自由なんてない
・人のセックスを笑え
・魔法使いは村一番の勇者
・“ぼっち”という選択
・人が正社員である本当のメリット
・“力”なき人間に出来ること

ラストステージ【再発】 かつてストーカーだった川島くんへ

書き出しの第1章

はじめに
 
 ストーカーがとまらない。
 2000年。『ストーカー行為等の規制等に関する法律(通称:ストーカー規制法)』が施行された。
 このストーカー規制法に基づいた全国の警察によるストーカ被害の認知件数は2013年に年間21089件となり、過去最多を更新。単純計算で一日あたりおよそ57名の人間が「あなたはストーカーだよ」と公式認定されている。
 DV(ドメスティックバイオレンス)もとまらない。
 2001年。『配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(通称:DV防止法)』が施行された。
 このDV防止法に基づいた全国の警察によるDVの認知件数は2013年に年間49533件となり、過去最多を更新。単純計算で一日あたりおよそ136名の人間が「あなたはDV加害者だよ」と公式認定されている。

 これらの事実が示唆しているのは、
「世の中には他人に平気で危害を加える人が、わりとふつーに存在している」
というミもフタもない現実だ。

 本屋に行くと『人間関係を良くする100の方法!』や『一日5分で人付き合いがうまくいく!』など、人間関係について書かれた書籍は溢れている。多くの人が人間関係に関心を持ち、良好な人間関係を築こうと時間とエネルギーを向けていることが窺える。
しかし、『良好な人間関係を構築し維持していく中で、危険人物をうまく避けるための知恵』について書かれたものはまったくといっていいほど見当たらない。
 なぜ、ないのか?
 それは、そのような主旨で書かれた本は、日々の暮らしの中で僕たちが直視せずにやり過ごしている不快なものが盛り込まれることになるからである。幾重にオブラートを重ねたとしてもごまかしきれるものではない。そのような内容の本は読者にとっても耳の痛い話となる可能性が高く、読んでいて決して愉快なものではないため、売上が期待できない。ただでさえ出版不況なのに、はじめから売れないとわかっている本をだす出版社はないであろう。

 だが、『危険人物をうまくかわしながら他者と関わる知恵』は、強迫的なまでに“絆”を強調せずにはいられない現代日本ではとても重要な社会的スキルとなる。僕たちは、むやみやたらと“絆”を結ぶ前にやることがある。それは、“絆”を結んではいけない相手の見極め方や、適切で安全な“絆”の結び方を知っておくことだ。

 唐突だが、僕は『援助交際』を仕事としている。
『援助交際』といっても女子高校生が身体を提供する見返りとして金品を援助してもらう、という類のものではない。臨床心理士という心の専門家として、心が病んでいる人たちを『援助』することを生業としている。いわば『心の援助交際者』である。

 『心の援助交際者』であれば誰もが抱える大きな悩みの一つが、交際相手との距離感だ。交際相手がこちらとの距離をつめようとしてくることはいつもどおりの非常事態。プライベートなことをあれこれ詮索し、連絡先の交換を希望し、面接時間を引き延ばそうとし、面接時間外に会いたいと訴え、職場からの帰り道で待ち伏せをする。

 『心の援助交際者』として人と関わる以上、交際相手がそのような心理状態になるのは想定の範囲内であり、驚くことではない。
 心の援助を必要としている人というのはほぼ100%人間関係を苦手としていて、一般社会での人付き合いが困難であるというケースが大半を占める。また、語弊を承知で言うならば、『元々性格が偏っていて一般社会で相手をされなかったためにひねくれ度合いがパワーアップし、益々誰からも相手にされなくなってしまった人物』と化していることもままある。そのような人と関わるために『援助交際者』は、一般社会での人付きあいよりも『やさしくて心地よい存在』であるフリをする。そうでないと関わってもらえない、関わることが難しい。そして、関われなければ自分たちの仕事である心の援助をすることが出来ない。つまり、『援助交際者』のやさしさはあくまで業務遂行上、欠かせないスキルであるから身につけ醸し出されているものなのだが、相手からしてみたらそんな事情は知ったことではない。
「優しい○○さんともっと話したい!一緒にいたい!仲良くなりたい!」
となるのは自然といえば自然の成り行きとも言える。

 だが、「自然の成り行きだからしょうがないよね」と手をこまねいているわけにはいかない。『援助交際者』は交際相手と親しくなりたいわけではない。友達になりたくて会っているわけではない。恋人になりたいとは微塵も思っていない。あくまで援助をするために交際相手と関わっている。交際相手とポジティブな関係を保ちながら、かつ相手から踏み込まれすぎることがないように、精神科病院や福祉現場などでは『援助交際』を円滑に遂行していくためのノウハウが蓄積されている。それは、学校や家庭では教えられることのない人付き合いの知恵であり技術である。

 究極の接客業である『援助交際』の現場で練られてきた対人スキルこそが、ストーカーやDV等の被害に遭わないために役立つと僕は確信している。
 「良好な人間関係を築いていきたい」と言う人を僕は全力で支持し尊敬する。『危険人物と関わらないためのスキル』を提言することで、ささやかな応援の証としたい。


第1段階【出会い】 僕はあなたを査定する
◆趣味は人間観察です
 「私の趣味は人間観察です」、「電車の中で人間観察するのが好き」と言う人は少なくない。そうした人たちはあくまで趣味として人間観察を行っているので、観察の結果が当たろうが外れようがなんら問題はない。趣味は当人が楽しめさえすればそれでいい。観察対象に困ることはないだろうから、大いに料金フリーの趣味として人間観察を楽しんでほしい。
 だが、プロが仕事として人間観察を行う場合、観察結果が的外れなものとなるわけにはいかない。

◆あなたはもう、査定されている
 精神科医、看護師、保健師、臨床心理士、精神保健福祉士、社会福祉士、ケースワーカー、ソーシャルワーカー、ケアマネージャetc。心の援助を担う職種は多岐にわたるが、いずれの職種であっても、援助の入り口で必ず行う作業が人間観察だ。業界内においてはアセスメント、あるいは査定と呼ばれている。
 査定は『援助交際』に限ったものではなく、様々な分野でごく日常的に為されている作業である。不動産の営業マンは客の懐具合を査定し、婚活中の独身女性は婚活パーティーで出会う男性が自分にふさわしいかどうかを査定する。企業の採用担当は入社希望者の適正を査定し、入試の面接官は目の前の生徒を入学させてよいものかどうか査定する。職場の上司は部下の働きぶりを査定し、新人賞を募集する出版社は応募された原稿が商業出版に値するか査定する。
 僕たちはごく日常的に誰かを査定するし、また、誰かから査定されてもいるのだ。
 では、『援助交際者』は相手のなにを査定するのか?
 端的に述べるなら、これから交際する相手の“力”を査定する。

◆生きるためには“力”が必要
 僕たちが社会で生きていくためには様々な“力”が要求される。
 学校や職場で周囲とうまくやっていくためにはコミュニケーション力や環境適応力などが欠かせない。志望校に入学するためには適当な学力や元々の知的レベルが相応であること、たいていの人にとって面白いとはいえない受験勉強を継続するための集中力や忍耐力が求められる。読書を嗜むにはIQ70以上の知能指数があることや、ある程度の文章読解力があること、そしてなにより本を手に取るだけの知的欲求や好奇心や意欲といったものが必要となる。
 僕らの為すあらゆる行動やその結果は、その人の持つなんらかの“力”の発現の末に生じているのだ。
 僕はあなたが何者だか知らない。
 あなたは学生かもしれない。会社員かもしれない。大手企業の役員かもしれない。医師や弁護士、公認会計士等の専門職かもしれない。熾烈な競争を勝ち抜き定年までの安定を勝ち取った公務員かもしれないし、組織に縛られずカフェの開店時間に縛られるノマドかもしれない。子どもと旦那の世話に奮闘する専業主婦かもしれないし、人手不足の影響で待遇改善真っ只中の牛丼屋のアルバイト店員かもしれない。
 もしあなたが現状に不満を感じながらもそれなりに自分の人生をメイク出来ているのなら、あなたには社会からの要請に応えるだけの“力”が備わっているという何よりの証明となる。
あなたが今いる場所は、あなたの“力”でたどり着いた場所だ。

◆“力”がないとどうなるのか
 もちろん“力”の多寡によってたどり着ける場所は異なる。では、現代日本であらゆる“力”が極端に不足するとどうなるのか。答えは極めてシンプル。生活保護受給者となる。生活保護受給者の自己責任云々の話はここでは触れないが、当人に責任があろうがなかろうが生活保護受給者に“力”がないというのは法が認める現実だ。“力”がないから、働くことが出来ない。稼ぐことが出来ない。だからこそ国民の義務である納税と勤労が免除され、一般的な社会人数十人分の税金を糧に生きることを法的に許可されている。
 普段あまり意識されることはないが、“力”で立ち位置が決まるのはスポーツなど勝ち負けがはっきりしている一部の業種だけに限られた話ではない。自由主義社会の日本では、ありとあらゆる個々人がそれぞれどんな人生を過ごすかは、ありとあらゆる個々人の“力”次第で決定されている。

◆不快なものを抱える“力”
 ある個人がストーカーやDVの加害者としての人生を生きることになるかどうかは、とある“力”の多寡によって査定することが出来る。全ての加害者に共通して欠けている“力”がある。それは、『自分にとって不快なものを抱える“力”』だ。
 健康な人間であれば、成長とともに不快なものを抱える“力”を身につけていく。たいていの人にとって世の中はほとんど思い通りにならないことばかりなので、抱える“力”を身につけないことにはやっていけない。だが、ストーカーやDVの加害者にその”力”は備わっていない。
 『不快なものを抱える“力”』を査定するポイントは2つある。

◆メールの返信がないと情緒不安定
 もしもあなたの友人や恋人にこのような特性がみられるなら、今後の付き合い方をよく考えた方が賢明である。確実に言えるのは、そのような相手に対しては、決してすぐに返信メールを送信してはいけない、ということだ。今届いたメールに対し5分以内に返信をするということは、それ以後のメールはすべて5分以内に返信があるのだと相手に期待させるに等しい。決して大袈裟ではない。例えば、“お役所仕事”と揶揄される行政の福祉現場は揶揄そのままにスローに仕事をすすめるが、そこにはあえてそうしているという側面がある。市民からの要望に即応じることが出来たとしても、即応じないのが不文律。なぜなら、一度、即応じてもらえた市民は二回目以降も即応じてもらえると期待し、それが適わなかった際に「前はすぐやってくれたんだけどね!」とクレーマー化してしまいやすくなるからだ。人間には学習能力が備わっているため、最初の対応がそれ以降の対応として学習されてしまう、ということを理解しておいていただきたい。
 逆説的に言うなら、付き合いの初期段階のメールのやりとりで、メールの返信が遅かったりなかったりした時に相手が不安になったりイライラしている様子がみられたなら、その人物には『不快なものを抱える“力”』が不足していると査定をくだすことが可能だ。また、用もないのに一日に5件以上のメールを送信してくる場合も同じような査定をしておいて間違いない。その人は、本来なら自分で抱えるべきものをクリック一つであなたに放り投げているだけだ。付け加えておくと、相手は自分の感じている不安や怒りに気付いていないか、あるいは巧みにごまかすかもしれない。だが、安心してほしい。そのような時の決まり文句は大昔から変わっていない。
 「心配なんだ」
 この台詞をどう受けとるかは100%あなたの自由だが、もしもあなたが「心配してくれるってことは愛されているんだ」とだけ感じる人であるなら、僕はあなたがストーカー被害に遭うのではないかと心配する。

応募者紹介

阿川 悠成さん

1980年埼玉生まれ東京育ち。最難関の心理カウンセラー資格である臨床心理士として精神科病院、心療内科、企業や大学等で仕事をする。日本の精神科やカウンセリング業界の在り方に疑問を抱き、執筆活動を開始。現在は行政機関でひきこもり・思春期支援に従事している。
著書:「ドクター、『うつ』のホントの話、しちゃってもいいですか!?」(自由国民社)


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