日本の個人金融資産総額は、1500兆円。あなたの銀行預金、投資信託や年金などを預かって、運用しているのがファンドマネージャーだ。投資家・ファンドマネージャーで『投資家が「お金」よりも大事にしていること』の著者・藤野英人氏は、「投資家的な生き方をしよう」と問いかける。
「アベノミクス本格導入前の2012年末に上場している1705の企業(銘柄)のうち、この10年間で株価が上昇した企業は、全体の70%。これらの企業のうち、誰もが名前を知っているような時価総額3000億以上の企業は、わずか4%だ。(コマツ、三菱商事、アサヒグループホールディングス、東京海上など)」
藤野氏は、株価が上がった企業のほとんどは、中小企業だと説明する。この統計には、この10年の間に上場したGREE、ユーグレナなど、1000社の優良銘柄は含まれていないが、新しく出来た会社ほど株価が上昇しているという。
「例えば、富山県には朝日印刷という会社がある。20年間、株価が一度もずっと右肩上がりの超優良企業だ。2001年の「9.11テロ」でも下がらず、リーマン・ショックにも無反応。東日本大震災の際ですら、株価は下降しなかった。この10年間で株価が3倍になっており、配当は年3%の優良銘柄であるのにも関わらず、知名度はない。」【朝日印刷HP】:http://www.asahi-pp.co.jp/
このような優良企業が、なぜ知られてないのだろうか?それは「メディアのせい」と、知っていることにしか興味が無い「僕らのせい」だと藤野氏は考える。朝日印刷の四半期決算の報は、新聞や経済ニュースで取り上げられていたが、知らない会社の記事は目に入ってこない。
「人間は関心がないことは見えないように出来ている。関心事を増やす。もしくは、知らないことでも知ろうという意識を持つだけで、『見えないこと=透明なこと』を無くすことができる」
「この10年で、株価が上昇した日本企業の株価は、平均で約2.1倍に。利益も、約2.0倍になっている。株式市場の動きは、長期的に見ると株価と利益が一致するシンプルな動きをしている。株価が2倍になれば利益も2倍に。営業利益も3分の1になった会社は、株価が3分の1に減少している。利益が倍増する企業は、売上も社員の数も2倍になる。」
成長している会社は、年率7%の成長を遂げている。つまり、日本の会社の70%は、高度経済成長級の成長のまっただ中にいるのだ。果たして、本当に日本はダメになってしまったのだろうか。
就職希望ランキングを見ると、学生達は、未だに両親が喜ぶような「有名企業だけどダメな企業」を志望している。一方、成長中の「実質的に良い会社」は、知名度が無いために、優良人材の獲得ができない。
藤野氏は、大事なポイントは、会社のポテンシャルであると語る。「有名な大企業であれば安心という幻想を捨てた瞬間に、僕らの可能性は、投資・就職・転職いずれの面でも、大いに開けてくる」
「会社のHPに、社長・役員の写真がある会社とない会社がある。私(藤野氏)が日本の時価総額上位200社を独自に調査したところ、経営陣の写真を掲載していたのは49社だった。【社長・役員両方の写真あり】の会社のリーマン・ショック後の株価は、平均で+60% の成長を遂げていた。【社長だけ写真あり】の会社も+30%と調子がいい。一方、【両方なし】の企業 は+7%と伸び悩んでいる。これは、偶然だろうか?」
藤野氏は、役員の写真を載せてない会社=不真面目な会社だと考えている。日本の会社には、議論に参加せず、ただ社長の意見に賛同するだけの役員が多い。役員には責任や覚悟もないので、HPに写真を掲載する必要もない。あるいは、後ろめたい事情などがあって掲載出来ないのかもしれない。
「また、HPに掲載されている社長挨拶の主語が、【私、私達】である会社と、【当社、弊社】あるいは【主語なし】の会社とを比較調査したところ、主語を【私、私達】としている社長の会社は、+60%の成長を遂げていた。これも、偶然だとは思えない」
会社のHPから、その会社の姿勢・先行きが読み取れてしまうのだ。
「日本人は世界でも有数の現金好きだ。日本は、アメリカ、イギリス、フランスなどの国と比べると、現金預金(銀行・郵便局での預金含む)の比率が突出して高い。日本の現金預金比率は55・5%。アメリカは15.3%、イギリスは32.2%、ドイツは39.4%、フランスは31.3%となっている。
では、諸外国の人たちはお金をどこに預けているのか? 答えは、手形・小切手・株券などの有価証券だ。日本人が資産中5.5%しか有価証券を持っていないのに対し、諸外国では20%前後。“お金をお金で生む行為”と投資に良いイメージを持たない日本人は、人にお金を預けることをしない。他人が信用できないのである。
ケチでもあると言える。寄付の金額が、圧倒的に少ないのだ。アメリカでは、成人1人あたり年間約13万円の寄付をしている。日本人はわずか2500円。寄付をしているのも3人に1人で、残る2人の寄付金額は0円。
かつて米国系投資ファンドが日本企業の株を買い占めようとした際、“ハゲタカだ”、“短期的に金が儲かれば許されるのか”、“従業員の気持ちや、商品のことを考えていない”と大騒ぎになった。利益だけが目的の短期投資に、社会全体が拒絶反応を示したのだ。だが、日本人は自分のことを棚に上げてしまっていないだろうか。日本人の投資信託平均保有年数は3年であり、アメリカの20−30年と比べて圧倒的に短い。この10数年でも、中国→インド→ブラジルと、節操なく投資先を変えてきた。日本人こそハゲタカなのではないか」
ケチで、現金が大好きで、損をしたくなく、投資もせず、人を信じられず、ハゲタカ気質。それが日本人のお金感なのだ。
投資には、【他己投資】と【自己投資】の2種類の投資があると藤野氏は考える。
「【他己投資】には、“教育投資”、“組織への投資”、“社会への投資”がある。
“教育投資”とは、学校で学んだこと、社会で学んだことを次の世代に“受け継いでいくこと”。いつも自分のことだけを考えている人は、人と比較するので、いつも不安で幸せになれない。“人のために何が出来るか”と、自分のことや自分の幸せを棚に上げた瞬間に、不安はなくなり、幸せになれる。“社会・周囲の人が少しでも良くなること”が最大のリターン。
“組織への投資”は、国債や、株式、社債などへの投資を通じて、国や会社を支えること。株式の本来の趣旨は、その一員として会社の活動に参加するためのクラブ活動。会社を応援し、支えることによってその会社が社会的に認められるようになれば、結果として利益が得られるようになる。
“社会への投資”には、税金、寄付、NPO、社会起業家として活動することが含まれる。」
「【自己投資】とは、貴重な時間・エネルギーを使って成長する、あるいは、自己の成長を通して、社会を良くするということ。本を読む、映画を観る、語学を勉強する、恋愛する、美味しいものを食べる、心を落ち着かせる、などがそれにあたる。」
「みなさん自身が自分の人生を賭けて社会に投資する投資家であり、ファンドマネージャーである」と藤野氏は説く。
「実は、お金だけで解決できることは少ない。それよりも、お金を得るためのノウハウを持っている方が貴重だ。
情熱を持つ、知識を蓄える、行動する、人と会う。
世の中をよくすることを願い、主体的に生き、未来を信じ、成長を望み、努力する。
仲間を信じ、理想と現実の間で悩み、時間を大切にし、謙虚である。
このことの方が遥かに重要である。」
ただ指示を待つだけの従業員としてではなく、自らを主体とした投資家的な生き方を心がければ、行動の仕方が変わる。
「投資とはエネルギーを投入して、未来からのお返しを頂くこと。
エネルギーの公式は、情熱×行動×時間×回数×知恵×お金×体力×運。
あなたは自分の人生を掛けて社会に投資をしている投資家である。
あなたは投資家です。誰でも投資家です。
あなたは、いま何に何を投資をしているのでしょうか」
■イベントデータ
日程
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4/23(火)19:30〜21:00
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場所
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パシフィックセンチュリープレイス丸の内27F レオス・キャピタルワークス会議室
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料金
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1,000円
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対象
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社会人1年目(該当しない方もお越し頂けます)
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