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HOME > 新人賞 > 新人賞投稿作品 > 貧しい富裕層、豊かな低所得層

新人賞投稿作品

貧しい富裕層、豊かな低所得層

桐嶋俊輔
2014年06月27日 投稿

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豊かな暮らしを送っていると信じこんでいる富裕層の世界。貧しい暮らしを強いられているように見える低所得層の世界。しかし実は、お金の有無で決まる豊かさを超え、「貧しい富裕層」と「豊かな低所得層」が出現し始めている。大胆な切り口で明快に世の中を斬り、新たな富裕の尺度をお伝えしよう。

カテゴリ

日本社会

内容紹介

金持ちがモテる現代。「さとり世代」と呼ばれる若者が物を欲しがらなくても贅沢しなくても、社会はさほど変わりない。相変わらず、金持ちは成功者とされ、その一種のステイタスに酔いしれる者、憧れるもの、嫉妬する者、さまざまである。しかし、本当に金持ちは豊かなのか? もしかしたら、誰もが幻想を重ね合わせているだけで、その実像は貧困なのではないか? その一方で、低所得層の印象も幻想で、実は豊かな暮らしを送っている低所得層が増えているのでは?そんな大胆な仮説をもとに、本書では「富裕層の貧困さ」と「低所得層の豊かさ」を探っていく。

目次案・語りたい項目

プロローグ

第1章:金持ちの貧困化
第2章:裕福な生活を送る一部の低所得層
第3章:リッチ・ロウアーミドルの衝撃 ~いったい何が一部の低所得層を豊かにしているのか?~
第4章:リッチ・ロウアーミドルPOWER1
第5章:リッチ・ロウアーミドルPOWER2
第6章:リッチ・ロウアーミドルPOWER3
第7章:誰もが選択1つで豊かに生きられる時代

エピローグ 世界は、思ったよりも優しかった

書き出しの第1章

プロローグ

「現代では、金持ちの貧困化が進み、貧しい人々の裕福化が進んでいる」

 いささか極端な仮説であるが、上記をテーマに本書を書き進めていきたい。

 2013年、食品偽装問題で揺れた日本は記憶に新しい。あの時、多くの人達が思ったはずだ。

「金持ちは高い金払って、マズいもの食ってたのか」

 高額を支払い、貧しい暮らしをするお金持ち達。その滑稽な姿を知ると、世間は我々が思っているより“公平”なのではないかとさえ思う。

 一方、経済的には苦しいはずなのに知性と人間力で豊かな暮らしを実現する人も出てきた。ドイツのハイデマリー・シュヴェルマーさんをご存じだろうか。彼女は、1996年からいっさいお金を使わずに生活している。

 「いっさいお金を使わずに」という言葉から貧困な生活を連想されるかもしれないが、彼女の生活は決して貧困ではない。衣食住に不自由せず、社会の輪のなかでイキイキと働きながら新たなライフスタイルを体現しているのだ。

 いったい、どうやって?

 その答えは、彼女の言葉を読んでいただいたほうが早いだろう。

「私の世界ではね、飲食費というものは、もうないんですよ。お金を支払わずに生きてゆけるんです。喫茶店で何か飲んだら、例えば店内の掃除をしてあげるとか、コーヒー豆の袋運びをするとかでお返ししてるんです。お金から解放されるということは、他人や世界に対する接し方を変えるということなんですよ」

 物々交換で暮らしていると言ってしまえばそれまでだが、彼女のライフスタイルには次代の豊かさの鍵を握る重要なポイントが隠されているように思えてならない。

 なぜ、彼女はノーマネーで家まで手にできるのか?

 なぜ、ノーマネーで長い期間、安定的に暮らせているのか? 

 その理由は彼女の知性や人間力にあり、それらの力はお金をかけずに伸ばせるものである。

 お金なしで衣食住に困らない平均的な生活ができるなら、そこそこ稼いでいる低所得層が平均以上の豊かな暮らしをするのは何ら不思議なことではないだろう。

 本書では知性や人間力をはじめとする「新たな富形成の要素」を解き明かし、貧困に生きている富裕層と豊かに生きている低所得層の世界をあぶり出していく。収入の高低以外の要素で豊かさの大小が決まる現状を知れば、世界が違って見えるだろう。


第1章:金持ちの貧困化

 一、二年前のことだろうか。あるパーティーで、私は退屈な時間を過ごしていた。

 有象無象が集う、半ば婚活パーティーのような雰囲気。男と女の欲求が入り乱れるその様は、異様とも呼べるほどだった。

 そこには事業で成功した男性社長も多く集い、みな同じように煌びやかなブランド時計を腕にはめ、アピール合戦が繰り広げられている。女性社長も負けてはいない。全身ブランド物で攻め、センスのかけらも感じられない配色で独特のインパクトを放つ。その様は“蛾”のようだ。

 男性社長に群がる若い女たち。イケメンに近寄る女性社長。極めて分かりやすい二色の構図は、ある種の潔さすら感じるほどである。

 私は金持ちの男とそれに群がる女たちをディスりたいわけではない。そういう人達が嫌いなわけでもない。成功した女性社長がイケメンになびくのも可愛いものじゃないか。

 ただ、そこに豊かさがあるのか?と問いたいのだ。

 表層的・刹那的なパーティーに参加し、横並びの高級感をステイタスと錯覚しながら、腹に欲望を潜ませ、駆け引きのような会話をする。その時間は、豊かなのだろうか?

 広辞苑を開くと、豊かさとは次の二つの意味を含んだものだと分かる。

 1.満ち足りたさま
 2.緩やかなさま

 高崎経済大学の武井昭氏によれば、前者の「満ち足りたさま」は 「富裕さ」と「豊富さ」の意味の両方を含めたもので、「緩やかなさま」はゆったり撓む状態、つまり「ゆとり」を表すという。

 金持ち達のパーティーに豊富さはあったのだろうか? ゆとりはあったのだろうか?

 少なくとも私には「単一」で「せかせか」とした印象しかなかった。

応募者紹介

桐嶋俊輔さん

週休5日の起業家。
現在は、地方で自由な暮らしをしながら、ライフワークである執筆やコンサルティングを行なっている。

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