転職の最大のハードルは、自分自身のネガティブな思い込み。
転職を重ねるごとに安定とゆとりが生まれる、これからの時代のキャリアモデルとは。
ビジネス
良い大学を出て良い会社に就職すれば人生が保障されたのは昔の話。今の時代に必要なのは転職力だ。「転職歴はマイナス評価かな」「再就職って難しいよね」「やっぱり正社員じゃなきゃ」「未経験の職種に応募するのは無理」と自らにブレーキをかけ、悶々と過ごすあなたへ。そこから真逆の視点に変えるだけで、転職に対する心理的ハードルは格段に下がる。複数の転職経験にストーリーを持たせれば、説得力のある武器になる。国内外で7業種・11組織・11職種を渡り歩いた転職の達人、中途採用業務経験の豊富なキャリアアドバイザー&グローバル人材育成講師が語る「リスク分散型キャリアモデル」とは。転職に悩むあなたへ贈る、逆転発想のヒント集。
はじめに 企業は転職者を採用しないのではなく、転職に怯む人を採用しない
第1章 転職の最大のハードルは「ネガティブな思い込み」
(1)ハードルが高いのは、最初の転職だけ
(2)転職に反対するのは、転職経験のない人
(3)転職すると、成長のスピードが速まる
(4)転職者が必要とされる理由がわかれば、その不安は単なる思い込みだとわかる
(5)転職回数も突き抜ければ、引き出しの多さという武器になる
(6)いつでも何回でも転職していい、それが苦痛じゃないのなら
(7)転職の理由は、いろいろあっていい
第2章 「しなやかな強さ」が転職力のポイント
(1)いざという時でさえ転職できないのは、怖いこと
(2)転職力をつけることは、リスクヘッジの一つの形
(3)リスク分散型キャリアモデルとは、守備範囲に幅を持たせること
その1)職種の幅:事務+通訳+営業+秘書=経営者の片腕になれる
その2)業種の幅:メーカー+物流+商社+小売り=サプライチェーンの川上から川下まで熟知
その3)組織の幅(規模×熟度):小規模ベンチャー+業界最大手=組織力学の違いに精通した交渉力
その4)国境の幅:○○語+日本語=日本語ネイティブであることを武器に、国外で働く
第3章 あなたの視点をこう変えれば転職できる
(1)未経験の職種に応募するには:
これまで経験した業務内容を棚卸して、そのうちの一部分が被る職種を探す
(2)転職回数の多さをプラス材料にするには:
三種類以上の経験を組み合わせて希少価値を高める
(3)経験職種がバラバラなのは:
それらを大きな共通項でくくると、説得力のあるストーリーが見えてくる
(4)正社員にならないことのメリットとは:
期間限定だからこそ、次のステップへの機動力が増す
第4章 それでも転職が怖いときは、こう考えよう
(1)これからは、誰もが人生で一度は転職を経験する時代
(2)就職は入学、転職は進学
(3)転職モデルは「わらしべ長者」
(4)有意義な我慢には「ふんばり」、無意味な我慢には「ふんぎり」
(5)自分の感性にチューニングする転職は天職への道
おわりに 転職が当たり前の人生は、実は生き易い人生
はじめに 企業は転職者を採用しないのではなく、転職に怯む人を採用しない
企業側にとって中途採用と新卒採用の最大の違いは、基礎教育の手間をかけることなしに即戦力になりそうかどうかだ。書類選考や面接の場では、これまでの職務経歴を細かく確認し、企業側の求めるスキルや経験が応募者にどの程度あるかを見ていくのは当然のことだろう。
そしてそれらの条件を満たす人が複数現れた場合、その中から採用したいと思わせる人に共通しているのは、その人の心の中に「意味づけ」ができているかどうかだ。つまり、転職にかける前向きな期待が垣間見えることだ。その業務を経験することは、本人にとってどんなメリットがあるのか。仕事を通じて何を得たいと思っているのか。その企業で働くことで、なぜその期待が満足されると思うのか。
本人のそうした期待と企業側の提供できる機会、企業側の期待と本人の提供できる即戦力の両方が合致するかどうか確認できれば、企業側としては「この人は迷わず頑張ってくれるだろうな」と納得できる。
だから転職には、この「迷いがない」状態で臨むことがポイントだ。自分が何を得たいのか、なぜ転職したいのかという部分に迷いのある、つまり転職に怯んだ状態で応募しても、説得力のなさとして採用側に伝わってしまう。
では、迷わないためには、どうすればいいのだろうか。人は迷っているとき、ストレスに晒されている。そこで、ストレスを克服するための三要素「わかる・出来る・意味がある」を踏まえて思考を整理することで、本書ではあなたの迷いを払拭していこう。
例えば、「転職」という名の森の中で道に迷ったとする。
もし、自分の置かれている環境が森なのか、林なのか、山なのかも分からなければ、恐ろしく不安なことだろう。でも、そこに地図があり、自分の置かれている全体像がわかれば、そこから脱出する所要時間は数時間程度なのか、もしくは数日かかるのかなど、どれだけの心構えが必要なのか判断できる。大変な状況に陥っている事実には変わりないかもしれないけれど、その程度が「わかる」だけでもストレスは減る。これを転職に当てはめると、そもそも転職について、漠然としたイメージでとらえているから不安なのだ。転職とはどういうものかを知れば、それだけでも不安は小さくなる。第1章では、この点について説明している。
次に不安な理由は、自分にはそこから脱出することが「出来る」かどうかが判断できないからだろう。食糧や水は十分あるか、服装や靴など歩ける装備か、コンパスはあるか、脚力など健康状態はどうか。残念ながら歩くのは無理な状態だとしても、筏の組み方を知っていて小川を下ることができるとか、SOS信号をどこに向けて発信すればいいか知っているとか、応用できそうな過去の類似経験があるとか。自分に内在する資質であれ、使いこなせる外在手段であれ、利用可能なスキルやリソースが多いほど、ストレスは減る。転職でいうなら、これから就きたい仕事にたどり着くために、自分の職務経歴やスキルがどのくらい使えそうかを客観視したり、これまでの人脈を掘り起こしてみたり、以前に習得したけれど使うことのなかったスキルについて改めて違う角度から使い道を検討してみたりすることが、これにあたる。第2章・3章は、この点について書いている。
そして、最も大事なポイントが、「意味がある」という感覚の有無だ。森の中から脱出することに、そもそも意味を見いだせなかったら?…何が何でも脱出する理由がそこにあればこそ、人はなんとかして活路を見出そうと奔走する。たとえ状況が分からなかろうが、手段に限りがあろうが、あらゆる記憶や経験や工夫を総動員して、なんとか情報や手段を確保しようとするだろう。そうやって奔走し続けているうちに、最初は足りなかった要素もいつのまにか調達して、気が付いたら問題はクリアされているはずだ。これを転職に当てはめると、転職することに意味を見出しているかどうかが、本人の今後の頑張りに最も大きく影響することになる。第4章で詳しいヒントを提供しよう。
生きていれば、本人の意思に関係なく、様々な理由で転職を余儀なくされる出来事にも遭遇するだろう。そんなとき、本書の掲げる三つの要素で「転職力」をつけていれば、ピンチをチャンスに変えることができる。転職力とは、人生のリスクへの備えであり、生きることを楽にするライフスキルなのだ。
迷いを払拭した上で転職するなら、それは決して不安定な人生という奥深い森へ迷い込むことではなく、むしろワクワクと快適に人生を過ごす、日当たりのいい道へと通じている。
芳賀朝子さん
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