就活弱者よ、武器をもて!
就活がいよいよ本格化してきた。
今年は就活解禁が2か月遅れたこともあり、現場は混乱の様相を呈している。
多くの就活生は不安を募らせるばかりだ。
そして、書店にはそんな就活生に向けた新刊本がずらっと並んでいる。
そのなか、2冊の異なる主張を掲げる本がある。
『面接ではウソをつけ』(星海社新書)と『就活の神さま』(WAVE出版)だ。
ともに、自分に自信のもてない「就活弱者」のために書かれた本でありながら、前者はタイトルどおり「ウソをつけ」と主張し、後者では「偽りのない自分で闘え」と主張する。
どっちが正しいのか?あるいは、その真意は何なのか?
放置しておいては、学生を戸惑わせてしまうことになる。
そこで、著者のおふたりに徹底的に議論していただくことにした。
(左)『就活の神さま』(WAVE出版)著者・常見陽平さん
(右)『面接ではウソをつけ』(星海社新書)著者・菊原智明さん
第1回 面接でウソをつけるって本当?
常見「それにしても、『面接ではウソをつけ』とは過激なタイトルの本を出されましたね。
僕はいつも学生に”ウソをつくな”と言ってるし、去年出した就活小説『就活の神さま』で
も特に強調したポイントなんで、書店で本をみたときは目を剥きましたよ」
菊原「このタイトルは編集の柿内さんがつけたものですが、企画を提案されたときには正
直ちょっと戸惑いましたね」
常見「そもそも、菊原さんは営業のプロであって就活の専門家ではないですしね」
菊原「柿内さんに言わせると、そこがポイントなんだそうです。というのは、就活のコン
サルをやっている人やいわゆる就活本を書いている人が、”面接でウソをつけ”なんて死ん
でも言わないですからね」
常見「なるほど、それで、就活の世界の外で活躍している菊原さんに白羽の矢がたったと
いうわけですね」
菊原「そういうことです。でも、就活のことを知り尽くしているわけではないから、最初
は戸惑ったわけです。だけど、よくよく考えると、たしかに就活と営業って共通点が多い
んです。営業って商品をお客さんに売る仕事ですよね?一方、就活の面接って、お客さん
=企業の採用担当者に対してダイレクトに自分自身を売り込む場です。本質は一緒なんで
すよ。さらに言えば、営業は商品を売る前に、自分という人間をお客さんに気に入っても
らう、信頼してもらうことが不可欠ですから、その点では面接で自分を売り込むのと同じ
ことなんですよ」
常見「じゃ、菊原さんは営業でウソをついてたっていうことなんですか?ウソってすぐに
バレるじゃないですか?ちょっと、実験してみましょうか?菊原さんは、学生時代にスポ
ーツやってましたか?」
菊原「野球をやってました」
常見「では、バスケをやってたことにしてください。私が面接官で、菊原さんが就活生と
いう設定で面接をします。では、質問です。バスケ部では週何回練習してましたか?」
菊原「……」(目を泳がせて考える仕草)
常見「ほら、もうウソだってばれてますよ(笑)。本当にバスケをやってたら、迷わず答
えられるはずですから」
菊原「あはは」
常見「まぁ、面接官もピンキリですから、なかにはこんなウソも見破れない人もいるかも
しれませんが、ちゃんとした面接官は必ず事実を確認してくる。そうすると、その仕草ひ
とつでウソは見破られる。その瞬間にアウトですよ。だから、学生には絶対にウソはつく
な、と言っているんです。『就活の神さま』の主人公は、学生時代に特別なことなど何ひ
とつやってない3流大生の晃彦です。とにかく自信がない。自分を売り込む材料が見当た
らないんですね。それで、ついついエントリーシートでウソをつくんです。彼は学生時代
にサークルもまともにやってないのに、フットサルサークルを立ち上げて優勝するなんて
エピソードをでっち上げるわけです。実際、ネットで検索したら”リア充学生”のすごいエ
ピソードなんていくらでも拾えますから、誰でもやろうと思えばできることです。ところ
が、それを、たまたま晃彦のバイト先のカフェのマスター・ジミーさんが見つけて激怒す
る、ってストーリーを盛り込んでいるんです。普通の学生って基本的に自信ないから、気
をつけないと知らず知らずに”盛ろう”としてしまう。まぁ、程度問題というのもあるけど、
ウソをつくとロクなことはない。余計に自信をなくすだけだし」
菊原「なるほど。たしかに、事実の捏造はダメですよね。私の本でも、大学名や、部活・
サークルなどの肩書き、過去の体験、TOEICの点数などを偽れば、それは”詐称”だと明言
しています。この本で言う”ウソ”とは、そういうことじゃないんです」
常見「じゃ、どういうことですか?」
菊原「一言でいうと、”演技をしなさい”ってことですね」
常見「演技?」
菊原「そうです。つまり、”すでにいくつも内定をもらっている友達””面接で明らかにウケ
のいい学生””この人はきっと面接でもなんでもうまくいくんだろうな、というコミュ力の
高い知人”などを参考にして、自分なりの”モデル”をつくる。そのモデルを演じるんです。
もっと言えば、そういう人になりきるんですよ」
常見「なるほどね。まぁ、演じているだけだから偽りの事実を捏造するわけではない。だ
けど、本当の自分とは言えないという意味ではウソではある、と」
菊原「まぁ、そういうことですね」
常見「しかし、それでうまくいくんですかね?」
菊原「私は、それ以外にうまくいく方法はないと思いますよ。だって、人間って、誰かの
真似をしながら成長するものじゃないですか?私も、営業で成績を出せるようになるまで
に、いろんな先輩の真似をして、その先輩になりきって行動しましたよ。そんななかで、
自分なりのコツをつかんでいった」
常見「それは、”守破離”のことですかね?まず”型”を身に付ける。それが”守”。”破”は他の
”型”を学ぶ。そして、研究を重ねて独自の境地を開くのが”離”。私もかつてリクルートで
営業をしてましたが、最初は身近にいる優秀な先輩の真似をする。そのうち、だんだん影
響を受ける人が増えていき、いろんな人のノウハウを身につけて、気がついたら自分なり
のやり方が身についていた。これは、あらゆる仕事に通じることでしょうね。もし、そう
いう意味であれば、菊原さんのおっしゃることは理解できます」
菊原「そのとおりです」
常見「でも、だったら”面接では演技をしなさい”ってタイトルでよかったんじゃないですか?
むやみに煽ってるんじゃないですか?」
菊原「いや、そうではないんです。先ほど常見さんに”菊原さんは営業でウソをついたんで
すか?”って聞かれましたが、決してそんなことはありませんから、私も最初はこのタイト
ルには戸惑いもあったんです。でも、本を書きながら、やっぱりこのタイトルでいくべき
だと思ったんです」
常見「どうしてですか?」
菊原「”あるがままの自分”、つまり”本当の自分”という言葉と対比させたかったからです。
そんなものにこだわっているから、就活がうまくいかない。そんな状況から、就活生を解き
放つには、とてもいいタイトルだと思ったんです」
――続く(次回は、「自己分析の罠」をテーマに展開)
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【プロフィール】
常見陽平(つねみ・ようへい)
人材コンサルタント、大学講師、著述業、就活応援サイト「就活の栞」編集長。
一橋大学卒業後、リクルートに入社。その後、玩具メーカーで新卒採用を担当。自らの就活体験、新卒採用での体験などを通じて、就活、採用活動の矛盾や問題知り尽くす。現在は、人材コンサルティング会社であるクオリティ・オブ・ライフに参加しながら、旺盛な執筆活動を展開中。インチキ、偽善、茶番、タテマエに対する怒りと、若者に対する愛を胸に、学生、企業、大学、就職情報会社、親、官庁などさまざまな関係者の立場を熟知したうえで、現場視点かつ過激な情報発信を続けている。最新刊『親は知らない就活の鉄則』(朝日新書)のほか、『就活難民にならないための大学生活30のルール』(主婦の友社)など著書多数。
就活応援サイト「就活の栞」 http://www.s-shiori.com/
菊原智明(きくはら・ともあき)
営業コンサルタント、関東学園大学経済学部講師
大学卒業後、営業の世界へ。「口べた」「あがり症」に悩み、7年もの間、クビ寸前の苦しい営業マン時代を過ごす。「対人恐怖症」「訪問恐怖症」にまで陥るも、今までの営業活動の間違いに気づいてやり方を大きく変えたところ、突如として4年連続トップの営業マンに。その後、自分と同じように営業で悩んでいる人たちをサポートしたいとの思いから、2006年に独立。現在は、企業研修や営業通信講座の他に、全国でも珍しい「営業の授業」を大学で行い、社会に出てすぐに活躍できるための知識・ノウハウ・心構えを学生たちに教えている。代表作は『訪問しないで「売れる営業」に変わる本』(大和出版)、『トップ営業マンのルール』(明日香出版社)。公式HP http://www/tuki1.net
【書籍紹介】
『就活の神さま 自信のなかったボクを「納得内定」に導いた22の教え』(WAVE出版、四六判、320頁、1400円+税)
非モテ、非リア充、学生時代に取り組んだことウなし・・・。そんな3流大生・晃彦が、ありとあらゆる失敗をしながら成長して、厳しい就活を乗り切っていく小説仕立ての一冊。彼を導いていくのは、バイト先の「謎」のカフェ・マスター、ジミーさん。チビ・デブ・アフロでオネエ言葉。毒舌だけど温かい。そんなジミーさんが、納得できる就活をするための手ほどきをする。グループディスカッション、エントリーシート、就職ナビサイト、企業説明会、自己分析、業界・・OG訪問、面接、無い内定・・・。就活の場面ごとに絶対に必要な「就活の知識・ノウハウ・マインド」を存分に織り込みつつ、二人の精神的ドラマが進みます。「意識の高い学生」「時代の寵児」「自己分析のプロ」「ブラック企業社長」など、個性豊かな登場人物と織り成す、就活実用エンタテイメント。笑って、泣いて、元気が出る。就活がうまくいかないときに、打開策を得られるのはもちろん、頑張る力を与えてくれます!
『面接ではウソをつけ』(星海社新書、252頁、820円+税)
この本は弱者のための本です。「一流大生」「コミュニケーション能力ばつぐん」「凄い経験の持ち主」といった就活強者ではなく、「二流大生」「内気・ねくら・コミュ力ゼロ」「サークルとアルバイト以外、何もしてこなかった」といった就活弱者の人たちが、どのようにすれば面接をクリアして、内定という「勝利」を勝ち取ることができるか、ということについてお伝えします。弱者が「ありのままの自分」で勝負していてはお話になりません。徹底的に「ウソ」をつかなければ、ライバルと同じ土俵にすら立てないのです。あなたの就活、そして将来的には仕事のスタイルすら根本から変えてしまう1冊になることを、お約束しましょう。
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