• ジセダイとは
  • サイトマップ
ジセダイとつながろう!

ようこそジセダイへ!混沌と変革に満ちたこの時代、あなたは、何と闘いますか?ジセダイとは?

  • Home
  • スペシャル
  • 連載
  • イベント
  • 新人賞
  • 星海社新書
  • ジセダイ編集部
  • twitter
  • Facebook
  • RSS
  • youtube
  • SlideShare

HOME > ジセダイ編集部 > 今日の編集部 > 本日の古本:福本日南『大坂城の七将星』

今日の編集部

本日の古本:福本日南『大坂城の七将星』

平林緑萌
2014年01月15日 更新

著者の福本日南は、明治から大正にかけての著名人である。ジャーナリストであり、政治家であり、文筆もよくした。
ジャーナリストとしては陸羯南とともに『日本』を創刊し、政治家としては衆議院議員を務めた。文筆では史論を得意とし、明治40年に連載を開始した『元禄快挙録』では、現在における赤穂浪士事件の評価を確立した。
また、豊臣秀吉及の研究にも熱意を燃やし、その副産物的な形で本書は生まれたようである。

表題にある「七将星」とは即ち、木村重成、後藤基次、真田幸村、毛利勝永、長宗我部盛親、明石全登、大野治房である。それぞれ章を分かって、各々の武将の活躍について述べる。真田・毛利の評価が特に高い。
日南の記述の特徴として、数多の書を渉猟して筆を尽くしている事が挙げられる。数々の記述を勘案し、取捨選択の上で生き生きと描写される合戦の様は見事である。
また、日南が見た文献の中には、戦災などによって現在行方の分からないものも多く、日南の引用が非常に参考になる場合も多い。

一例を挙げよう。私は仁木英之氏の『大坂将星伝』(http://sai-zen-sen.jp/fictions/osakashousei-den/
)を担当した際に本書を参考にした。『大坂将星伝』は毛利勝永が主人公である。
『大坂城の七将星』の勝永の章を見ると、「勝永の遺臣・杉助左衛門」が録上したという『毛利豊前守殿一巻』という書物が引用されている。勝永の年齢等を述べた、貴重な資料である。これは「山内公爵家にあったもの」として、日南だからこそ当時閲覧が許されたものであったと思われる。
私はこれの現物を見ようと八方手を尽くした。しかし、現在山内家はこの古記録を所持していない。というか、問い合わせに対してけんもほろろな対応であった(これはまた別の機会に抗議をしたいと思っているくらいである)。
最終的には別の場所に保存されていた写しを入手できたが、日南が引用してくれていなければ存在すら知らなかったに違いない。つくづく、日南の学恩に感謝した次第である。

なお、日南は本書の原稿を書き上げた後、千葉県の大多喜中学校で講演中に脳溢血で倒れた。死の床にある日南のために、盟友たちが序文を綴っている。牧野謙次郎(漢学者)、大町桂月(歌人)、末永節(革命家)などなど……。
そうして本書が刊行され、爆発的な売れ行きを示す中、日南は9月2日にその生涯を終えた。

今年は大坂の陣から400周年である。思いを馳せながら、本書を読むのはどうだろうか。
そして、そのあとには是非『大坂将星伝』もお読みいただきたい。
『七将星』の美しい箔押しの表紙、これは豊臣家の家紋である桐の葉が散る様を表現したものだが、『将星伝』に、日南をリスペクトした仕掛けを入れておいた。
両方を読まれた方は驚かれるはずである。

(文會堂書店、大正十年、初版、菊版)

今日の編集部

投稿者


星海社新書発売中!既刊書籍情報一覧

FOLLOW US

ジセダイをフォローする

ジセダイは、20代以下の次世代に向けた、行動機会提案サイトです。