本書は、中世(戦国時代)の大和国について記した書物で、筒井一族を記述の中心に据えている。なかでも、最大のヒーローは筒井順慶である。
先行する『国民郷士記』とその類書の後を享け、本書はかなりエピソード的に充実している。ただし、当然ながら江戸期に成立した軍記物であるから嘘も多い。「洞が峠の日和見」は本書が初出だが、それは事実ではない。順慶の参戦を促すため、洞が峠に布陣したのは明智光秀なのである。
なお、写真の部分は、大坂の陣に際し、筒井家旧臣が大坂方に加わって郡山城を攻める場面。箸尾・秋山・片岡・布施・万財・巨勢……と錚々たる顔ぶれである(このうち、巨勢は八代将軍吉宗の母が出た家系ではないかと思われる)。
大和武士たちは大野治房の元に編成され、夏の陣における最終決戦では布施氏の兵が将軍秀忠の本陣を突き崩したという。
(豊住書店、昭和五十三年、初版、奈良県史料の端本)
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