原著者の名前は、今の基準ではフランク・シャーウッド・テイラーだが、「ティラー」となっている。ゲーテが「ギョエテ」だったようなものである。
テイラーはイギリスの科学史家である。本書は、エジプトやバビロニアから始まり20世紀に至るまでの科学の発展史であり、テイラーはまえがきにおいて、科学に対する人間の態度、および科学の外的世界に対する態度の推移を明らかにすることが目的であったと述べている。
訳者の森島恒雄は、当時、この手の書物で簡単に手に入るものが少なかったことを訳出の理由であると述べている。ただ、翻訳を開始した昭和十六年頃から陸続と翻訳が現れたそうである。科学史に関する書物が求められていた時代であったのだろうか。
最後に、「訳者まえがき」末尾の文章を掲げる。
「昭和十六年十二月八日、対米英宣戦の大詔歴史的煥発の日、悄然たる感動もて、はやくも刻々捷報を聞きつつ」
本書発売のちょうど二ヶ月後にあたる昭和十七年六月五日、大日本帝国はミッドウェーで手痛い敗北を喫することになる。
(創元社、昭和十七年、初版、四六版)
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