貴族夫人をめぐる愛憎劇から浮かび上がる、近世の村のかたち
一七六五年の夏。ヨーロッパの東のはずれ、トランシルヴァニア侯国のコザールヴァール村で、ある裁判の証人尋問が行われた。原告は領主の一人・イシュトヴァーン。そして被告は彼の妻・ユディト。罪状は「姦通」であった。のべ一〇〇人を超える証人の口から赤裸々に語られるのは、ユディトと間男・アーダームの堂々たる逢瀬、これまでの赤裸々な男性遍歴と子どもたちの出生にまつわる疑念、魔女と媚薬、そして繰り返される暴力......。ユディトは果たして、ただの淫蕩な女だったのか──? 東欧史研究のトップランナーが証言記録を縦横に読み解き、ユディトらを取り巻く近世ヨーロッパの村の暮らしを復元し、事件の深層に迫る。新たな近世史料学入門、ここに誕生!
秋山晋吾
東ヨーロッパ史研究者
秋山晋吾(あきやま・しんご)
1971年生まれ。筑波大学国際関係学群卒業、千葉大学大学院社会文化科学研究科修了、博士(文学)。現在、一橋大学大学院社会学研究科教授。17~19世紀のハンガリー・ルーマニアを中心とする東ヨーロッパの社会史研究を専門とする。共著・編著に、『移動がつくる東中欧・バルカン史』(刀水書房、2017年)、『新しく学ぶ西洋の歴史』(ミネルヴァ書房、2016年)、『つながりと権力の世界史』(彩流社、2014年)、『ハプスブルク帝国政治文化史―継承される正統性―』(昭和堂、2012年)、訳書・監訳書に、グリーン『海賊と商人の地中海』(NTT出版、2014年)、カーザー『ハプスブルク軍政国境の社会史』(学術出版会、2013年)、オーキー『ハプスブルク君主国 1765-1918』(NTT出版、2010年)、サーヴァイ『ハンガリー』(文庫クセジュ、1999年)などがある。
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