[前編] 新書『夢、死ね!』刊行記念 中川淳一郎&担当編集者全裸対談!
[中編] 新書『夢、死ね!』刊行記念 中川淳一郎&担当編集者全裸対談!
[後編] 新書『夢、死ね!』刊行記念 中川淳一郎&担当編集者全裸対談!
「想像以上に低体温になった。“パンいち”とはわけが違いますね」と今井氏
今井:いやーあったかいですねこれ。ご準備ありがとうございます。
中川:初夏とはいえ全裸はさすがに寒いかなと思ってね。
今井:新卒の時、小学館のエントリシートに「インタビューしてみたい人を3人挙げてください」って設問があって、迷わず「ガチャピン、千原ジュニア、ドクター中松」って書いて通ったことがあるんですよ。それ以来、ガチャピンは幸運の象徴で……。ガチャピンの趣味って、何かご存知ですか?
中川:知らねえよ!
今井:今はどうかわからないんですけど、ある時期は「チャレンジ」だったんですよ。チャレンジって、現状の否定であり可能性の探求ですよね。だから、「ありのまま」を否定するこの対談におあつらえ向きなんですよ!
中川:はからずもテーマにピッタリだったわけか! ガハハハハハ!!
今井:『夢、死ね!』この本は、中川さんにとって、誰に向けて出した本ですか? この本の元となった『凡人のための仕事プレイ事始め』(2010年刊)は、中川さんより少し下の人が相手でしたが。
中川:「凡人の…」の時は、若手社会人から「学生の頃読みたい本だった……」という声がけっこうあったんですよね。
今井:嬉しい感想ですね。一方、多くの読者は「この中川って人は博報堂で通用せず、競争に負けただけでしょ?」と思う気もします。『夢、死ね!』も読者自身の父親・ダサいサラリーマン像が詰まった本だと捉えられるかもしれないです。
中川:そういう人は、キラキラした本をずっと読み続け、いつ叶うか分からぬ夢を抱き、ありのままでいろ、と思う。でも、それを遠くから生暖かく見守るオッサンは苦笑するだけでしょう。
今井:オッサン世代が読んでも面白いと思いますけどね! 本書内で、僕が好きな表現がいくつかあって、メーカーの取締役が大勢の前でプレゼンするシーンが好きですね。
この大事な会見でプレゼンテーションの大役を担ったのはY社の吉田ひろゆき取締役で ある。吉田取締役はプレゼンテーションソフトの「パワーポイント」の資料を部下に作ら せており、それをスクリーンに投影して世界のVIPの前でプレゼンテーションをするの だ。「オレにとって一世一代の晴れ舞台! 結婚式の時はちょっと派手さが足りなかったか ら、今日こそオレの晴れ舞台! おかっつあん、オレはやるからなっ!」という意気込み で吉田取締役は会見に臨んだ。
あとは、中川さんがステマをした時に、「エロエロ判定で、ウケケと笑っていたがそうもいってられなくなった」というくだりも好きです。この本を読んで、若い人が見て、何を感じるのかな、というのは興味深いです。
中川:オレが訴えたいのは、現実ってこんなもんだってことだけなんですよね。多分、前向き過ぎる本は、気分を高揚させる程度の効果しかないと思う。娯楽としてはいいけど……。
今井:「明日からがんばろう!」って気にはなりますよね。レッドブル的な効果はあるんですが、翌々日にはもう忘れてる……。じゃあ、現実を知ったうえで、どうすればいいのでしょうか。
中川:あくまでも目の前のことをどうするかってことを考えておけばいいんじゃないですか? あとは、前向きな本の著者に対しては、「嘘ばっかつくんじゃねぇ、ボケ」という気持ちがあります。どんだけビジネス書読んでもできる人になれないヤツだらけかっつーの。
今井:著者自身は嘘だと思ってるのでしょうかか?
中川:いや、自分はうまくいったから、嘘だとは思っていないですし、嘘をついているつもりもありません。でも、そういった本を書ける人には実力があったんですよ。世の中は、凡人が作っているんです。自己啓発書を書ける人は凡人ではありません。凡人ではない人が高みの話をしているということです。昨年出した『ネットのバカ』でも書きましたが、この世は「勝ち組は一握り」「勝者総取り」という法則が長きに渡って存在しています。これを無視しているのが、自己啓発書とビジネス書なのです。
今井:著者である彼らが勝っているのは、読んでいる人が負けているからですしね。
中川:オレが言いたいのは、「負けるのが当たり前」ということ。勝てると言う人は、その人が勝っているからそう言ってるだけです。読者よりも自分が上だと考えるから、ある程度の情報・ノウハウを開示しているだけ。
今井:たとえば、若者から「中川さんになりたいです!」と言われて、その人はなれると思いますか?
中川:無理ですね。
今井:中川さんの才能、特性があるから?
中川:いえ、オレには才能も特性も特にありません。歩んだ人生が違うからです。
今井:どの部分?
中川:つーか、そもそもオレって他人からどう見られているんですか?
今井:一般的な見られ方では、「好きに生きてる人」だと思われているんじゃないでしょうか。ツイッターをやっていた時は、楽しそうなことを書くか、怒っているだけ。喜怒哀楽の中でも、人が世に出しにくい感情を出していたように思えます。この人は自由奔放でいていいな、と思われていますよ。
中川:なるほどなるほど。まぁ、快適に生きるには、他人から嫌われてもいいと思うことが重要ですよ。だって、全員から好かれることはありえないですもん。
今井:中川さんってアンチいるんですか?
中川:たくさんいますよ!
今井:誰ですか?
中川:2ちゃんねるでは、なんかオレを叩くスレッドがあるし、あとはネトウヨだなぁ。
今井:彼らとやり合わないんですか?
中川:だって、匿名で失うものがない無敵なあいつらとやり合ってもこっちは何も得るものなく、むしろ評判が落ちちゃうもん。だから、ツイッターでやり取りはしない。
「誰も、誰かにはなれないんですよ……(遠い目)」
今井:あぁ、確かに無敵の人に中川さん、応戦しませんもんね。ネットでアンチが多いと思われている人って丁寧に応戦しているから、「あぁ、この人はアンチが多いな」と思われちゃうんでしょうね。
あとネットで、アラフォーの人達を見てて「現実との切り分けがうまいな」と思うんですよね。たぶん、プロレス全盛期に育っているからじゃないかなと。なんか、切り分けるのが上手だな、というか。現実人格とネット人格を切り分けるのが上手で上手に両方の世界で立ち回っているように見えます。
中川:オレ、こうして本を書いたり、イベントに出る時以外はBtoBの人間ですから。別にCの人から嫌われてもいいんですよ。あと、人間関係は変わっていくし、いずれ疎遠になるものです。どんだけ大学時代の友人と当時は「オレらは一生の友達だ!」なんて肩組んで騒いでいても、いずれ疎遠になります。所詮、仲間なんてもんは、そいつが就職して、結婚したら縁が切れる。お金くれる人と家族の方が大事だからね。それは当たり前の話です。
今井:そんなもんなんですかねえ。
中川:今井さんの今後の目標は?
今井:僕の師匠の柿内さんが星海社新書で編集した本は3年間でだいたい50万部売れました。これを越えたいと思っています。そうできれば、とりあえず「星海社新書」というフィールドでは「勝ちましたよ!」と言えるかなって。無論、はじめた人が一番エライんですが。僕が出版に入るきっかけを作ってくれたのは柿内さんなので、そうやって恩返しできたらなと思います。
でも、彼が星海社をやめる時は面白かったなぁ。柿内さんて、2年間ほぼ完全禁酒していたんですけど……。
中川:おもしろそうな話ですね。ウケケ。
今井:彼が業界にも会社にも僕を引っ張ったんで、「今井には辞めることを早めに言わなくてはいけない」と思ってくれたんでしょうね。ある日不意に、メシに行こうと誘われました。飲み屋では、「これからの話をしたい」、と言われ、「ジンジャエールですか? コーラですか?」と聞いたら「今日は飲むわ」と言ってワインをガンガン飲み、世間話をし、2時間ぐらいして、べろべろになってそこでやっと「オレ、会社辞めるわ」と言ったんです。そうやって、酒の力を借りなくてはいけないところ、かわいかったです。あーこんなこと言ったら怒られそう! まあいっか。ガハハハ。
中川:オレにとっての師匠である嶋浩一郎さん(博報堂ケトル共同CEO)もそうだけど、さっきの、「どうすれば○○さんになれますか」でその人に絶対なれない理由は、所詮、仕事は誰と会うかで決まるから。それは、オレもその人もこれまでに会った人が違うから。そして人間が仕事をくれるから、一緒にはなれないんですよ。「相性」は「実力」にまさる仕事をくれるのです。
今井:中川さんも嶋さんになってるか? といったら全然違いますよね? だからこそ、嶋さんも「中川は使える」、と思っているのでしょうし。ところで今回の全裸座談会、元ネタとしては、柿内さんと中川さんの『ウェブはバカと暇人のもの』刊行の際にテレビブロスでやった「全裸対談」をなぞっていますが、ブロスの全裸対談はネットにはないんですよね。だから、今回ネットで全裸対談をやれたのはささやかな師匠越えです! たぶん、一生残りますからね!
中川:全裸で越えるって今井さんも意識低いなぁ、ガハハハハハ。
[前編] 新書『夢、死ね!』刊行記念 中川淳一郎&担当編集者全裸対談!
[中編] 新書『夢、死ね!』刊行記念 中川淳一郎&担当編集者全裸対談!
[後編] 新書『夢、死ね!』刊行記念 中川淳一郎&担当編集者全裸対談!
文:セルジオ苺 撮影:キング・カス
ライター、編集者、PRプランナー。
1973年生まれ。東京都立川市出身。一橋大学商学部卒業後、博報堂CC局で企業のPR業務を担当。2001年に退社し、しばらく無職となったあとフリーライターになり、その後『テレビブロス』のフリー編集者に。企業のPR活動、ライター、雑誌編集などを経て『NEWSポストセブン』など様々な、ネットニュースサイトの編集者となる。主な著書に、当時主流だったネット礼賛主義を真っ向から否定しベストセラーとなった『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『ネットのバカ』(新潮新書)などがある。割りと頻繁に物議を醸す、歯に衣着せぬ物言いに定評がある。口癖は「うんこ食ってろ!」。ビール党で、水以上の頻度でサッポロ黒ラベルを飲む。
86年生まれ(早生まれ)。滋賀生まれ滋賀育ち。大学では、京都でロックのイベントをしつつ、マネジメントについて割りとまじめに勉強。就職を機に 上京し、新卒でリクルートメディアコミュニケーションズに入社。営業→ディレクターを経験した。「Webと紙の書籍、イベントを組み合わせた新しい出版事 業 をつくる」という志に共感し、2012年5月、星海社に合流。尊敬する人物は、小谷正一。
Copyright © Star Seas Company All Rights Reserved.