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HOME > 星海社新書 > 星海社新書 > とことん格好悪く戦わなければ、守れない自由がある(レビュアー:荻野幸太郎)

星海社新書

とことん格好悪く戦わなければ、守れない自由がある(レビュアー:荻野幸太郎)

「表現の自由」の守り方

暗黒の季節の奇跡

 本書は、昨今のいわゆる「表現規制問題」に関心のある多くの読者の興味関心に応えるものであるが、私個人としては、とりわけこれから政治家や法律家を志す青年諸君に、ぜひ読んで欲しい。もちろん、そんな人は稀だろうが、「将来はどこかのNPOで表現の自由を守るアクティビストになりたい」と思ってくれている青年諸君にも、だ。

 元々マンガやアニメになんて興味のなかったビジネスマン出身の国会議員:山田太郎が、なぜ世間から蔑まれるエログロ・コンテンツの自由のために立ち上がり、巨大な政府与党と対峙し、世界中のマスコミからのバッシングを跳ね除け、国連からの圧力にも負けなかったのか。
本書には、その「格好悪い」戦いの記録が、鮮明かつ詳細に描かれている。

 山田太郎が繰り上げ当選で参議院議員となった2012年末からの3年間は、日本の戦後史の中でも、「表現の自由」がありとあらゆる方向からアタッキングを受け続けた実に危機的な3年間であった。

 国連機関や海外の報道機関を巧妙に利用して作られた外圧を背景に、インターネットに対する事実上の検閲手段を何としてでも確保したい勢力や、自分たちの道徳的・宗教的・イデオロギー的な規範の法的強制を目論む人々が、保守・革新の垣根を超えて団結し、一斉に表現規制関連法令を繰り出してきた。

 山田太郎という政治家は、どういう巡り合わせか、そんな時代に突然に現れて、そして一つでも負けたら全てが終わりの圧倒的に不利な状況で連戦連勝するという「奇跡」を起こしてしまったのである。

 それが決して棚から牡丹餅の奇跡ではなく、山田太郎とそのスタッフたちの実直な粘り強さによる勝利であったことは、ぜひ本書を手に取って確認してほしい。

本当の「表現の自由の守り方」

 ところで、政治家から「表現の自由を守る」という言葉を聞くことは、それほど珍しくはない。だが、それは多くの場合、何か別のことを守るための手段として展開される。例えば反体勢的な活動を一般社会による迷惑視から守るためであったり、あるいはポリティカル・コレクトネス的な突っ込みから伝統的な慣習を守るためであったり。別にこれ自体を批判するつもりはない。

 ただ、もっと言ってしまうと、このような傾向の帰結として、ただ単に論敵を「表現の自由を抑圧する悪者」と言い募って議論を盛り上げるための道具として、「表現の自由」という言葉は利用されたりもする。そのような「表現の自由の守り方」には何のリスクもなく、「格好良く戦っている」ポーズをカメラの前で決めるだけで全てが事足りることだろう。

 だが、山田太郎の「表現の自由の守り方」は、その手の紛い物とは一線を画してきた。
彼が稀有なのは、「表現の自由」そのものを守るために戦ったという点である。本書の中でも繰り返し記述されるように、だからこそ山田太郎は、批判のための批判を一切行わずに、必要な言質を政府与党から取り、約束を交わし、条文を変えさせ、付帯決議を取り付けてきた。

法律は必要最小限のものさえあればいい

 そして、もっとも重要なのは、山田太郎が「格好良くない表現の自由」のためにも、献身的であったという点である。

 本書の中で山田太郎はこう語る。「法律は必要最小限のものさえあればいい」「人々が自分の責任において自由に生き、自由に表現し、その結果を自身が引き受けるような社会を望みます」と。

 彼は、その理念のために、多くの政治家が怖がって話を聞くことすら躊躇する問題にも真っ向から取り組んできた。

 そのような山田太郎の「表現の自由の守り方」に対する評価は、真っ二つに分かれている。蔑まれる人々の表現のためにも躊躇なく戦った姿勢を評価する声がある一方で、「あいつが守っているのはエログロばかりだ」と批判する声も少なくない。本書には、そんな言い掛かりのような批判を吹っ飛ばす、圧倒的に地道な実務の積み重ねが描かれている。

 この本を読み終えたとき、あなたは、「格好悪さ」を厭わない本当の信念こそが、私たちの自由を守ることを知るだろう。

 

 

書籍情報

「表現の自由」の守り方
 
タイトル 「表現の自由」の守り方
著者 山田太郎
ISBN 978-4-06-138586-3
発売日 2016年04月25日
定価 840円(税別)
amazon.co.jpで詳細を見る
 

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