文字の味わい方がわかれば、本の読み方も変わる
この本は「書体」の入門書ですが、デザイナーなどの専門家がノウハウを学ぶためのものではありません。読書好きの「ふつうの人」が、文字の味わいを知り、自らの感受性を育むことで、本を読むことがもっともっと好きになるための一冊です。ぜひ、自分が大切にしている本を思い浮かべてみて下さい。そこに表れる文字を見て、あなたはどんな感情を抱いたでしょうか。何を想起したでしょうか。その書体の名前なんて、知らなくてもかまいません。大事なのは、決して目には見えない自分の心の動きに、敏感になること――。さあ、めくるめく書体の世界に飛び込みましょう。何気なく目にしていた文字の印象が、ガラリと変わるはずです。
文筆家。1981年神奈川県生まれ、福岡県育ち。早稲田大学第一文学部卒業。幼いころから活字や写植の文字に魅せられ、絶対音感ならぬ「絶対文字感」を養う。2011年にウェブサイト「文字の食卓――世界にひとつだけの書体見本帳」を開設。「書体の滋味豊かな味わい」をテーマに連載した文字と言葉をめぐる読書エッセイが、今までにない読者目線の書体批評として話題となり、「文字の食卓展」を開催する。特に写植書体への愛情と造詣が深く、『東京人』で関連の記事を掲載。文字を食して言葉を味わう「文字食」日々実践をモットーに、エッセイ・コラム・ルポルタージュなどの執筆を行う。著書に『文字の食卓』(本の雑誌社より書籍化)。 http://www.mojisyoku.jp/
胎児の成長過程、進化の歴史をもとに、生物の「生命記憶」について書かれた思想書。その詩的な文章は、生物学の入門書というより上質な随筆のようです。ちなみに私がこの本を読んだのは「好きな書体だから」という不純な動機でした……。でも「書体買い」してよかった!と心から思えた一冊です。
担当編集者の柿内さんとはともに猫好きという共通項で盛りあがりましたが(それで帯が決まった?)、いっぷう変わった猫文学といえばこれ。イタリアの児童文学作家・ジャンヌ・ロダーリの短編小説です。奇想天外な展開とスピード感で、フィギュアスケートを見ているみたいにドキドキしてしまいます。
夏目漱石の教え子であった中勘助が幼少時代の記憶を書いた散文集。「銀の匙」とは、子供の勘助がガラクタとともに本箱にしまっていた銀製の小さなスプーンのこと。その銀の匙を、大人になった今でも時々とり出しては手でさわっている。私にとっての「銀の匙」が「文字」なのだと思います、きっと。
作家・武田泰淳の妻、武田百合子による珠玉のエッセイ集。私のウェブサイトのタイトル「文字の食卓」はこの本へのオマージュでもあり、サイトを書籍化したときには題字の書体を一緒にしてもらいました。あんまり気づいてもらえないけど。特に「枇杷」という作品に影響を受けています。
日本を代表する著名な書体デザイナー9人へのインタビューと、書体制作の過程を丁寧に取材した本です。「文字は人がつくっている」ということが改めてよくわかる一冊。実際にフォントを作っているのはどのような方々なのでしょうか? ご興味をもっていただけた方はぜひこちらも読んでみてください。
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