「これがミリオンセラー新人賞だ!」座談会

(前半)

年に3回行われるミリオンセラー新人賞の選考過程を余すところなくレポート。辛口・毒舌を交えつつ、編集部員とスペシャルゲストが、投稿された企画をひとつずつ真剣に見ていきます。

柿内芳文(星海社新書編集長)

竹村俊介(星海社新書エディター)

岡村邦寛(星海社アシスタントエディター)

山田真哉(公認会計士、作家。ミリオンセラー新人賞アドバイザー)

ミリオンセラー新人賞、創設!

柿内 さっそく座談会をはじめましょう。この座談会では、ウェブサイト「ジセダイ」とともに創設する「ミリオンセラー新人賞」の概要について、語っていきたいと思います。

竹村 ジセダイにミリオンセラー。星海社に移って、びっくりすることばかりですよ。話がでかすぎる。副社長(太田克史)は劇団をやろうとか、ドーム貸し切りだとか言っているし

柿内 何言ってんの。新書の世界で戦っていくことを選んだ2人で盛り上がって決めたことじゃない。若いうちの夢と野望はでかくなきゃ、時代は変えられないよ。ということで、まずはこのふざけたネーミングの賞はなんぞや? ということから話していきたいと思います。

山田 どうして新人賞がミリオンセラーと結びつくんですか?

柿内 平たく言えば、ミリオンセラー新人賞は「星海社新書の新人賞」です。新しい才能を発掘して、一緒に100万部売れる本(新書)を作っていきましょう、ということです。

竹村 平たいけど、さらっとすごいことを言っていますよね。僕はまだミリオンセラーを作ったことがないから、そもそもそういった発想がなかった。

柿内 俺はもう千葉の外房に隠居したいから、竹村君にミリオンセラーを作ってもらわなきゃこまるよ(笑)

一同 (苦笑)

柿内 とにかくこの新人賞は、「新書界初の新人賞」となります!

山田 えっ、そうなんですか!? 他社のこれまでの新書シリーズに新人賞ってないんですか?

柿内 ないですね。そもそもノンフィクション自体に新人賞はあまりないです。「発掘」という意味の新人賞は小説(フィクション)がメインで、ノンフィクションの賞は「開高健ノンフィクション賞」や「大宅壮一ノンフィクション賞」といった、格式の高いものばかりです。僕らにはあまり関係がない

山田 言われてみればそうですね。これだけ小説の新人賞があるのに、ノンフィクションの新人賞はないな。なんで、やらないんだろう?

竹村 むずかしいからじゃないですか。でも、あえてそこにチャレンジするのが星海社です!! 

岡村 おっ、竹村さんがいきなり戦闘モードに入った(笑)

山田 竹村さんは童顔だから一見優しく見えるけど、秘めた闘志はすごいですからね。

柿内 僕もそこに惹かれて「俺と一緒に戦わないか?」と、中経出版にいた竹村君を誘ったんですよ。悪魔のささやきだったみたいですが(笑) 

岡村 よく決断しましたね。『たった1分で人生が変わる片付けの習慣』(中経出版)といった大ベストセラーを作って、辞める必要はなかったはずなのに。しかも、こんなわけのわからないベンチャー企業に移るなんて。

竹村 森ビルを辞めて、編集経験ゼロで星海社に飛び込んできた岡村君に言われたくはないな。そっちのほうがアドベンチャーだよ(笑)

柿内 たしかに。でも、いま話している4人はみんな一度、自分のいた場所を飛び出しているんですよね。僕は光文社、竹村君は中経出版、岡村君は森ビル、そして山田さんは予備校の職員

山田 その話はのちほどじっくりします。話がそれてきたから戻しますよ。あれ、なんで私が司会者をやっているんだろう。まあ、いいや。とにかく、ミリオンセラー新人賞はまだ本になっていない段階のものが対象となるんですよね? 「レコード大賞」の新人賞は発売されているCDの中から賞を選ぶわけだけど、これはそうではない、と。むしろ「EXILEオーディション」に近いと。

柿内 いい例えですね(笑)。その通りです。新人賞と言うからにはオーディションのように「発掘」が目的です。まだ世に出ていない企画・原稿を見て、それに僕らが才能や可能性を感じれば賞を与える、ということです。

山田 すでにプロとして活躍している人でも応募できるんですか? たとえば私のような。

柿内 できます。プロアマは問いません。本になっていない企画であればOKです。プロの方でも「星海社新書の編集者に見てもらいたい」と思う人がいるならば、ぜひ応募してきてほしいと思っています。山田さんも送ってください(真面目な顔で)

山田 今は出版不況なので、プロで企画もあるのに本を出せない人はたくさんいますからね。いや、ホントに私も送ろうかな。いくつもボツ企画がありますから。

柿内 山田さんでも、つまらなければボツにします。本気の企画を送ってきてください!

竹村 僕はきびしいですよ!!

岡村 僕もきびしくありたいです!!!

山田 。やっぱり、送るのやめとこう(笑)

過去の実績は関係ない!

柿内 本当に、一度ボツにした企画を送ってきてもいいですよ。山田さんの場合は違うと思いますが、出版社はその人の過去の実績(部数)を、著者の方が思っている以上に重視します。企画の内容ではなく、過去の数字で判断することも多い。部数決定会議でも、その著者のこれまでの本の部数が資料として配られて、大きな判断材料となっています。まあだいたい、きびしい部数がつけられるわけですよ。

山田 そうなんですよねー。いくら著者が自分の新企画に自信を持っていたところで、前にぜんぜん売れない本を出していると、「こいつは売れない著者だ」と決めつけられてしまいますからね。作家の立場としてはつらいところです。デビュー作が失敗すると、2作目を出すのは本当に大変です。そういった人を実際に何人も知っています。

柿内 まさに、過去の実績が良くないから新たな本が出せない、というパターンですね。でもそれって、「企画」「内容」で良し悪しを判断していないことになりますよね。前の部数で判断ができるなら、編集者なんていらないわけですよ。もっと言えば、出版社だっていらない。でも、企画で判断しないと新しいものが出てこなくなってしまう。

竹村 その通りです。

柿内 なので、「ミリオンセラー新人賞」では、過去の実績はまったく参考にしません。あくまで「企画の切り口」と「原稿の内容」で良し悪しを判断します。それが本来の「ノンフィクションのやり方」だと思っているので。

竹村 とにかく、「自分の思い、自分の考えを本にまとめて、世の中に問いたい!」という方の「熱」を重視したいと思っています。

山田 「人」で判断する賞ではない、と。

柿内 そうです。その人の実績は関係ない。ユニクロの社長でもザッカバーグでも、企画がつまらなければボツにします。ただ、どんな人かは重要ですよ。たとえば、僕が会計学を語ってもしょうがないわけであって、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(光文社新書)は、著者が山田真哉という会計士だから、内容に説得力が出てきます。

山田 切り口が面白ければいいんじゃないですか? 柿内さんが書いても。

柿内 いや、それじゃ薄っぺらいものしかできませんよ。熱に加えて、企画や原稿には「重み」がないといけない。なぜその人がそれを書く必要があるのか、書きたいのか、書けるのか、という理由づけがないものは、まったく読む気が起きませんね。

岡村 なるほど。貴志祐介さんの『黒い家』も、貴志さんが保険会社出身だったから、怖さが出るんですよね。

竹村 たしかに。床の下にいくつ××があるんだとかね。

山田 あれはホントに怖かった。

柿内 僕が城繁幸さんの原稿をはじめて読んだとき、富士通人事部で働いていたことで見えてきた「日本の労働システム(年功序列や日本型成果主義)」に対する城さんの怒り、そしてどうにかしてそのシステムを変えていきたいという城さんの想いがひしひしと伝わってきました。だから即決で本にまとめていこうと思った。ただ、先輩に読んでもらったところ、「こんなこと、誰でも知ってるんじゃないの」と言われてしまった。

岡村 そうなんですか!?

柿内 でも僕は、城さんの怒りや、日本を変えていきたいという想いも含めて「企画」だと考えていたので、まあ先輩の意見は無視して、企画を進めることにしました。そして完成したのが、『若者はなぜ3年で辞めるのか?』(光文社新書)という本です。

山田 あれは売れましたねー。40万部くらいでしたっけ?

柿内 40万部という売上は、はっきり言ってどうでもいいです。そんなものは自己満足に過ぎません。それより、あの「熱」を40万人に届けることができたことが、大きな達成感になっています。少しは、時代を変えることができたんじゃないかな。

竹村 僕も読んで多いに刺激を受けました。

柿内 とにかく、肩書きや過去の実績は重視しません。熱も含めた「企画」のみで判断する。そしてそれを100万人に伝えていく。それが、ミリオンセラー新人賞です。

新書でイベント!?

竹村 そうそう、新書の良いところは、「企画」で勝負ができるところですよね。僕はまだ新書を作ったことがないけれど、その部分に大きな魅力を感じています。ネームバリューもあるといえばあるんでしょうが、それだけで売れるということは絶対にない。企画ありきで、それを補強するものとしてネームバリューがある。でなれば、山田さんの本があんなに売れるはずがないんです。

山田 当時は、まったく無名の一会計士でしたからね。

柿内 出版社の役割は、新しい才能を発掘していくこと、そしてその才能が活躍する場を提供することだと思っています。その「場」というのは、まず本であり、いまならウェブやイベントだったりするわけです。これからは本だけを作るのが出版社の役割ではなく、ひとつの選択肢として本がある、という感じになっていくんじゃないかな。

山田 新書でイベントというと、あまり思い浮かびませんが

柿内 たとえば「授業」。この6、7人しか入れない星海社のちっちゃな会議室で20代だけを集めて授業をする、というのも面白くて新鮮じゃないですか!

山田 なんだか、適塾みたいですね。

柿内 まさにそのノリです。幕末っぽくなってきましたけど(笑)。星海社新書の1周年には、学校を貸し切り、星海社新書著者陣を集めて、「1日学校」みたいなものをやりたいと思っています。

岡村 それはいいですね! 僕も受けて、学びたいです。社会人になってからの方が、「学び」に対する意欲が出てきました。

竹村 創刊約半年後の「本の日(4月23日。サン・ジョルディの日)」にも、何かイベントをやりたいですね。実は、僕の誕生日がその日なので、前から何か大きなイベントをやりたいと思っていました。

柿内 このあいだ、芳林堂書店の三浦さん(新刊140文字レビュアーのひとり)と盛り上がった、本屋さんで「リアル脱出ゲーム」をやるというのはどう? 

竹村 それもいいですねー。どんどん街の本屋さんがなくなっていくなか、出版社の人間として、「本屋」というリアルな場の魅力をいろいろな方法で提示していかなきゃならないと思っていますから。ぜひやりましょう!

柿内 じゃあ、とにかくスクラップの加藤隆生さん(「リアル脱出ゲーム」主催者)にコンタクトを取らないとね。

竹村 そうですね。僕が責任を持ってやりますよ!

山田 話が早いですね。いいなあ、若さって(遠い目)。

柿内 何言ってるんですか。山田さんもめちゃくちゃ若いですよ! イベントをやるときには強制的に参加してもらいますから、覚悟しといてくださいね。

山田 は、はい(笑)

新書は「企画」で選ばれる

柿内 話を戻すと、ノンフィクションの新人賞は、小説の新人賞とは違うかたちでやるべきだと思っています。ぶっちゃけて言ってしまうと、原稿は最後まで書かなくてもいいよ、という話なんです。なぜそうなるかというと、読者の立場に立ってみると、彼・彼女らは企画の内容で買うか買わないかを判断しているからです。

山田 文芸以外の本って、だいたい最初の10ページくらいで面白いかどうかがわかってしまいますからね

柿内 要するに、最初の1文字から最後の1文字まで読んで、買うか買わないかを判断するなんて人はいないわけです。ほとんどの人は、まずタイトルを見て、つぎに概要や目次、著者略歴を見て、最後に中身をぱらぱらめくって読んでみてくらいの基準で、数分で判断します。小説の場合は、最初の数ページを読んだだけでは面白いかどうかはわからないし、中身も「生きることの意味を渾身の筆で描き出した著者の新境地」みたいな感じばかりで、具体的にどんな内容なのかさっぱりわかりません。

竹村 村上春樹が「100%の恋愛小説」と言えば、読みたくなりますけどね。

岡村 「ノルウェイの森」ですね!

柿内 そうそう、そういった有名作家や大御所であれば、ファンがついているから、中身がよくわからなくても買おうという気になりますが、これが新人作家の場合、なかなか厳しいですよね。特にハードカバーだったりすると、新人だからネームバリューはないし、内容もよくわからないし、しかも新人の場合、部数をつけられないから必然的に値段も高くなる(1800円とか)。そして、小説は最後まで読まないと、面白いかどうかは評価できない。まさに四重苦ですよ。だったら、面白さがある程度保証された東野圭吾を読もう、直木賞を取った小説を読もう、書店員さんがおすすめするものを読もう、という流れになるのは、まあ仕方がないことですね。なかなか無名の人の、中身がよくわからないものに、2000円近くのお金を払おうとは思えないわけです。

山田 一方のノンフィクション、特に新書には、そういった四重苦がないですよね。ネームバリューはあまり関係ないし、内容はきわめてわかりやすいし、手に取りやすい値段だし、最初の十数ページを読んだだけで面白いかどうかがわかる。

柿内 そうなんです! だからこそ、新人賞というものが可能になってくるのだと考えています。僕が在籍していた光文社新書編集部の企画会議というのは、A4一枚にタイトルと著者名だけ書いたものを机に並べて、編集者が説明していく、というスタイルを取っていました。企画書なんてものはいっさい作らない。なぜかというと、タイトルと著者名だけを見て面白いと思わないものは、かたちになっても、誰も読みたくないからです。だから、あくまでも読者と同じ視点、本屋に並んだときのイメージを企画の段階から考えることが大事なんです。著者が無名でも、面白い企画であれば、他の編集者が「この『最後の藩主列伝』と『仕事をしたつもり』ってなに?」と聞いてきます。つまらないものはスルーされてしまいます。

竹村 「たった1分で人生が変わる『座禅の習慣』」という企画名を柿内さんに話したら、たった1分で、「それいいじゃん、やろうよ」ということになって、いま企画を進めているところです。

柿内 そうだね。もうそのタイトルを聞いただけで、「欲しい!」「読みたい!」と思ったから、即決だよ。本屋にあったら間違いなく手に取ると思うから。いまその企画、どうなっているんだっけ?

竹村 京都に書けそうな若いお坊さんを見つけたので、このあいだ会ってきました。これから取材をしてまとめていきます。

柿内 頑張ってくれ!

山田 私は出版勉強会を主催していて、そこでこれから本を出したいと思っている人の企画書を見ることがあるんですけど、まあ、企画書を見てもつまらないんですよ(笑)。何百本も見ているんですけど、面白いと思ったものは1つか2つくらいしかない。なぜかつまらなくなってしまう。それよりは、タイトルだけで判断したほうが、ぜんぜん面白いですよね。

柿内 そうですね。ただ、ネタの投稿会になってしまっても仕方がないので、ミリオンセラー新人賞は、タイトルなどの企画概要に加えて、書き出しの1章分で判断しようと思っています。

竹村 ネタでは1章分は書けませんからね。

山田 1章って長くないですか?

柿内 それはその企画にもよりますよ。たとえば、見開きでワンフレーズを説明するような企画であれば、2ページで1章分となります。

山田 なるほど。2ページでも10ページでも30ページでもいい、と。まあ、1ページはさすがの中谷彰宏さんでもないかな(笑)。でも、そういうのも投稿されてくるんでしょうね。

竹村 そうですね。「20代を変える200の言葉」とか(笑)

岡村 「30代までにしておきたい300のチャレンジ」とか(笑)

柿内 ウェルカムですよ。そこらへんの縛りは一切かけません。紀行文でもエッセイ、ルポルタージュでもいいです。

「ノンフィクション」とはなんぞや?

柿内 ここで、ミリオンセラー新人賞が扱う「ノンフィクション」というものを、ある程度定義づけておいたほうがいいですね。僕はノンフィクションではなく、何か新しい言葉を作りたいとつねづね思っているのですが

山田 えっ、どうしてですか?

柿内 だって、「ノン」フィクションじゃないですか! 否定語が先に入ってるなんて気に入りませんよ!

山田 そういうことか(笑)

岡村 フィクションが基準、という考え方の言葉ですよね。

柿内 むしろノンフィクションが基準で、小説なんかを「ノンなんとか」にしたほうがいいんじゃないかという思いが

一同 (笑)

山田 「反」政府軍と同じですもんね。

柿内 そう! まさにノンフィクション軍閥みたいになっていて、「フィクションに対抗するぞ! 俺たちはフィクションじゃないんだ! NONフィクションなんだ! シュプレヒコール!」という感じがして

山田 やっぱり本の歴史=文芸なんでしょうね。

柿内 まあ、実際のところ、僕はフィクションとノンフィクションの境目なんてどうでもいいと思っています。「歴史(history)」と「物語(story)」がもともとは同じものだったのと同様に、あまりはっきり区別する必要はないですよ。

山田 じゃあ、小説を投稿してきてもいい、と。

柿内 まったく問題ありません。ただその場合、はっきりとしたテーマがないと、さすがに本にすることはできないですね。SFや純愛小説を送られてきても困ります。それは、「星海社FICTIONS新人賞」に投稿してください(笑)

竹村 「テーマ」ってなんですか?

柿内 たとえば、10月に刊行する「資本主義卒業試験」(星海社新書/山田玲司著)という本は、「最悪のシステムだが、これまでのシステムよりはマシ」と言われている「資本主義社会」で、どうやって幸せに生きていくことができるかという哲学を、小説+マンガで描いています。ノンフィクションだけど、中身は小説とマンガです。

岡村 ゲラを読みましたが、ぶったまげました。あんな新書、読んだことがないです。非属すぎる

柿内 資本主義社会って、経済成長が前提になっている考え方です。ルールは単純明快、「勝てばいい」。そのノリで、いまだに「中国に勝った、負けた」とやっているわけですが、でもその結果どうなったか? 働いても働いても幸せにはなれない社会になってきています。何かがおかしい。何かが大きく間違っている。家族も地域社会も解体されてしまったし、一個人がそのまま社会と対峙するような世の中になってしまった。それはつらいことだ。そんな話を著者の山田玲司さんとしていたら、山田さんが、資本主義自体をすぐに変えることは難しいけれど、資本主義のなかで幸せに生きていくことなら不可能じゃない、と言い出したんです。

山田 ほうほう。

柿内 僕もすごく興味を持って、さっそくその考え方を一冊にまとめよう、ということになりました。そこで僕が思いついたのが、「資本主義卒業試験」というタイトルです。山田さんも「いいね、それ!」という感じになって、その日のうちに、小説形式で主人公たちが卒業試験にチャレンジするという内容にしようということが決まりました。

岡村 そういう経緯だったんですね。

柿内 話が長くなってしまいましたが、何が言いたいのかというと、伝えたいテーマがはっきりしていれば、形式はなんだっていいということです。目的はあくまでも伝えたいメッセージであり、形式は手段にすぎません。それをノンフィクションと呼ぶなら、それはノンフィクションなんです!

山田 なるほど。『ユダヤ人大富豪の教え』(大和書房)や『チーズはどこに消えた?』(扶桑社)も小説・物語ですが、あれは確かにフィクションではなく、ノンフィクションですよね。

竹村 『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)や『もしドラ』(ダイヤモンド社)もそうだなあ。

柿内 まあだからカモン!! ってことですよ! 自分で定義づけしましょうと言っておきながらなんですが、定義づけるのがバカらしくなってきました。明らかな文芸作品はハジきますが、それ以外、投稿者が新書で何かを伝えたいと思っていれば、それは十分に企画になり得ます。目的があれば、形式はなんだっていい。科学哲学者のファイヤアーベントは「科学はなんでもあり(anything goes)」と言いましたが、新書もなんでもありです。エニシング・ゴーズ!

岡村 アツいですね。

柿内 そう、アツくいかなきゃ。

本は精子だ!

柿内 本というのは「文化的な遺伝子」ですよ! 僕はずっとそう思っています。生物学者のリチャード・ドーキンスが言い出した「ミーム」という概念があって、生物学的な視点から「文化」というものを捉えてみると、文化のひとつひとつは、まるで遺伝子のような働きをしているそうです。人間の生み出した文化は、一度生まれると、生物の遺伝子のようにコントロールのきかないものとなり、自然増殖されていく、とドーキンスは言っています。僕はそれを思いっきり拡大解釈してこんなこと言ったら怒られてしまうかもしれませんが、「本は精子」だと思っているんです。

岡村 。えーっと柿内さん?

柿内 (聞いてない)初版1万部なら、1万匹の精子が生まれて、その精子がいろいろ人の頭の中に入り込んでいく。でも、ほとんどの場合、読まれたら終わりで、あっという間に忘れ去られてしまうか、ゴミ箱に捨てられてしまう。つまり、精子は子宮には届かず、死んでしまうのですまあ、ここはカットしてくださいね(笑)

山田 いや、ここは絶対に残すべきでしょう!

一同 (爆笑)

柿内 (笑)。えー、では続きを。1万部の精子のうちの1冊でも生き残ったら、誰かの頭の中の子宮に入り込んで、受精することができたら、何かが生まれるんですよ!! あーあ、これで女性が応募してこなくなるなあ

一同 (笑)

柿内 まあとにかく、僕は本当に「本」というものは遺伝子だと考えています。だから、さっきの話にあった「目的」というのはすごく重要で、世の中に遺伝子を残すぞ、というくらいの気概が大切なんです。出版物というのは文化的な営みなので、出版物を出すからには単なる自己満足で終わったり、売れたからよかったねとかいうレベルは軽く超えなければならないんです。1冊の本が出版されたという事実は永遠に残るわけですから。その本が何を目的とするのか、というのは、はっきりしてもらいたいですね。

山田 そのはっきりしている目的というのは、べつに「モテる方法」であったり、「英会話の向上」でもいいわけですよね?

柿内 なんでもいいです。それこそ、「革命を起こす」という大きいものでも、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』のように「会計学を身近に」といったものでもOKです。

山田 7月に起きたノルウェーのテロの容疑者が分厚いレポートを作っていましたが、あれが送られてきてもOKなんですか?

柿内 送られてくればちゃんと見ますよ。見た結果どうなるかは、またそこからの話ですが。世の中に閉塞感を感じている若い人は、その閉塞の細部を書いて送ってもらいたいですね。それを「こう変えたいか」とか、「俺はいまこんだけ苦しい状況にあるんだ」とかね。もちろん、個人や特定の団体を誹謗中傷したり、明らかな差別表現があったり、要するに常識的に考えてこれはという内容は駄目ですが。

山田 では、自民党や民主党を非難する、というのはどうなんですか?

柿内 それはもちろんOKですよ。政治なので。

山田 東大を非難するのは。

柿内 OKです。

山田 じゃあ、○○幼稚園を非難します、というのは?

柿内 そこまでのレベルにいってしまうと、特定のものに対する批判になってしまって、「社会」に対する批判ではなくなってきてしまいますよね。「幼稚園」という存在を批判するのはアリですよ。そこらへんのボーダーラインがどこなのか、というのはこちらで判断します。

山田 あとよくあるケースで、イチローの言葉を集めました、という本。あとこれはコミケとかでも実際にある、伊集院光さんのラジオの発言をまとめた本。こういったものは、どうなんですか?

柿内 著作権上問題があるものは当然ダメです。ただ、それを元に自分がどのように解釈するか、要するにそれらが引用として使われているのであればOKです。引用規定をしっかりと理解してもらう必要がありますが。

山田 他社にも提出している出版企画を新人賞に応募してくることはOKなんですか?

柿内 それは投稿者本人の判断に任せるしかないですね。こちらでは、その企画が他社にも提出されているというのは知りようがないわけですから。ただし、もし僕らが応募されてきた企画を面白いと感じて、その投稿者の方と書籍化に向けて話をする、という段階になったら、状況を正直に伝えてもらわないと困ります。実は他社でも企画が進んでいて、というトラブルだけは避けたいので。

岡村 盗作は?

柿内 もちろんナシですよ! そういう人がいたら星海社に呼び出して、小一時間説教を

一同 (笑)

編集者の「主観」で判断します!

竹村 応募された企画に対する判断として、編集者の思想や考え方をどこまで反映させるんですか? たとえば、自民党批判と民主党批判の企画があって、編集者個人の考えとしては民主党批判なんだけど、自民党批判の企画を本にしたほうが売れそう、ということになった場合、どういう判断を下すのか、ということです。僕は編集者が前に出ていく時代だと思っているので、編集者の思想や考えが入るのは仕方がない、と思っていますが。

柿内 それはもう100%、判断する編集者の主観によるね。売れそうだから自民党批判のほうを本にする、というのもその編集者の考えだし、とはいえ売れるのはわかっているけどあえてそこにはいかず、民主党批判のほうを本にしよう、というのも、その編集者の考え。つまり、客観的な判断はできない、ということを、投稿者の人は大前提として心得ていてほしいですね。たとえば、この新人賞で通らなかった企画も、新潮新書に持ち込んだら通るかもしれない。

竹村 あくまで僕らが主観的に判断する、と。

柿内 そう。だから星海社新書に合わない企画が投稿されてきたら、当然ながら結果も良くないものになります。

岡村 それはフィクションでも同じですよね。『少年ジャンプ』の新人賞に少女漫画風の原稿を投稿したら

山田 『りぼん』に投稿してくれ、って話になりますよね。

柿内 結局、投稿された作品はすべて僕と竹村君、つまり星海社新書のコアメンバー2人でしっかり判断します。それは、2人の主観で判断する、ということ以外の何ものでもないんです。

山田 ノンフィクションも客観ではないんですよね。主観の賜物という

柿内 主観ですよ。著者の主観、編集者の主観、出版社の主観です。読者も主観で読めばいいんです。だから、間違った判断をするかもしれませんが、それも含めて「主観的な判断をしていく」ということになります。前に『99.9%は仮説』(光文社新書)という本をつくりましたが、科学ですら主観であり、客観ではないんです。『日本史の一級史料』(光文社新書)という本も担当しましたが、歴史も客観ではなく主観です。新しい史料が出てくると、歴史は書き替えられるわけですから。

山田 平安時代末期の人々がどういう服装をしていたのか、というのは当時の史料がほとんど残っていないのでわからないわけですけど、唯一、絵巻物に烏帽子をかぶって寝ている人の姿があったんですよ。なので、当時の人はみんな烏帽子をかぶって寝る、という説があるんですけど、よく考えたら不自然なんですよね。

一同 (笑)

柿内 その人だけが「なんか落ち着くなぁ〜」とか言ってかぶっていただけかもしれないですよね(笑)。むしろ、変な人だから絵巻物に書かれていたのかもしれない。

山田 そうそう、そうなんですよ!

求めている企画とは?

山田 私は歴史マニアなんですが、歴史物の投稿もOKなんですよね?

柿内 めっちゃ、ウェルカムです。

山田 ウェルカムなものを挙げときますか。そうすれば、挙げたテーマに関するものがたくさん投稿されるかもしれない。

柿内 なるほど。ウェルカムなものはまずは学問ですね。会計学や統計学、政治学、経済学、哲学、社会学、文学、心理学、物理学、数学など。わかりやすく言えば大学の授業のイメージですかね。ただ、大学の授業や学校で使っていた教科書というのは言葉は悪いですが、まあクソつまらないですよね。

山田 (笑)。多数の意見をまとめてつくられているものなので、どうしても無難な内容になってしまいますね。

柿内 なので、星海社新書でやっていきたいのは「面白い授業」と「面白い教科書」です。星海社新書のコンセプトは「武器としての教養」ですが、誰のための教養かといえば、若い世代のための教養です。若い人に届けるためには、まず面白くなくてはいけない、そして読みやすくなければならない。そこに注力した企画を求めています。先ほど挙げた『99.9%は仮説』という本は、科学哲学の教科書を目指してつくりましたし、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』は山田さんと一緒に「会計学の教科書」をつくろうということで始めた企画でした。

山田 そうでしたね。本の冒頭にも書きましたが、ゲーテ曰く「本当の教科書というのは、学問と生活の明瞭な接点をみせるものである」と。しかし、学者先生は学問の世界の言葉だけで語ってしまっているんですよね。生活との接点がまるでない。だから、自分には関係のない話だと思って、読者の興味をまったく喚起しない

柿内 そうなんですよ! 僕は世界史を一度も習ったことがなくて、こりゃヤバいと思って、社会人になってから世界史の教科書を買ってみたのですが、あまりのつまらなさに一日で読むのをやめてしまいました。

山田 いま、『もういちど読む「山川世界史」』(山川出版社)が売れてるじゃないですか。あれはどうですか?

柿内 残念ながら、やはりクソつまらなかったです。

岡村 ははは(爆笑)

柿内 なんで歴史って、あんなにも時代の「流れ」を重視するんでしょうね。僕らが歴史で興味を持つのって、なんだかんだいっても「人物」じゃないですか。日本史でいえば、信長であり龍馬なわけですよ。どうして日本史の授業は「戦国時代」や「幕末」から始めないのかと、高校のときからずっと疑問でした。面白いところから教えていくべきなんですよ! なのに、縄文・弥生から授業が始まる。埴輪とか、はっきり言ってどうでもいいですよ(笑)

竹村 歴史の教科書は「流れ」より「人物」中心であるべきだという考えで作ったのが、『世界史をつくった最強の三〇〇人』(星海社新書)という本ですよね。

柿内 そうそう。歴史小説家の若手筆頭である小前亮さんにそのことを伝えて、かたちにしていったのがその本です。最高に面白い人物が324人出てきます。キャッチコピーは「つまらない教科書はうんざり。世界史はこう教えてほしかった!」ですからね。読み終えて、世界史に興味を持つことは間違いないですよ。

竹村 では、新人賞では「日本史をつくった最強の三〇〇人」を求めています!

柿内 いいね〜。それが投稿されてきたら甘く判断しちゃうかも(笑)

山田 他には?

柿内 鉄道とかでもいいですよ。僕はテツなので! 先日も、肥薩線を辿って旅をしてきました。

岡村 思いっきり趣味系ですね

柿内 テーマは「鉄道」というありきたりなものでも良くて、どういう切り口で書くかが重要です。鉄道に関しては、いま僕は「スジ屋」(ダイヤ作成者)に興味がありますね。「スジ屋は最終的には利害調整が仕事だ」というのを聞いたことがあって、それをビジネスの視点で語る、という企画があれば面白そうかな、と。

山田 スジ屋の人が読んでいたら、ぜひ投稿してきてくださいね。鉄道にはいくらでも切り口がありそうですよね。

柿内 だってまだ「ドラッカー」のなかにもあったんですよ。新しい切り口が! これだけドラッカーの本が昔からたくさん、ずーっと出版され続けてきたなかで、まだ『もしドラ』があった。僕は本当に驚きました。

山田 まだまだ金脈はある、と。

柿内 新書の良いところは「再解釈」だと思っています。まったく新しい最先端の分野を一般の人にわかりやすく伝える、というのも面白いのですが、もともとある分野を一般の人に「新しい切り口で伝える」ことのほうがチャレンジしがいがあります。

山田 「再解釈」で最近話題になった本といえば『超訳 ニーチェの言葉』(ディスカバー21)とかですかね。そういうのはアリですか?

柿内 アリです。あれもニーチェという題材をああいうかたちで見せることに現代性と面白みがあったわけですから。他にはキリスト教を扱った本もいいですね。それこそ数えきれないほどの本が出されていると思うんですが、『ふしぎなキリスト教』(講談社現代新書)は面白かった。橋爪大三郎さんと大澤真幸さんという2人の社会学者の対談を本にしたもので、社会学者だからこそ語れる、最高のキリスト教入門になっています。

山田 では、『ONE PIECE』を読んだ感想、評論本は?

柿内 評論本はOKですよ。

山田 音声を使った企画は? たとえば鉄道の本で音を集めたもの。「このブレーキ音がたまらないんですよ〜」とか(笑)

柿内 それは実際に鉄道もので本になっていますよ。でも、さすがに音は厳しいですね(笑)。岩波アクティブ新書のCD付新書『江戸の売り声百景』には僕も衝撃を受けましたが

山田 写真集は? ノンフィクションですよね。

柿内 写真だけ、というのは現実的には厳しいですね。一部の趣味人のための本となってしまって、「売る」という観点から見ると厳しい判断をせざるを得ない。ミリオンセラー新人賞は、企画の面白さに加えて「売る」という視点でも評価をするので。

山田 売る視点でも評価する、と。なるほど〜。

竹村 僕ら2人が判断するからには、その視点は外せませんね。企画だけなら、「現代用語の基礎知識」の項目の数だけ、いますぐ企画書にまとめることができますよ。でも、本にすることができたとしてもまったく売れないでしょう。慈善事業ではないので、ちゃんと「売る」という視点をもって、企画を判断します。

柿内 まあ、そこらへんのことは、のちほどちゃんと説明していきます。「求める企画」についていろいろと言ってきましたが、ぶっちゃけて言ってしまえば、投稿する企画の内容はなんでもいいんです。くり返しますが、ファイヤアーベントという科学哲学者は、「科学はなんでもあり」と言いいました。枠組みを狭くすることによって「科学は他の学問とは違うんだ」と特別感を出すことは間違っている、と言ってるんです。科学は売春と違わない、とさえ言っています。ファイヤアーベントは、科学者たちが、自分たちは科学をやっているんだぞ、偉いんだぞ、という態度でいることが気に食わなかったんです。それは僕も同じ気持ちで、とにかく新書を一部の人のものにはしたくないんです。「新書」としてお高くとまっている、格式ばっているというのではなく、それ以外のものもきちんと評価していきたい、という想いがあります。

山田 なるほど。

柿内 僕は、新書というのは、本の形態として完成されたスタイルのひとつだと思っています。知や好奇心の入り口であり、テーマがはっきりしていてさらっと読める、そして値段も手に取りやすい。可能性は無限大にありますね。でも最近は、「なんだか新書ブームらしいし、新書にすれば売れそうだ」ということで、なんの考えもなく、ただ新書で出している本が増えているような気がします。僕らはそこにNOをつきつけていきたい。新書の価値を最大限に評価したうえで、その可能性を最大限に生かしたものを、一冊の本として世に出していきたいと思っています。だから投稿者の方も、新書ならカンタンそうだ、売れそうだ、とは考えないようにしてください。

竹村 むしろ、ハードルは高いのかもしれないですね。

DON’T TRUST OVER 40!!

柿内 あまりこんなことを言い続けると、誰も投稿してくれなくなってしまうかもしれませんが、実はこの新人賞には投稿者の年齢制限を設けています。

山田 えっ!? 年齢制限ですか!

柿内 なぜそうするかというと、この「ジセダイ」というウェブサイトと「星海社新書」という出版物は、「次世代の、次世代による、次世代のための活動」だからです。

山田 年配の方が「次世代のために書いたもの」というのはNG?

柿内 そういうのはもちろん、企画としてはOKです。対象が「次世代のための」ものですから。ただ、それは編集部の日々の仕事でやっていくことであって、新人賞ですることではないです。この新人賞では、「次世代の、次世代による」という部分を中心にやっていきたいんです。僕らはまだ30代前半のペーペーなんで、出版界の諸先輩たちから見れば「何やってんだ!?」って感じだと思います。もちろん、失敗はなるべく避けたいのですが、僕はチャレンジしたうえでの失敗というのはアリだと思っています。チャレンジしないでただ踏襲しているだけ、というのはつまらないですし、出版界全体に元気がないので新しいことをしていきたい。そのひとつの試みがこの新人賞です。

竹村 「次世代の新しいノンフィクションの才能を発掘する」という役割も担っていきたいですね。

柿内 そうなんですよ。山田さんとの出会いがこの新人賞の方向性に与えた影響は大きいですよ。

山田 『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』は、僕が28歳のときですからね。

柿内 『若者はなぜ3年で辞めるのか?』の城繁幸さんも、30代に入ったばかりでした。今の若い人たちの状況って、漠然とみんな、世の中を変えていきたいってところがあるじゃないですか。そろそろいいかげん新しい価値観があってもいいのかな? と思うんです。まだ「昭和80年代」という感じがあるので。上の世代の価値観を踏襲しながら、良いところは学んで、そこに「今ならでは」のことを加えて、本としてまとめていきたいですね。

山田 なるほど。で、実際の制限年齢はいくつになるんですか?

柿内 投稿時点で39歳以下! これでいきます。僕は昔のロック、特に1967年から1972年までのブリティッシュ・ロックが大好きなんですよ。高校時代は男子校で友達も作らず鬱屈としていたので、毎日「The WHO」や「Uriah Heep」、「Ten Years After」ばかり聞いて、世の中から自分を遮断していたんですけど(笑)。その時代って若い人にパワーがあったんですよね。当時の若い人たちのスローガンが、「DON'T TRUST OVER 30!」、翻訳すると「30代以上は信じるな!」だったんです。そういう意味では、この新人賞のスローガンは「40代以上は信じるな!」ですね(笑)

一同 (爆笑)

柿内 星海社も、立ち上げたときは全員30代でした。残念ながら社長がこのあいだ40歳になってしまいましたが。

竹村 社長は信じない、と。

岡村 た、竹村さん!?

柿内 いや、信じるよ! 何言ってんの、竹村くん(笑)。信じているけど、新人賞には応募できない、ということ。ここにいる星海社の人間だと、僕は今32歳で、竹村君は30歳、岡村君は27歳。出版業界全体の元気がないなかで、こういう若い人たちだけでやっていこうという特徴と気概が星海社にはあるので、それに沿ったかたちとして、新人賞には年齢制限を設けさせていただきます。

竹村 若い力で一緒にミリオンセラーをつくるぞ!

一同 おお!!!!!!!