面接ではウソをつけ

菊原智明

勝つための「戦術」がなければ、弱者は必ず負ける——この本は弱者のための本です。「一流大生」「コミュニケーション能力ばつぐん」「凄い経験の持ち主」といった就活強者ではなく、「二流大生」「内気・ねくら・コミュ力ゼロ」「サークルとアルバイト以外、何もしてこなかった」といった就活弱者の人たちが、どのようにすれば面接をクリアして、内定という「勝利」を勝ち取ることができるか、ということについてお伝えしていきます。弱者が「ありのままの自分」で勝負していてはお話になりません。徹底的に「ウソ」をつかなければ、ライバルと同じ土俵にすら立てないのです。あなたの就活、そして将来的には仕事のスタイルすら根本から変えてしまう1冊になることを、お約束しましょう。

はじめに

コミュニケーション能力の高い人は絶対に読まないでください

この本は、弱者のための本です。

「一流大学生」「体育会出身」「コミュニケーション能力(コミュりょくばつぐん」「すごい経験の持ち主」などといった「就活強者」ではなく、「二流・三流大学生」「内気うちき・ねくら・コミュ力ゼロ」「大学時代はサークルとアルバイト以外、特に何もしてこなかった」といった「就活弱者」の人たちが、どのようにすれば採用面接をクリアして、最終的に内定という名の「勝利」を勝ち取ることができるか、ということについてお伝えしていきます。

この本を手に取ったあなたは、就職活動に対してさまざまな不安をかかえていることでしょう。

就活では、誰も「正解」を教えてはくれません。

高校や大学の入試のように、ひとつの正解があって、練習問題や模擬試験があって、たくさん勉強すれば確実に偏差値が上がる、といった単純なものではないのです。

「おまえの偏差値は58だから、○○大学を受けてみろよ」

「××大学はB判定か。もうちょっと頑張れば受かりそうだ」

というような、わかりやすい基準もありません。内定を一つももらえない東大生もいれば、いくつもゲットするような二流大学生もいます。

さらに、「けっきょくは運だよ」と言う先輩もいれば、「大学時代に何をしたかが重要だ」と言うOBもいれば、「夢をえがけ! やりたいこととやるべきことがわかっている人間だけが採用される!」と言う就活本もあります。

みんながバラバラなことを言う。

基準もルールもノウハウもよくわからない。

それが、就職活動というものです。

でも、だからといって、何も準備せず、何も対策を取らず、ただ漠然と他の人がやっているからという理由で就活を行っていては、あなたが内定をもらうことはかなりむずかしいでしょう。

なぜならあなたは、一流大学生でもないし、コミュニケーション能力が高いわけでもないし、サークルのリーダーをやったこともないし、勉強も研究もたいしてやってこなかった、「普通の大学生」なのですから。

就活でジャイアントキリング
を起こす方法

ここまで読んで、暗い気持ちになった方も多いと思います。

でも大丈夫です。ご安心ください。

就活弱者でもうまくいく「方法」があるのです。

サッカーをイメージしてみてください。

ときどき、弱小チームが強豪チームに勝つことがありますが、ああいった番狂ばんくるわせ(ジャイアントキリング)はなぜ起きるのでしょうか?

スポーツライターの杉山茂樹さんは、こう言っています。

「番狂わせは、弱者の工夫なしには生まれない。(中略)弱者であるならば、番狂わせには敏感にならなければならない。個人の技量で勝る強者に対して、なにをもって臨んだか。日本のサッカーには、その工夫の中身を学んでいく必要性を強く感じる」(光文社新書『4231サッカーを戦術から理解する』より)

そう、ワールドカップにおける日本代表と同じように、強者に勝つためには「弱者の工夫(=戦術)」が必要になってくるのです。

どんなスポーツやゲームでもルールを知らなければ勝つことはできないように、今まで努力しても就活がうまくいかないのは、あなたがルールを知らなかったからにすぎません。

多少ルールを知っていたとしても、戦術がなく漠然と行動していたから、弱いあなたは勝てなかったのです。

早く間違った努力に気づいて、勝負する土俵どひょうを変えなければなりません。

「暗黙のルールにいち早く気づいて、行動そのものを変える」

これは、就活にかぎらず、社会人になってからも必要になってくるスキルです。

では、就活における戦術とは何か

私は、「面接でウソをつく」ことだと考えています。

就活というのは、もちろんエントリーシートや筆記試験、インターンシップなど、さまざまな要素から成り立っているものですが、そのなかでもダントツの比重を占めるのが「面接」です。

ここをどう突破するか、で勝負がほぼ決まります。

であれば、弱者であるあなたは、限りある時間と労力を面接をクリアすることだけに注力すべきなのです。

弱者にムダなことをしている時間はありません。

何カ月も自己分析で悩んでいる余裕などないのです。

さっさとウソをついて、面接をクリアしなければなりません。

「えっ!? ウソをついてもいいの?」

みなさんはそう思われるでしょう。

「俺、今日の面接でちょっとウソをついちゃったよ」とか、「面接でウソをついたらバレるのかな」などと友達同士で話すことはあっても、就職セミナーの講師や大学の就職課、就活本の著者たちが積極的に「面接でウソをつけ!」などと言うことはありえないので、びっくりされたかもしれません。

でも事実、弱者は面接でウソをつくしか手がないです

私はみずからの経験から、そう強く思っています。

私は7年間、
ずっとダメ営業マンだった

ここで少し私の自己紹介をさせてください。

私も、あなたと同じように「弱者」でした。

大学卒業後、とある住宅メーカーに入社した私は、7年もの間、クビ寸前の苦しい営業マン時代を過ごしました。

もともと極度の人見知りで、さらに口ベタ・あがり症だった私は、営業マンにはまったく向いていなかったのです。

日々のストレスは半端はんぱなく、ついには「対人恐怖症」「訪問恐怖症」にまでおちいりました。

もうダメだというところまで追いつめられた私は、もうどうなってもいいとなかば破れかぶれで、根本から営業のやり方を変えてみました。

何をしたか?

お客様と話をするのが怖かったので、そもそも「お客様のところに訪問すること自体をやめた」のです。かわりに、手紙(営業レター)を送ることに注力するようにしました。

これなら、人と会わずに済むので、ストレスはかなり軽減します。

するとどうでしょう。

なんと私は、一気にトップ営業マンの座におどり出たのです。

その後、4年連続でナンバーワンの営業成績を残すことができました。

これには私自身がいちばん驚きました。

営業マンはお客様に会って営業トークをすることが常識なのに、それをやめた途端、うまくいきだしたのです。

たまたまうまくいったのならまだわかるのですが、4年連続でうまくいったということは、もともとの「常識」「やり方」が間違っていた、ということに他なりません。

いや、けっして間違ってはいないのですが、営業マンに向いていない弱者である私にとっては、ベストな方法ではなかったのです。

  • トップ営業マン(強者)とダメ営業マン(弱者)の差は、ほんのわずかでしかない
  • ルールに気づいて、いち早く戦術を変えた者が勝つ

これが、トップ営業マンとダメ営業マンの両方を経験した私が導き出した、ひとつの結論です。そして、営業活動ではなく就職活動においても、この結論は100%当てはまると思っています。

ありのままの自分で勝負して、それで見事に「内定」という結果を残せるのであれば、それは本当に素晴らしいことでしょう。おそらくそういう人は、この本を手に取ることもないし、そのまま社会人になってもきっと優秀な成績を残すはずです。

でも、過去のダメ営業マンだった私や、この本を読むようなダメ大学生(失礼!)のあなたは、「ありのままの自分」で勝負していては、いつまで経ってもダメなままです。内定なんて、取れるはずがありません。

運良く内定をもらって社会人になれたとしても、過去の私のようにダメ会社員になって、えんえんと悩むことになるでしょう。

本当に追いつめられて苦しくなる前に、戦術を変えなければならない

そう、覚悟を決めて、ウソをつくことからはじめなければならないのです。

そうすることで、すべてがうまく回転しはじめます。

就活がうまくいかないあなたへ。

営業がうまくいかないあなたへ。

仕事がうまくいかないあなたへ。

そして、人間関係がうまくいかないあなたへ。

この本で、バレない上手な「ウソのつき方」を覚えて、私と一緒に明日からの人生を変えていきましょう!

営業コンサルタント 関東学園大学講師 菊原智明

第1章

人の評価は「空気」で決まる

面接営業
驚くほど似ている

「営業」「営業職」と聞いて、みなさんはどういった職業を想像しますか?

おそらく、あまり良いイメージは持たれていないでしょう。

私は大学で「営業の授業」を受け持っているのですが、その授業を受けている学生でさえ、「できれば営業だけはやりたくない」と言います。

理由を聞くとこうです。

「客に嫌われながらも、商品を売り込まなくてはならない」

「必要ないものを強引に売りつけないといけない」

学生からすれば、営業とはこんなイメージなのでしょう。

たしかに、一部の人気商品を除いてほとんどの商品は、お客様のほうから進んで「ぜひ売ってください!」とはなりません。

そもそも、そういった商品に営業マンは必要ないでしょう。

世の中の多くの商品は、営業マンが営業活動を行って顧客・お客様に上手にアピールすることで、はじめて購入してもらえるのです。

このような営業活動は、就職活動にそっくりではないでしょうか?

就職活動とは、ひと言で言ってしまえば、企業に対して自分自身を売り込む行為です。

サラリーマンの生涯年収は2億円とも3億円とも言われています。つまり、その金額で自分という「商品」を買ってくれ、という営業活動なのです。

これは、就活という行為の基本中の基本なので、きもめいじてください。

面接や筆記試験で落とされると「なんだよ、俺を落としやがって」と思われるかもしれませんが、企業からしてみれば、あなたはそれだけのお金を払って買うほどの商品ではない、ということなのです。

明らかに商品価値のある優秀な学生は別として、普通の人は企業から「ぜひうちに来てください!」と頼まれることなどないでしょう。だからみなさんは、積極的に自分を売り込まなければなりません。

みなさんは、就活生であると同時に営業マンでもあるのです。

そう考えていくと、就職活動のなかでも面接とは、お客様=企業の採用担当者に対してダイレクトに自分自身を売り込む場だと言えます。

営業マンが、商品そのものの良さやサポートの万全さを面と向かって上手に伝え、お客様に買ってもらうのと同じで、みなさんは自分がいかにその企業の力になれるかを面と向かって上手に伝え、採用してもらうのです。

どうです? そっくりですよね。

面接に受かることと、営業でお客様に商品を買ってもらうことには、この他にも多くの共通点があります。

  • 短時間で相手に好印象を与える
  • 初対面の相手とうまくコミュニケーションを取る
  • 次もまた会いたいと思ってもらう
  • この人なら任せても大丈夫だと安心してもらう

営業職にもいろいろとありますが、私が新卒で住宅メーカーに入って以来、11年間行ってきた「住宅営業」は、営業のなかでも特に面接との共通点があります。

一般的な営業は、初めて出会ったお客様とまともに話などできません。特に「飛び込み営業」は、玄関にすら入れてもらえず、無視されることがほとんどです。

その点、住宅営業は違います。

住宅営業とは、住宅展示場や住宅見学会にお越しいただいたお客様に声をかけて、商品(住宅)を売り込む仕事です。一般的な営業が、アポがなければ1分も話す時間をもらえないのに対して、住宅営業では、ご来場いただいたお客様と10分〜15分間程度は話をすることができます。

面接も、エントリーシートや履歴書、筆記試験さえ通れば、10分〜15分程度のアピール時間はもらえますよね。

また住宅営業では、まったく自分のことを知らないお客様に対して、時間内の接客をすることによって、「この営業マンとは今後もつきあおう」もしくは「もう二度と会う必要はない」と判断されます。

面接も同じです。あなたのことをまったく知らない面接官に対して、時間内のアピールをすることによって、「良さそうな学生だから一次面接を通過させよう」もしくは「もう二度とこの学生と会う必要はない」と判断されるのです。

また、住宅営業にはライバルがたくさんいます。

私が勤務していた住宅展示場には、同一敷地内に20とうもの展示場が建っていました。つまり、すぐ近くにライバルが20社もいる、ということなのです(多いところでは50棟のところも)

お客様からしてみれば、他の住宅メーカーなんていくらでもあるわけだから、少し話をして「この営業マンはダメだ」と判断すれば、次にいけばいいだけの話です。

ピンとこなければ、代わりはいくらでもいるこれは面接でもまったく同じことでしょう。

面接官からしてみれば、他の受験者なんていくらでもいるわけだから、少し話をして「この学生はダメだ」と判断すれば、次の受験者にチャンスがまわるだけです。

どうでしょうか?

私は営業コンサルタントという職業柄、いろいろな営業職を知っていますが、住宅営業ほど、面接とそっくりな営業活動はないのです。

面接も営業も
意外なところで判断されている

先日、お世話になっている企業の人事・採用担当の方と話をする機会がありました。

大学で学生たちが「面接がむずかしくて、なかなか内定が出ない」と言っていたことを思い出して、私は面接でのポイントを聞いてみました。

「面接では、主にどういった点を見ているのですか?」

人事 「そうですねえ。いろいろと評価点はあるのですが、個人的には部屋に入ってきてから座るまでの第一印象が大きいですね」

「えっ、第一印象ですか?」

人事 「ここだけの話、パッと見で印象の良い人は、入社してからも良い結果につながることが多いんですよ」

「そうなんですね」

人事 「長く採用担当をやっていると、部屋に入ってきた瞬間に『おっ、こいつはいいな』とか『この子はダメだな』というのが、なんとなくわかってくるものなんですよ」

採用担当の責任者が学生を第一印象で決めていると聞いて、私はびっくりしましたが、これは営業の世界で考えてみれば、特に不思議なことではありません。

私はこれまでに各業界のトップ営業マンを何人も見てきましたが、彼らは例外なく、出会ってからの数秒で与える〝第一印象〟がばつぐんでした。

名刺交換を行う前、会話をわす前から、「なんだか感じのいい人だなあ」「この人はデキる人なんだろうなあ」という印象を受けます。

一方、ダメ営業マンは、会話を交わすまでの数秒に与える印象が良くありません。

過去の私もそうでした。

背中を丸め、オドオドと頼りなさそうに登場。目が泳いでいて、ボソボソと相手に話しかけていました。

これでは、会話を交わす前から「この営業マンはダメだな」と思われてしまいます。

ですから、その後、どんなに頑張って話しかけても、最初に与えた印象をくつがえすことはできず、いや、むしろどんどん印象が悪くなっていって、「もういいです」と言われてしまうのです。

面接は長距離走ではなく
100メートル走

人を第一印象で判断する。

みなさんも、そういったことをした覚えはないでしょうか?

買い物をしにお店に入ったとき、店員さんを見て「この人は良さそうだ」もしくは「この人はなんか感じが悪いな」と無意識のうちに判断していないでしょうか?

「感じが悪い」と思った店員さんとは、その後、二度と話をすることはないはずです。

営業でも面接でも、話をする前から「なんか感じ悪いなあ」と相手に思われてしまえば、その後、いい展開になることはありません。

友人関係だったら「最初の印象は最悪だったけど、長くつき合っているうちに実はいいヤツだと気づいて親友になった」ということもあるでしょう。

私にもそういった友達がいます。おそらくみなさんにも、そういった友達がいるはずです。男女関係でも、「最初の印象は最悪だったけど、気づいたら好きになっていた」といったことがよくありますよね。

しかし、営業や面接は違います。

「今回はダメだったけど、再度チャンスをやろう」「何回も面接をやっているうちにいい人材だと気づいた」とはなりません。

その場でダメだと判断されたら、二度とチャンスはもらえないのです。

面接とは、長距離走ではなく100メートルの短距離走です。

フルマラソンや1万メートルの長距離走だったら、出だしで遅れても取り戻すチャンスはいくらでもあります。

気を抜いて序盤で20メートルほど遅れたとしても、少しずつペースを上げていくことでトップ集団に追いつくことができます。挽回ばんかいは可能なのです。

しかし、100メートル走ではどうでしょうか?

スタートでのミスを取り戻すのは非常にむずかしくなります。

選手の実力が拮抗きっこうしていれば、0・01秒の勝負になるでしょう。競馬で言う「鼻の差」で勝負が決まるのです。

そんな100メートル走で、20メートル遅れてスタートしたらどうでしょうか?

どんなに足が速くても、レースには勝てません。

面接で初対面の印象が悪いということは、実は100メートル走を20メートル遅れてスタートしているのと同じことなのです。

このことを意識するのとしないのとでは、結果は大きく違ってきます。

「面接は100メートル走」

まずはこのことをしっかりと心にきざみつけてください。

私がトップ営業マンから
買ってしまった理由

つい先日、こんなことがありました。

ある金融商品の営業マン(トップ営業マンの方でした)と初めてお会いしたときのことです。

約束は正午からでした。

私は約束の時間より早めに向かうタイプなのですが、そのときは特に早く着いてしまいました。時計を見ると、まだ約束の時間の30分前です。

「早すぎたなあ」と思いながら待ち合わせの喫茶店に行くと、営業マンはすでにその場所にいました。

「さすがトップ営業マンだ」と思いながら軽くあいさつを交わしたあと、私は商品の説明を聞いたのですが、金融商品は内容がむずかしく、なかなか理解できません。しかも、私が想像していた金額と違います。

しかし、「思っていたより高いな」とは思いながらも、すでに購入を決めている自分に気づいたのです。

予算オーバーなのに、なぜ私は購入しようと思ったのか?

  • 約束より30分以上前に来ていたから
  • 説明が上手だったから
  • 購入すれば大きなメリットがあるから

そういった理由ではありません。

購入を決めたいちばんの理由は、その営業マンの持つ「良い空気感」でした。

彼は出会った瞬間にニコッと笑い、最高の笑顔であいさつをしてきたのです。第一印象はばつぐんでしたが、それだけではありません。

その後も彼は終始、物腰が柔らかく、しかも聞く人に安心感を与えるような口調で、複雑な内容の商品を私にもわかるように一生懸命、何度も何度も説明してくれました。

説明の内容や商品のメリットではなく、その営業マンの持つ「この人なら任せても大丈夫だろう」という空気感が決め手。私は出会ってあまり時間をおかずに、商品の購入を決めていたのです。

これとはまったく逆のケースもあります。

商品も良く、値段も適正。

説明も上手で、営業マンとしての知識も豊富です。

しかし、どことなくその営業マンの持つ空気感が好きにはなれませんでした。

はっきりとした理由はないのですが、なんとなく信用できなかったのです。

結局、「少し検討させてください」と結論を延ばし、その人から購入することはありませんでした。

このように、営業の世界では、営業マンの話している内容ではなく、その人の持つ空気感で決まってしまうことがよくあります。みなさんにも、同じような経験があるのではないでしょうか。

つまり営業では、何を話すかではなく、第一印象も含め、いかに良い空気感を出すかがポイントになってくるのです。

頭の良い人より
感じの良い人のほうが売れる

入社して間もないころ、私の所属している営業部門には、2人のまったく異なるタイプの先輩がいました。

先輩Aさんは、一流大学を卒業していて、とても頭がいい人です。

営業の知識だけでなく、幅広い教養を兼ね備えており、お客様に対していつも知的に説明します。

会議ともなれば、全社員の前で「これからの営業会社は時代のニーズをとらえてソーシャルカンパニーとしてのビジョンを前面に打ち出す必要性がある!」などと、カッコいい横文字言葉を並べて発表します。

お客様を目の前にすれば、「鉄骨構造は木質構造に比べて弾性力がすぐれています。また断面二次モーメントの値においては」などと理論的に説明します。

「すごい知識と頭脳を持った人だ。あこがれるけど、なかなか真似できないな」と、私はいつも感心していたものです。

一方、先輩Bさんは、Aさんとはまったく逆のタイプです。

勉強が嫌いで、営業の知識もかなりあやふやです。

お客様に対して「鉄でできているから、大丈夫ですよ」「まあ、家なんだから、多少隙間すきまがあっても死にはしませんよ」といった感じに説明します。

後輩の私から見ても、「あんな説明で大丈夫か?」と心配になるほどです。

誰がどう見ても、Aさんのほうが営業成績が良く見えました。

しかし、現実は違います。

Bさんは、Aさんの倍以上の契約を取っていたのです。

新入社員の私は、「不思議なこともあるんだな」と思っていました。

ただ、つき合いが長くなるにつれ、なぜBさんのほうが営業成績が上なのかがわかるようになってきました。営業知識は人並み以下で、決して頭脳明晰めいせきでもなかったのですが、Bさんはお客様やまわりの人からとてもかれていました。

思いやりもあり、感じのいい人です。

良い空気感を持っており、誰からも愛されていたのです。

一方のAさんは、嫌われてはいませんでしたが、なんとなく近づきがたい雰囲気を持っていました。ひと言でいえば、隙がない感じ。

経歴や言っている内容は、Aさんのほうが素晴らしいのはたしかです。

しかし、お客様はそういったことだけでは判断しません。その人が持っているイメージ、すなわち、その人がかもし出す雰囲気や空気感で、良し悪しを決めることもあるのです。いやむしろ、そっちのほうが多いかもしれません。

感じの良さ
一流学歴やスゴい経験にまさる

優秀だから、良い結果につながる。

世の中、そんなにうまくは回っていません。

特にこの日本においては、優秀すぎると逆に「鼻持はなもちならないヤツだ」「なんか感じが悪い」「まわりの人を見下しているんじゃないか」「偉そう」「自分がスゴいって言いたいだけでしょ」などと思われてしまったりします。

これは、面接でもまったく同じことです。

「優秀だから」「学歴が高いから」「スゴい経験を持っているから」といって、必ずしも面接に受かるわけではありません。

なぜならば日本企業の面接官は、学歴や言っている内容だけで決めているわけではないからです。

では、何が評価の大きな基準になっているのか?

すでに何度も説明しているように、実は、かなりの部分が「空気」で決まります。

これは、面接にかぎらず、ありとあらゆる場面で適用される、日本社会のルールとも言えるものです。

「なぜだかよくわからないが、彼はやりそうだ」「なんかいい」「感じの良い人ね」といった、非論理的な空気感で、人の評価や面接の合否を決めてしまうことが多々あるのです。

みなさんも身に覚えがあるのではないでしょうか。

たとえば、部活やサークルのリーダー(代表)を今までどうやって決めてきましたか? 論理的に統率力・リーダーシップなどを分析して、みんなで議論をして決めたというより、なんとなく「あいつだよな」といった、みんなの「感じ」で決めてきたのではないでしょうか?

おそらくその人は、明るく、活発で、みんなから好かれるタイプの人物でしょう。

数百倍の難関をクリアしたのに
凡人社員だらけの不思議

実績や能力ではなく、空気で決まる。

だからこそ「優秀でない人」「学歴が高くない人」にもチャンスがあるのです。

社会人を経験したことのない学生からすれば、企業で働いている人は誰もが優秀に見えることでしょう。特に、企業説明会や面接に登場してくるような社員たちを前にすると、「スゴい人たちだな」と緊張して萎縮いしゅくしてしまうはずです。

しかし、です。

これはとても重要なことなのでぜひ覚えておいてほしいのですが、どんなに超一流の企業だろうと、優秀な人はほんのひと握りで、 ほとんどの人はいたって普通。実は、ダメダメな社員、使えない社員もたくさんいます。

私は営業コンサルタントという職業柄、さまざまな業種・規模の会社の方と接する機会があるのですが、どんな企業でも、優秀な人は全体の2〜3割程度しかいないというのが実感です。

たとえば、学生のみなさんは、テレビ局や広告代理店、出版社などのマスコミ業界(どこの企業も倍率は数百倍!)に入社できた人はみんな優秀なんだろう、と思われているはずです。

しかし、実際は違います。

先日も大手出版社の若手編集者がこんなことを言っていました。

「僕は就活で50社に落ちて、就職浪人をして次の年になんとか今の会社にもぐり込むことができたのですが、入社してびっくりしました。あんな高倍率をクリアして入ってくるんだから、どんなにスゴい人たちが集まっているんだろうとワクワクしていたら、バリバリ働いている優秀な人はほんの少しで、半分くらいはパッとしない人たちなんですよ。仕事がデキる人の大半は、実は外部のフリーランスだったりして

私は、広告代理店・○通の30代の社員からも、まったく同じような話を聞いたことがあります。

私が講師を務める大学の学生でも、アルバイトとして一般企業の内部で働いた経験のある人は、けっこうそこらへんのことがわかっていて、

「社会人だからといって、スゴいわけじゃない。スゴい人もいればダメな人もいるんですよね」

と言います。

しかし、複数の社員の人と常時接することのないアルバイト(コンビニやファミレス、家庭教師など)しか経験したことがない学生に話を聞くと、

「社会人はみんなすごい。なれる気がしない

と言います。

リアルな姿を知らないから、イメージだけで語っているのです。

さきほど、企業説明会や面接に登場する社員の話をしましたが、彼らがスゴそうに見えるのは、彼らが本当にスゴい人たちだからです。

出てくる社員は、企業説明会なら若手のエース社員、面接なら部長や課長にまでのぼりつめた人たちです。

つまり彼らは、会社が用意した「優秀な人たち」なのです。特に優秀ではない普通の社員や、ダメ社員は、めったに表に出てくることなどないのです。

たった10分で、赤の他人を
正確に評価するなんて不可能

大学入試であれば、東大や京大、早稲田や慶應けいおうには優秀な学生(大学入試をクリアする学力を持った学生)が集まります。企業の採用試験でも、本当に優秀な人だけが選別されて、内定をもらえるのであれば、大手企業や人気企業は優秀な人だらけになるはずです。

でも現実はそうではない。

逆に、無名の中小企業でも、優秀な人はたくさんいる。

どうして、こういった「おかしなこと」が起きるのでしょうか?

答えは、面接にあります。

結論からズバリ言ってしまうと、赤の他人が優秀かどうかを10分〜15分程度の面接で正確に評価することなど不可能なのです。

心理学者やカウンセラーだとしても、目の前の人を理解するのにもっと時間を要します。じっくり時間をかけて、ひとつひとつ質問していくものです。

これは、企業の人事部や大学の就職課、就活コンサルタントの方々が言わない(いや、それを言ったら終わりなので言えない)ことなので、ここで声を大にして言いたいと思います。

大学入試では、主にペーパーテストの総合点で客観的に合格・不合格を決めていますが、採用活動では、最終的に人が人を直接評価します。

すると、どういうことが起こるか?

くり返し説明しているように、第一印象やその人の持つ空気感といった「主観的要素」で決まってしまうことが多々あるのです。

これは、その人が本当に優秀かどうかとは別の問題です。

たとえば20名の採用枠があるとするなら、そのうち15名くらいは、「なんとなく良さそうだ」という理由で決まっていたりもするのです。

そもそも企業の面接官は
採用のプロではない

この本を読んでいるみなさんは、まだこのように思われているかもしれません。

「たしかに、営業マンやお店の人から商品を買うようなときは、そういうこともあるかもしれないけど、さすがに面接は違うでしょう?」

「印象とか空気とか、そんなあいまいなもので決められてたまるものか!」

そう思われるのも無理はありません。

面接には明確な評価基準があり、それをもとに評価が行われているはずですよね

しかし、現実は違います。

理想はそうであっても、運営現場では、決してそうはなっていないのです。

そもそも、みなさんのことを評価する面接官はいったい誰でしょうか?

大学の授業で、私は学生に質問をしてみました。

「企業の面接官はどんな人がやっていると思う?」

学生A 「人事部の人がやっていると思います」

学生B 「採用専門の部署があって、そこの人が面接をしていると思います」

「じゃあ、採用する人をどうやって決めると思う?」

学生A 「それはキチンとした基準があって、それをクリアすれば内定が出るんじゃないでしょうか」

学生B 「評価シートに基づいて、公平にジャッジされると思います」

「採用のプロがキチンとした基準のもとに判断している」と、社会に出たことのない学生が考えてしまうのも無理はないでしょう。

しかし実は、企業の面接官は、けっして採用のプロではありません。なぜなら、現場の人間と経営陣が主に行っているからです。

「実は、面接官の多くは人事部以外の人間である。たとえば、面接に二人の社員が出てきたとしたならば、そのうちの一人は各部署で実際に働いている社員だと思っていい」(光文社新書『就活のバカヤロー』、「面接官はアマチュアだらけ」の項目より)

一般的には、一次面接が現場の若手、もしくは係長〜課長クラスだとしたら、二次面接には課長〜部長クラス、そして三次面接や最終面接には、社長、役員といった経営陣が登場します。

もちろん、これらすべての面接に人事部の人間が同席するのが理想ですが、そんなに人数がいないことが多いので、大量に就活生をさばかないといけない一次面接は現場の人間だけ、ということもよくあるのです。

そもそも、社員数が100人以下の企業には、人事・採用の部署すらなかったりします。総務部の人間が、就活シーズンだけ兼務しているケースがほとんどです。

となると、採用のプロはどこにもいないことになりますよね。

要するに、みなさんの目の前にいる面接官は、採用のプロでは決してなく、基本的に、人を見ることに関しては素人だということです。

特に一次面接では、その確率が飛躍的に高くなります。

就活弱者であるみなさんは、一次面接を突破することすらかなわないことが多いと思いますが、実は相手はアマチュアだったのです。

ちょっとだけ、気が楽になったのではないでしょうか。

面接官は、早く面接を終わらせて
仕事に戻りたいと思っている

さて、いくら相手が素人だと言ったところで、面接に通らなければ意味はありません。

そこで、面接官である彼らの「事情」についても、少し説明していきましょう。

就活シーズンになると、現場の人間、管理職の人間に、人事部や総務部から「面接官をやってくれ」という連絡が入ります。

場合によっては、面接の前日や当日に、急な仕事で出られなくなった人の「代打」として急遽、面接官に選ばれることもあります。

彼らは当然、日常の業務を抱えています。面接につきっきりというわけにはいきません。面接が始まる10分前まで、自分の部署で大量の仕事に追われていることも多いのです。

「ああ、もうこんな時間か。ちょっと面接に行ってくるわ」

そんな感じで、席を立ちます。

本音では、面接をしながらも、「さっさと面接を終わらせて仕事に戻らないと」と思っているのです。

さて、事前に人事部から渡されている評価シートを持って、面接が行われる会議室に入ると、面接官に選ばれた他の社員がいて、「おっ、○○さんもやるんですね」などとあいさつを交わします(事前に誰と組んで面接をやるか知らされている場合も当然あります)

「そういえば、このあいだの会議の件、どうなりました?」「来週のゴルフ、どうしましょう?」などと雑談しているうちに面接開始時間。

神妙な顔をして待っていると、ノックの音とともに学生が入ってきます。

面接官 「どうぞお座りください」

学生 「はい、失礼します(うわ、怖そうな面接官たちだなあ)

企業の面接なんて、だいたいこんなもんです。

学生の立場からすれば、面接官が何人もいて多大なプレッシャーを受けると思いますが、当の面接官たちはほんの数十分前まで、ランチでラーメンを食べていたり、週末のゴルフのことを考えていたり、締切り間近の仕事を抱えてバタバタしていたりするのです。

そんな面接官相手に、緊張したり、構えたりする必要はありません。

彼らは会社の仕事として頼まれてそこにいるだけの、ただの素人のおじさんたち、おばさんたちなのですから(神妙な顔をしてプロっぽく振る舞ってはいますが

面接官が落ちる落とし穴は、
面接官がダマされるポイント

面接官に選ばれた人(現場の人間や管理職)は、面接の前に人事主催の説明会に呼ばれたりします。

そこで、その年の採用活動の状況や採用ターゲット像、面接の進め方などの説明を受けるのですが、一方的に資料を読み上げて終わり、という形式的なものがほとんどです。

受けているほうも、ほとんどがうわの空。

人事も、面接をになう社員たちがどれだけ採用活動のことを理解しているか確認したりはしません。

説明会すらなく、人事から面接での注意事項がメールで送られてくるだけ、という会社もあるといいます。

近頃は、リンクアンドモチベーション社などといった外部の会社が、面接官育成のための研修会をひらいたりもしているようですが、そういったことをちゃんとやっている企業はまだまだほんのひと握り。

大企業だろうと中小企業だろうと、多くの会社において面接は、よくわからないまま「ぶっつけ本番」で行われているのです。

では、その唯一の説明の場、すりあわせの場である説明会では、何が伝えられているのか?

さきほど説明したように、「我が社が求める人物像」や面接の具体的な進行などについて説明がなされるのですが、ここで注目したいのが、「面接官が落ちる《落とし穴》」について。

これは何かというと、「面接で学生を評価するとき、(素人であるみなさんは)こういった間違った評価をしてしまいがちなので、よく注意してください」というものです。

〈面接官が落ちる面接の落とし穴

①表情、容姿、態度など、言語以外の情報に左右されてしまう

ノンバーバル・コミュニケーションという言葉の意味をご存じでしょうか?

人は他人のことを「話の内容(言語情報)」ではなく、「見た目や話し方などの非言語情報」で判断するということです。

これは「メラビアンの法則」と呼ばれていて、人に与える影響は、見た目が55%、話し方が38%で、内容はたったの7%だといいます。

『人は見た目が9割』(新潮新書)というベストセラーもありましたね。

よく「美人はトク」と言いますが、あなた自身も人を見た目で判断しているはずです。私だってしています。7%は少し大げさだとしても、それほど私たちは、言葉以外の情報に左右されているということです。

②厳格化傾向が表れる

厳格化傾向とは、評価が厳しくなる傾向のことを言います。

面接官が優秀な場合、自分の能力や実績を基準に考え、「こんな簡単なことがなぜできないのか」「こんな常識レベルのことも知らないのか」などと、本当は平均レベルなのに、それよりも低く評価してしまうことがあるのです。

③寛大化傾向が表れる

寛大化傾向とは厳格化傾向の逆で、評価が甘くなる傾向のことを言います。

原因としては、本人に人を評価する能力がなかったり、評価基準をちゃんと理解していなかったり、相手に良く思われたいという意識が働いたりすることが考えられます。

「よくわからないけど、『やや良い』でいいかな」などと、甘く評価してしまうのです。

④多くの受験者を一度に評価することで、中心化傾向が表れる

中心化傾向とは、メリハリのある評価ができず、評価が中心に集まってしまう傾向のことを言います。

多数の学生を一気に評価しなければならないので、「5段階評価だから無難に3をつけておけばいいだろう」となりがちなのです。ふたを開けてみたら、みんな3の評価だった、ということがよくあります。

原因としては、評価基準があいまい、評価基準を理解できていない、評価者の質問スキル不足などが挙げられます。

⑤ひとつの優れた点・劣った点で全体を評価してしまう

これは、目立ちやすい特徴に引きずられて、他の特徴についての評価がゆがめられてしまうことを言います。

「ハロー後光ごこう効果」とも呼ばれています。

たとえば、TOEICが850点の学生を見て、「すごい! これは優秀な学生に違いない」と考えてしまったり、髪型がちょっとボサボサだっただけで、「だらしのない人物だな」と判断してしまうことです。

英語ができることと仕事ができることはまったく別問題だし(もし帰国子女なら、850点くらい取れて当然でしょう)、見た目がしっかりした、だらしのない性格の人なんて、いくらでもいますよね

⑥他の受験者の質に影響されてしまう

他の人と比べて相対的に評価をしてしまうことで、「対比効果」と呼ばれています。

まわりの学生が優秀な場合は評価が低くなり、逆に優秀でない場合は評価が高くなるということです。

グループ面接では、「Aさんは東大、Bさんは慶應Cさんは二流大学か。ダメだな」などと比較されて、不利になることがあります。また、直前の面接の学生が優秀だった場合、次に面接を受ける学生は、どうしても評価が厳しくなってしまいます。

⑦面接の最初の1分間で評価してしまう

これは、すでに説明した「第一印象」のことです。

私たちが第一印象として感じるのは、①で挙げた非言語情報に加えて、「おだやかな感じがする」「エネルギッシュだ」といった性格的特徴や意欲的特徴、言葉の多さや論理的な話し方から感じる知的特徴などです。

そういった第一印象を、自分自身の経験や思い込みから無意識に類型化して、「ああ、この手のタイプの人間はダメだな」などと間違った判断を下してしまうのです。

『絶対内定』(ダイヤモンド社)には、「第一印象は最初の5秒で決まる」とありますが、それくらいの短時間で、人は他人の印象を類型・固定化してしまうのです。

⑧自分と似た点を持つ受験者を高く評価してしまう

「自己類似好感効果」とも言います。

「自分と同じ大学か。この学生はいいぞ」、もしくは「俺と同じ学生野球出身か。野球をやる人間はガッツがある。よし合格だ」などと、むやみやたらに、自分と似た点を持つ人間を高く評価してしまうことがあります。

これは、部下への評価などでも同じで、自分と似た行動や考え方をする人間にはどうしても甘くなってしまうのです。

⑨ステレオタイプで受験生を理解してしまう

誰しも、相手を型にはめて理解することを好みます。

なぜかといえば、単純化したほうが楽だからです。

血液型が典型ですね。A型は几帳面で、O型はおおざっぱ。大学なら、東大=ガリ勉、慶應=スマート、早稲田=バンカラといった感じでしょうか。

当たっていることもありますが、当然、外れていることも多々あります。

体育会出身をアピールする学生に対して、「精神力が強く、体力がある」と評価しがちですが、私の知り合いの人事部長さんは「実は精神的に弱い体育会出身者も多いんですよ」と言っていました。

人をステレオタイプで判断することは危険なのです。

就職活動は、
茶番劇の評価ゲーム

以上が、採用の素人である面接官が陥りがちな、代表的な「評価エラー」になりますが、これは裏を返せば、ほとんどの面接官はこのような間違いをおかすということに他なりません。

特に、①⑤⑦⑨の項目については、自分の努力や工夫によってコントロールすることも可能です(他の項目は面接官自身の問題なので、どうにもなりませんが

ここに、就活弱者が付け入る隙があります。

この章では「感じの良さ」「良い空気感」が大事だという話をしてきましたが、具体的に言うならば、面接官が間違って高評価をつけてしまうように、特に見た目や話し方、目線、動作、振る舞いといった《非言語情報》《第一印象》に注意を払い、《ステレオタイプ》で「なんかこいつは良さそうだ」と思わせ、《後光効果》により他の欠点に目を向けさせないようにすればいいのです。

面接官は、面接を行いながら、もしくは面接が終わったあとに、「評価シート」にその学生の評価を記入します。

これを人事が集めて、誰を合格にするかを決めるわけですが、では評価シートとはいったどんなものなのでしょうか?

ここにその代表的な一例を掲載しましょう。

某大手企業から入手したものに、出所がわからないよう、多少手を加えました。

画像:面接評価シート

どうでしょうか?

その某大手企業は採用活動に特に力を入れていることで有名なのですが、その企業でさえ、こんなシートを使って学生を評価しているのです。

これでいったい何がわかるというのでしょう。

想像してみてください。

人事から簡単な説明を受けただけの素人の面接官が、仕事の合間に、たったの10分〜15分の面接で学生を見て、このシートに評価を書き込むのです。

印象による主観的評価がなされることは、容易に想像できるのではないでしょうか。「なんとなく4かな」「前の学生が4だったから、ここは3にしておくか」「よくわからないから、3をつけておけばいいだろう」きっとこんな感じに、評価エラーだらけになるはずです。

どうでしょう。

弱者が取るべき「戦術」がなんとなく見えてきたのではないでしょうか?

理不尽不公平不平等な
評価基準に対応しよう

人が人を正確に評価するのは、本当にむずかしいことです。

これは、会社に入ってからも同じことです。

会社とは、仕事ができる人が主任のままだったり、たいして仕事ができない人が部長に出世したりするヘンな場所です。

社会人になって数年も経てばわかると思いますが、「どうしてあの人が役員をやっているんだろう」と不思議に思うことが何度もあります。

その反対に、能力も高く、仕事のできる人が出世街道から外れ、いつの間にか会社を去っていくなんてことも、の当たりにすることでしょう。

会社とは、そんな不公平がまかり通ってしまうところなのです。

「仕事のできない人が出世して、できる人が出世しないなんて信じられない」と、学生のみなさんは思われるかもしれません。

面接同様、会社にも、社員の能力を正確に判断できる手段がないのです。

会社とは、さまざまな年代や経歴を持った人間が集まっている場所です。営業部門もあれば、制作部門、管理部門もあります。

仕事の内容も役割も責任もばらばら。

社員全員をひとつの基準で平等に評価することなど、とてもじゃないけど不可能なのです。

また、出世や左遷させんなんかを決めるのは、テスト等の公平なものではなく、生身の人間です。したがって、先の評価エラーみたいなことが日常茶飯事さはんじで起きるし、好き嫌いや嫉妬しっと、派閥争いなんかも大きくからんできます。

社内の日常の人間関係も、一筋縄ひとすじなわではいきません。

ある人がスタッフに急ぎの仕事をお願いしたとします。

スタッフから、「申し訳ありませんが、仕事がつまっているので来週にしてもらえますか」と軽くあしらわれます。

その人は当然、「なんで協力してくれないんだよ!」と内心ムカつきます。

一方、かなりの無理を言っても聞き入れてもらえる人もいます。

スタッフから、「しょうがないですね、今回だけですよ」と言って、引き受けてもらえるのです。

ある人が頼めば拒絶され、ある人が頼めばOKをもらえる

こういった不公平は、どこにでもあることです。

こうした理不尽さと、その裏にあるルール・仕組みを初めて学ぶところが、実は面接の場です。みなさんは、あいまいな評価基準のなかでいかに評価されるかを、しっかり考えていく必要があるのです。