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ジセダイ総研

『龍が如く』『GTA』のゲーム実況禁止! 中国のユーチューバー規制とネット社会の変化

高口康太
2016年05月02日 更新
『龍が如く』『GTA』のゲーム実況禁止! 中国のユーチューバー規制とネット社会の変化

日本ゲーム『龍が如く』のゲーム実況は禁止!

昨春の日本アニメ・ウェブ配信規制に続き、中国文化部が新たな規制を発表した。今回のターゲットは中国版ニコ生、中国版ユーチューバーだ。中国経済界の注目を集めるほどの存在感を示す「網紅」(ネット有名人)とはどのような存在なのだろうか。その人気の背景には中国のネットの大きな変化が透けて見える。

「取り締まり」という勲章を得た中国版ニコ生

 中国国営通信社・新華社によると、2016年4月14日までに中国文化部は「違法・規則違反ネット文化活動摘発リスト」を発表、動画ストリーミングサイト(中国版のニコ生、Ustream)を名指しで批判した。このリストは定期的に発表されており、これまでも携帯ゲームなどさまざまなサービスが槍玉にあげられてきた。

 昨年3月には日本アニメが槍玉にあげられ、『進撃の巨人』や『寄生獣』など数十もの作品が公開を禁じられた。中国文化部はその時々に流行っているサービスを狙い撃ちにしている。つまり動画ストリーミングサイトは日本アニメと並ぶウェブのキラーコンテンツとの勲章を受けたとも言えるのだ。

 実際、さまざまなサイトが登場し、しのぎをけずっている。新華社記事には指導を受けたサイトとして「斗魚、虎牙直播、YY、熊猫TV、戦旗TV、竜珠直播、六間房、9158など」とあるが、ほかにBoBo娯楽、映客、花椒など名前のあげられていない大手サイトも多数存在する。まさに百花繚乱である。

 

中国の大手動画ストリーミングサイト「BoBo娯楽」トップ画面。若い女性によるストリーミング放送が多いが、極端に顎を削った「小顔」の配信者が多い。

 

 サービスとしては投げ銭システムが普及している点が特徴的だ。視聴者はお金を払ってバーチャルプレゼントを購入し、配信者にプレゼントする。配信者はそれを換金して収入を得るという仕組みだ。日本では「SHOWROOM」など一部のサイトでしか導入されていないが、中国では広く普及しておりマネタイズがしやすい環境にある。

 さて動画の内容はというと、きれいなお姉さんがたわいもない話をしたり視聴者の質問に答えたりお歌を唱ったりというパターンとゲーム実況の二つが主流である。中国文化部も双方に目配せしており、前者には「ポルノや社会道徳に危害を加える内容のネットパフォーマンス」が含まれているとばっさり。後者には「『グランド・セフト・オート5」や『龍が如く0』のように血なまぐさく犯罪を教唆するゲームの実況」があると批判している。よもや中国で発売されていない『龍が如く』までゲーム実況で楽しまれているとは、ちょっとした驚きだ。

 この批判を受け、動画ストリーミングサイトは不正配信者の排除に力を入れることを約束した。実名認証の徹底と18歳以下の配信禁止も発表されている。

 

投資マネーが流れ込む中国版ユーチューバー

 この動画ストリーミングサイト取り締まり記事から4日後の18日、今度は中国国家新聞出版広電総局が「2016年ナンバーワン網紅」のpapiちゃんを批判したとの記事を新華社が掲載した。papiちゃんはストリーミングではなく、録画型の動画配信サービスで活躍する、いわば中国版ユーチューバーだ。名門・中央戯劇学院出身の29歳の女性だが、演技力を生かした、何役も演じ分けての超高速トークショーが持ちネタである。

 

「2016年ナンバーワン網紅」と称されるpapiちゃんの微博(ウェイボ)トップ画面。

 

 彼女が最初に動画を発表したのは2015年10月だが、わずか半年で「ナンバーワン」の座を獲得。今年3月にはベンチャーファンドから1200万元(約2億1000万円))の融資を受けるに到った。その際の評価額は1億2000万元(約20億6000万円)。たった一人で動画を発表しているだけで、20億円のメディア企業を作り上げてしまったというわけだ。中国国家新聞出版広電総局は「荒っぽい言葉、侮辱的な言葉」を使ったことが問題だと指摘。中国の動画サイトにアップされていたpapiちゃんの動画は大半が削除されている。

 上述したとおり、取り締まりとは当局による「流行していますよ認定」である。今や中国版ニコ生、中国版ユーチューバーらは今、中国政府が警戒するほどの影響力を持っているわけだ。

 彼らの力を示す言葉として近年、よく使われる言葉が「網紅経済」(ネット有名人エコノミー)。視聴者は自分と近しい存在のように見ているのでテレビや雑誌などの伝統的メディアと比べて宣伝効果が高いとされる。papiちゃんが2億円の融資を獲得したことに象徴されるように、今や続々と投資マネーが流れ込み、ネット有名人専門のベンチャーファンドが続々誕生している。

 

模倣サービスが跋扈する中国で動画ストリーミングだけが遅れたわけ

中国のネットショップでは「背景布」と呼ばれる動画配信者向け商品が販売されている。自宅で放送するにあたりあたかもオシャレな部屋に住んでいるかのように錯覚させるという一品だ。写真は筆者が購入した「落ち着いた書斎風背景布」。

 

 ここまで中国の網紅の存在感について紹介してきたわけだが、どのような印象をお持ちだろうか。「ニコ生と比べて遅れすぎじゃね?」とツッコミを入れている方もいるのではないだろうか。その疑問にこそ中国社会の変化を解くカギがある。

 Ustreamの創設が2007年、一般ユーザーによるニコ生の配信が始まったのは2008年、中国の動画ストリーミングサイトサービスのさきがけであるYY直播が始まったのは2012年。中国の動画ストリーミングサイトの台頭には海外と比べておよそ4年のタイムラグが存在する。強力なネット検閲がある中国では海外のサービスを利用するのは困難である。

 この状況を利用して海外の人気サービスの模倣品を超高速でリリースするのが中国IT企業の勝ちパターンで、米通商代表部(USTR)からも貿易障壁だと批判されているほど。かくしてYoutubeもFacebookもツイッターも誕生から1年以内には中国で類似サービスがリリースされている。ではなぜ動画ストリーミングサイトだけこれほど遅れたのだろうか。

 中国共産党の至上命題は「維穏圧倒一切」(政権・社会安定維持はすべてに優先する)だ。「アラブの春」がそうであったように、ネットとSNSは反政府の動きを加速させかねないとして警戒されてきた。動画ストリーミングはSNS以上に危険な存在だとマークされたことが中国への導入が遅れた理由だという。言葉中心のSNSと違って動画はチェックが困難だ。Youtube型の動画配信サイトでも人の目によるチェックが導入されているほど。筆者も自分の対談動画をアップしようとしたことがあるが、人力チェックにひっかかって公開できなかった。アニメや映画などの海賊版コンテンツはいくらでもアップできるというのにひどい話である。

 リアルタイムで配信されているだけにストリーミングのチェックはさらに困難だ。日本でもたびたび話題になるが、中国で放送されているNHKは中国の人権問題を取り上げた瞬間に画面がブラックアウトするのが常だ。チェック担当者がいるからこそできる技だが、同時に数千チャンネルが放送されている動画ストリーミングで同じことをやるわけにはいかない。

 

民主化はもうオワコン! 中国ネットの大衆化

 というわけで動画ストリーミングは御法度だったわけだが、2012年以降は存在が許されるようになった。上述の取り締まりにしても一部コンテンツの規制であり、サービス全体を排除するという話ではない。

 中国共産党はなぜお目こぼししているのか。それはおそらく中国のネットにおいて政府批判や民主化といったテーマが“売れる”コンテンツではなくなったためだ。ネット黎明期の中国ではユーザーの多くは大学生や都市中間層で、社会問題や政治に対する興味も強かった。ゆえに政府批判や民主化といったテーマはユーザーの多くが興味を持つキラーコンテンツであり、鋭い政府批判を繰り返す「公知」(公共知識人)には商業的な成功を収めたものも少なくない。

 ところがネットが一般市民にまで普及した現在では売れ筋が変わってしまった。かわいい女の子だったり、面白いトークだったり、ゲーム実況だったりが人気なのだ。今ならば動画ストリーミングがあっても、政府批判で大盛り上がりとはならないと当局は判断しているのだろう。

 「公知」から「網紅」へ。政治と社会問題から娯楽へ。売れるコンテンツの変化から中国のネットが完全に大衆化したことがはっきりと浮かび上がる。山谷剛史『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立』(星海社新書)に詳しいが、中国政府は世界とは隔絶した鎖国的ネット世界を必死に構築してきた。政府批判がニッチコンテンツとなり娯楽が中心となった現状はそうした努力のたまものという側面もあるが、それ以上に「たんにユーザー数が増えたから大衆化した」という側面もあるのではないか。

 ネットのつながりが社会を変えていくとの期待は、中国だけではなく日本を含めた他の国にも共有されていた。気がつけばそうした期待はどこかに消え去り、ひたすら楽しい世界が中心になっていたという変化も中国と世界の共通の体験だ。分厚い検閲の壁に囲まれ、世界から隔絶した中国のネット。しかし、壁の内側に広がるのは本質的には日本と変わらない世界なのかもしれない。

 

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ライターの紹介

高口康太

高口康太

翻訳家、フリージャーナリスト 1976年、千葉県生まれ。千葉大学博士課程単位取得退学。独自の切り口で中国と新興国を読むニュースサイト「KINBRICKSNOW」を運営。豊富な中国経験と語学力を生かし、中国の内在的論理を把握した上で展開する中国論で高い評価を得ている。

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ジセダイ総研 研究員

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