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新人賞投稿作品

僕が任天堂で学んだこと ~世界で勝つための企画術~

二天トオル
2013年06月23日 投稿

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ゲームクリエーターたちは何をどのように考えているのか?

カテゴリ

エンタテインメント

内容紹介

世界的に有名なゲーム会社と言えば、多くの人が任天堂を思い浮かべるのではないでしょうか?

内容の多様性、革新性、質の高さなど、任天堂のゲームは多くの要素が高水準。歴史上最も売れたゲームランキングでも、20位中17本を占めています。

なぜ、任天堂にはそれほど高いコンテンツ制作能力があるのでしょう?

自分は企画職として、宮本茂さんが本部長を務める部署で、様々なゲームを開発してきました。

本書ではその過程で学び取った企画術、およびモノ作りにおける思考法の真髄を、どんなジャンルの人にも役立つ、楽しい武器としてお配りします。

目次案・語りたい項目

●プロローグ:本質的思考とは何か?

●第1章 物事の本質を見極める
・複雑な事象を平易な表現で、誰にでも分かるように整理することから始まる
・本質とは、皆が直感的に理解できるシンプルで美しいもの

●第2章 本質的思考の運用――企画における具体例
・ゲームの本質は『インタラクティブ』
・万人向けゲームとはどういう意味か?
 ├マリオは子供向けではない
 └全世界の老若男女が同じ条件で楽しめるもの=普遍的面白さ
・ゲームの企画とは、『普遍的面白さ』をゲーム機で遊べる形にデザインすること
 ├例1『犬を飼うことは面白い』=nintendogs
 ├例2『体を動かすスポーツは面白い』=Wii Sports
 ├例3『体調管理&ダイエットは面白い』=Wii fit
 └例4『脳を鍛えるのは面白い』=脳トレ

●第3章 アイデアとは何か?
・アイデアとは『既存の案』の組み合わせ……という認識で本当にいいのか?
・『面白さ』について
 ├『面白さ』とは何か?
 ├現代人にとっての『面白さ』とは?
 └『面白さ』は本当に必要か?

●第4章 ゲーム制作現場における幾つかの具体例
・現物重視――「言葉遊びじゃなく、触って遊べるものを持ってきてほしい」
・効率重視――「いくら深夜残業しても、時差出勤するなら効率的には変わらへん」
・プレイ時の『手応え』重視
 ├言語化できない部分――「触っているだけで心地いい」
 └リアリティ――「SEが鳴るのを今より数フレーム遅らせれば、もっと手応えが出る」

●第5章 困難への対応の具体例
・まとめサイトや業者と連携したFUD(ネガティブキャンペーン)に対抗する手段
・ソーシャルネットワークサービスに対抗する手段
・スマートフォンアプリに対抗する手段

●第6章 人間の本質は過去も未来も変わらない
・家庭用TVゲームの核心
 ├パーティゲーム的な玩具は昔からあったし、この先もある
 └大きな画面の前に集まり、皆で盛り上がることの面白さ
・携帯用ゲームの核心
 ├『ポケットモンスター』『どうぶつの森』などのRPGの場合
 └『スーパーマリオ』『マリオカート』などのアクションの場合
・シリーズもの
 ├コンテンツを育てるとはどういうことか?
 └長年続くこと自体が強さ――伝統を意図的に構築する

●第7章 企画力を高めるには
・自分の頭で考える
 ├メディアを鵜呑みにせず、その情報の『目的』を検証する
 ├情報を相対化する――誰かの言葉は無数にある意見の一つ
 └情報を整理した上で、自分の頭で判断する
・自分の頭で考える大人の企画トレーニング1
・自分の頭で考える大人の企画トレーニング2

●エピローグ:本質的思考は人生自体を面白くする

書き出しの第1章

<プロローグ:本質的思考とは何か?>

「きみ、スーパーマリオがどんなゲームなのか、一言で説明できる?」
 この質問にあなたならどう答えるだろう?

     * * *

 世界的に著名なゲームクリエーター、宮本茂さんと、僕が初めて共に仕事をしたのは、ゲームキューブのゲームを開発している時だった。

 当時の僕は、遊びの内容を考える企画チームの一員。
 右も左も分からなかった新人時代を脱し、ちょうど仕事が面白くなり始めた頃だった。そのプロジェクトでは統括ディレクターを補佐し、主にマップやイベント関連を担当していた。

 だが開発は、うまく進んでいるとは言い難かった。
 納期間近にもかかわらず、ゲーム性が固まっていなかったのだ。

 続編ではない、新しいゲームタイトルの開発時に、こういうケースは時々ある。
 マップやキャラなどの素材制作は順調なのだが、それを使ってどう遊ぶのかが確定しない。

 確定しない理由は単純で、手応えが芳しくなかったから。作って実際に遊んでみたら、想定よりも面白くなかったのだ。

 何かを変える必要があるが、どう変えたらいいのか分からない――。

 そんなスタッフの状況を見かねた宮本さんが、支援のため現場に入ってきてくれたのだった。

 夜遅くまで会議に付き合ってもらった。
 ゲームデザイン論からテキストの書き方まで、多くのアドバイスを頂いた。

 当時の僕は、憧れの人物と初めて仕事をする高揚感で舞い上がり、平常心を若干失っていた。質問されると専門用語を駆使し、必要以上に詳しく現行のシステムを説明したものである。

 その過程で言われた、今でも忘れられない言葉がある。
 こういうものだ。

「物を分かっていない人ほど、難しい言葉を使いたがるもんやで」
「単純に言えば、要はこういうことやろ?」

 いたく心に響いた。

 そう、当たり前のことながら、物事には重要なこと(本質)と些末なこと(装飾)がある。

 大切なのは核心をシンプルに抽出し、的確に押さえた上で思考することだ。

 システム的に複雑なものを作っていると、どうしても見失いがちだが、コンテンツ制作時はまず本質を確固たるものにするべきで、技術的な諸問題はその後、本質を損なわないように擦り合わせていけばいい。

 企画職には、面白さの本質をしっかり見極め、整理する能力が要る。それを外さないように思考を積み重ねていき、物事を完成に導くのだ。

 つまりはこういうことである。
『それは何がどう面白いのか?』
『何を、何のために作っていて、最終的にどうしたいのか?』

 今作っているコンテンツの本質が何なのか、スタッフ間の共通認識がないと、作品の出来は散漫なものになるだろう。

 多人数で制作するものなら尚更だ。ゲームは多様な思考の集合体――多くのスタッフが、多くの案をコラボレーティブに付加していく面がある。その際、作品の骨格が曖昧だと、マイナスの要素をも付け加えてしまうものなのだ。

 例えば、余計なイベント、余計なテキスト、余計なムービー。

 それらがゲームの根幹に関わる要素なら良いが、そうでない場合は逆効果になるということだ。

 だからこそ『本質的思考』が必要になる。

 それがあれば、大量の情報と思考を適切に取捨選別できる。そのフィルタリング作業がコンテンツの内容を高め、構造的に美しく、エレガントなものにする。

 だからこそ、任天堂のゲームは世界に通用するのだ。

 僕は、そのようなモノ作りの秘訣を多々学んできた。あらゆる局面で役立ち、万人に使いこなせる本質的企画術――。

 今からその詳細を具体的に説明していこう。ぜひ身につけ、様々な局面で使ってほしい。企画に携わる人も、そうでない人も、必ず得るものがある。

 なぜならそれは大切なものを見出し、価値を再創造するという、人生の質を楽しく高めるツールでもあるのだから。

     * * *

 冒頭のクイズの答え。

 スーパーマリオのゲーム的本質とは、『ジャンプゲーム』。
《穴をジャンプで飛び越えて右に進む》ゲームである。

 この分かりやすい本質=ルールが、全世界でヒットした大きな理由の一つだ。

 そして、ゲームの本質を引き立てる要素を多々盛り込みつつ、そうでない要素を極力排除しているからマリオは面白いのである。

応募者紹介

二天トオルさん

大学卒業後、任天堂に入社。
以後、『ピクミン』シリーズ、『ゼルダの伝説』シリーズなど、様々なゲームの制作に参加する。
企画以外にも、デザイン、プログラム、ディレクションなど、ゲーム制作に関する様々な知識がある。日本人初の”プロ・任天堂ファン”。

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